第511話:一万人以上の移民が来る?
「カカシー、ただいまっ!」
懐かしの我が家に戻ってきたぞ。
といっても半月ぶりか。
やっぱり家が落ち着くな。
あたしはあちこち遊びに行くことは好きだけど、旅とかはあんまり好きじゃないのかもしれない。
留守を預かってくれていた畑番の精霊カカシと話す。
「おう、ユーちゃん久しぶりじゃねえか」
「マジで久しぶりだな。カカシちょっと痩せた?」
「痩せねえよ!」
アハハ。
寄り代タイプの精霊の見かけが変わるわけない。
「ユーちゃんの仕事は片付いたかい?」
「うん、出張の仕事はね」
ドーラでの仕事は山積みだぞ。
まあでも戦争案件が片付いてるなら、ギルドや行政府へ行くのなんかあとでいい。
とゆーか中途半端なところでのこのこ顔出すと、余計な仕事を押しつけられかねない。
あたしは面白みのない面倒な仕事は嫌い。
「出張先はどうだったんだい?」
「うちのパーティー大活躍だな。でっかい空飛ぶ軍艦を壊してさ」
「すげえじゃねえか!」
「すげえんだよ。向こうの人にドーラが独立したって聞いたんだ。もうあたし達が向こうでやることないとわかったから帰ってきたの」
「早速で悪いが、凄草の株分け頼むぜ」
「わかってるわかってる。でも、ちょっと待ってて。先にお肉を狩ってくる。食料を確保しないと」
「ハハッ、魔力の自動供給はうまくいってたから大丈夫だけどな」
「よかった。心配の一つだったんだよ」
凄草がわさっと育ってるのを見たから安心だ。
カカシとマルーさんには大感謝。
「じゃあヴィルは通常任務に戻っててね」
「わかったぬ!」
「よーし、あたし達はとりあえず五トン狩るぞお!」
「「「了解!」」」
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「アリスー、こんにちはー。お久だったね」
「あら、いらっしゃい」
本の世界のマスター、金髪人形アリスに挨拶する。
「ようやく帝国本土での仕事が終わったんだ」
「だからお肉の確保に?」
「お肉も重要だけど、アリスの可愛い顔を見ながら話をしたいと思って」
「まっ!」
顔が赤くなるアリス。
毎度のことながらどーゆー仕組みになってるんだか。
可愛いやつめ。
「アリスの情報が一番正確だからね。あたしがいない間、ドーラはどうだったかな? 戦争にはならなかったって聞いたけど」
「一五日前に軍艦七艦がレイノス港を封鎖したわ。少し前に艦隊から分かれた一艦が西域方面に向かい、その艦から同日に小舟一〇艘で工作兵部隊が上陸」
「おおう、やっぱ同日だったか」
ドーラ人に悟られない内に大きな戦果を欲しがるだろうとは思ってたけど。
「結局は?」
「工作兵部隊は電撃的に塔の村を襲ったけど、冒険者達に撃破されて降伏したわ」
「へー、やるなあ」
塔の村の冒険者達の働きはもちろん天晴れだ。
だけど帝国軍工作兵部隊も、塔の村を電撃的に襲えるだけの地理的知識か方向感覚かがあったのか。
危なかったな。
「あなたが大型飛行軍艦を墜落させた三日後には、早船でその事実が艦隊にもたらされ、和平交渉が始まったわ。その席でリリアルカシアロクサーヌ皇女が皮肉を込めて、全権大使を兼ねた艦隊司令官に工作兵部隊の降伏を伝え、またあなたがイシュトバーン氏に託した魔宝玉『聖地母神珠』を献上することによって、速やかに独立が認められたわ」
「聖地母神珠か。大げさな名前がついたもんだ。ただの石なのに独立の助けになるとは、大した威力だなー」
もちろんパラキアスさんやオルムスさんの根回しがすごいんだろうけれども。
また帝国艦隊の司令官ともなると、全権大使が務まるくらい文官としての能力もあるんだな。
負けるなんてあんまり考えてなかっただろうに、手早く交渉をまとめてくれたことは嬉しい。
「ドーラ総督は在ドーラ大使に横滑りしたけど、ドーラ総督としての任期がすぐ切れるということがあったからの緊急措置だわ。帝国では後任に実務的な者をと人選を進めています」
「実務的な人はありがたいかな。人とものの流れが活発になって欲しいんだよね」
「移民は多くなるわよ。来年一年間で一万人以上の来訪は確実」
「えっ?」
一万人以上の移民が確実?
来年だけで?
未来のことだけど、アリスが断言するならそうなる。
いや、年間一万人も来られては食料が足りなくなる!
「どーすべ?」
パラキアスさんに連絡しようと思ったが、移民たくさん来ることなんか、交渉の席上にいたなら当然知ってるわな。
下手に連絡すると、ややこしい役目振られそうな予感がするからやめとこ。
じゃああたしはどうする?
「移民はどんな人達が来るかわかる?」
「貧しい人、若い人、聖火教徒が主ね」
聖火教徒か。
早めにミスティさんとは連絡を取っておかねば。
「わかった、ありがとう。今日一〇トン狩っていくわ」
手かけさせるけど、ごめんよクララ。
ダンテのマジックポイントも空だったね。
魔法陣で回復して、さあコブタ狩りだ!
◇
「カカシー、これ次の株分けも六日後でいい? 今日もう遅いけど」
「いや、五日後でいいぜ? 株かなり大きいしな」
「本当? やったあ!」
クララにアトムとダンテをサポートとしてつけて、精肉作業とスープづくりを任せ、あたしは凄草の株分けをしている。
久しぶりに凄草を食べられるのは楽しみだよ。
「移民がたくさんドーラに来るみたいなんだよ。食料に当てる農作物って何がいいかなあ?」
「当然穀物とイモだぜ」
「だよねえ」
麦、米、トウモロコシ。
穀物が多くの人口を養えることはわかっているのだが、来年作付ける種が足りない。
となれば……。
「イモだなー」
サツマイモならば、イモから出るツルを挿していけばいくらでも増やせる。
とにかく来年一年何とかなれば、再来年は穀物の増産が間に合う。
「農地の面積があってこそか」
掃討戦獲得地の整地を何が何でも進めておかねば。
大人数が住める土地、そして耕地にできる広い平野と言えば、やはり掃討戦獲得地しかない。
でも魚の水揚げ場からは遠いから、海の王国からの魚の供給は期待しづらい。
というか輸送費分高くなっちゃう。
転移石碑があれば?
いや、そもそも魚って養殖できないのか?
「むーん?」
「ど、どうしたユーちゃん。植えつけは終わりだぜ?」
「頭パンクしそう。ぷしゅーってなっちゃう」
「今日はゆっくり休むといいぜ」
「そーしよっかな」
バエちゃんに挨拶はしとくか。




