第51話:パワーカード『ルアー』
――――――――――一七日目。
晴れた! やった!
あたしの品行方正な行いを神様が見てるから!
タマネギの種蒔きができた。
うちでは小麦の栽培はしないので、秋蒔きの作物はタマネギの他にはハクサイとダイコンくらい。
初の冬越し野菜だから、楽しみな反面不安もあるな。
屋根下の山積み魚(魚肥用)も乾燥が進むだろう。
量が多過ぎるんで、発酵してくるのを期待して放置。
こっちはうまくいかなきゃいかないで仕方ないと、割り切って考えることにした。
「さあ、アルアさんとこの工房行くよー。準備はいい?」
「万端でやすぜ!」
アトムはパワーカード好きだから張り切ってるなあ。
クエストに用いている四つポケット上着を着込み、アルアさんの工房でカードを交換してもらいに行く。
その後に試闘を兼ねた経験値稼ぎだな。
あそこには回復魔法陣があるから色々試しやすい。
フイィィーンシュパパパッ。
「アルアさんこんにちはー! 早速だけど、カード交換してくださいな」
「アンタは朝から大きな声だね。ビックリするよ」
「ごめんなさーい」
残り交換ポイントは一四九。
パワーカード一枚は交換可だ。
少し手持ちの素材あるから、引き取ってもらえば交換ポイントも上げられる。
が、交換ポイントの低い『逃げ足サンダル』以外は、二枚交換できるほどにはならないな。
「ほいよ、交換レート表だ」
どれどれ、今交換できるのは、と。
<五〇ポイント>
『逃げ足サンダル』敏捷性+一五%、回避率+五%、スキル:『煙玉』
<一〇〇ポイント>
『ナックル』【殴打】、攻撃力+二〇%
『シールド』防御力+二五%、回避率+七%
『光の幕』防御力+一五%、魔法防御+一五%、沈黙無効
『ニードル』【刺突】、攻撃力+二〇%
『ボトムアッパー』攻撃力/防御力/魔法力/魔法防御/敏捷性全て+七%
『ルアー』狙われ率+五〇%、防御力+一五%、魔法防御+一五%
『スナイプ』攻撃が遠隔化、攻撃力+二〇%
『スラッシュ』【斬撃】、攻撃力+二〇%
<一二〇ポイント>
『サイドワインダー』【斬撃】、攻撃力+一五%、スキル:『薙ぎ払い』
新たに交換対象となったのは『ボトムアッパー』『ルアー』『スナイプ』『スラッシュ』の四種だ。
『スラッシュ』は『アトラスの冒険者』になった時に、チュートリアルルームでもらったカードだからよく知っている。
それ以外は初見のカードだ。
「『スナイプ』を装備するときは注意しな。攻撃を遠隔化するだけで攻撃属性はないからね。他に斬撃なり殴打なり、属性付きのカードとともに装備しないといけないよ」
「なるほど、りょーかいでーす」
パワーカードのそーゆーとこは、すごくシステマチックだな。
物理アタッカーは攻撃属性を複数持っていると有利なことを、『初心者の館』で教わった。
ただしまだそこまで考えられるほど、交換可能なカードの種類が多くない。
今後の検討課題だね。
何のカードを得るのか、腹案があることはあった。
第一案は、防御力の弱いクララかダンテに防御系のカードを与えること。
この場合沈黙無効がある『光の幕』がよさそう。
第二案は、攻撃系のカードで『薙ぎ払い』のダメージを増やすこと。
派生案として、二枚目の『サイドワインダー』を得てアトムに装備させ、連続で『薙ぎ払い』を浴びせるというものもあった。
しかし新しいカードが交換対象になったことで、考え方を改める必要が生じた。
今あたしは一つのカード名に目を奪われている。
そのカードの名は『ルアー』。
「姐御、『スナイプ』がいいでやすぜ。待望の遠隔攻撃が可能になるパワーカードでやす。洞窟コウモリを狩れやすぜ」
「うん、正攻法だね」
「『ボトムアッパー』も悪くないですよ。全体的な能力の底上げが図れます」
「悩むなー」
『ボトムアッパー』か。
本来は魔法剣士用のカードかもしれないな。
しかしうちの後衛陣には向いてるかもしれない。
ここであえてあたしの考えを口に出してみる。
「ねえ、『ルアー』どう思う?」
「『ルアー』? ベリーディフィカルトなカードね。どうユースするね?」
「アトムに装備させてそっちに攻撃を集め、あたしの『雑魚は往ね』で決着をつける。ってのはどうかなと思ったんだ」
アトムに攻撃を集めるならば、あたしや後衛がダメージ受ける機会は減るだろう。
『雑魚は往ね』の射程は長いので『スナイプ』もいらない。
『雑魚は往ね』は溜め技だから洞窟コウモリは逃げちゃうけど、どーだろ?
しばし考えていたクララが結論を出す。
「いいと思います。『雑魚は往ね』は私達のパーティーの大きな強みです。遅かれ早かれこのスキルを有効活用する手段は必要です。たとえうまくいかなくても、パーティー全体で被るダメージは確実に減ります。ムダになることはないでしょう」
『私達のパーティー』って言った時、微かに顔が赤くなったのは見逃さない。
可愛いぞ、クララ。
「よし、決まりね。アトム、あんたの耐久力を期待してるよ」
「お任せくだせえ」
『ルアー』を手に入れ、残り交換ポイントは四九。
再編成後のパワーカード配分はこうなった。
あたし……『スラッシュ』『アンチスライム』『シンプルガード』『ポンコツトーイ』
クララ……『マジシャンシール』『エルフのマント』『逃げ足サンダル』『ポンコツトーイ』
アトム……『ナックル』『サイドワインダー』『シールド』『ルアー』『厄除け人形』『ポンコツトーイ』
ダンテ……『火の杖』『プチエンジェル』『ポンコツトーイ』
あたし以外の三人のカードをかなり入れ替えた。
結果としてアトムがパワーカードを六枚も装備してるのに、ダンテが三枚と偏りが大きい。
同じ後衛でも、回避率の高いクララと比べてダンテの脆弱さが際立つが、今のところは仕方ない。
盾役やヒーラーに厚くするのは基本だからだ。
回復魔法の機会が増えそうなクララに、『マジシャンシール』のマジックポイント自動回復を期待する。
このままだと出番が減りそうなダンテに、『初心者の館』でもらったバトルスキル『経穴砕き』を覚えさせた。
どうせ与えるのが一ダメージ固定なら、攻撃力の大小は関係がない。
もしレアモンスターの人形系が現れたら、素早いダンテに任せよう。
「よーし、いざ出陣!」
アルアさん家を威勢よく飛び出す。




