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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第506話:ヒゲ隊長を捕まえた

 ――――――――――一〇六日目。


 デカブツを落としてから八日目だ。

 この三日間音沙汰なかった。

 これが放置プレイか。

 デカブツの残骸を見物しにいったり魔物狩りしたり、思ったより楽しかったからいいけれども。


「御主人!」


 ヴィルが飛び込んでくる。


「ついに来たぬ!」


 三日も経ってるから、相当考えてきたか?


「やっとか。待つのも疲れちゃうねえ。何人くらい?」

「一五〇人くらいぬ! 魔道士多めだぬ!」

「とゆーことは、爆弾対策してきたみたいだね」

「予定通りでやすね」

「うん、今日もどうってことなさそう」


 対人戦に慣れてきたとゆーか、待ち構える側が圧倒的に有利なんだよな。

 冒険者として経験してきた対魔物戦では味わえなかった駆け引きがあるんで、結構面白いと知った。

 うちの子達に指示を出す。


「じゃ、あんた達は上に陣取っててね」

「「「了解!」」」

「ごめんね。今日もヴィルの出番はなさそう。でも多分次はヴィルに活躍してもらうからね。見つからないように隠れてて」

「了解だぬ!」


 ユーラシア隊余裕綽々で出撃。


          ◇


「この前の隊長さんだよね? ヒゲが焦げてるけど。また来たの?」


 今日も三日前と同じ、渓谷との境で相手する。

 狭くなってるところだから、相手は人数の多さを生かせないしな。


「今日こそお前を逮捕する!」

「うーん、失敗して隊長さんがクビになるほうに一〇〇〇ゴールド」

「な、何をほざくかっ!」

「だってまだ爆弾一杯あるよ?」

「ふっ、やってみろ!」


 自信ありげだね。

 魔道士達がスタンバイしている。

 耐火、耐熱、水魔法ってとこか?


「今帰るなら勘弁してあげるけど」

「こちらのセリフだ! お前らの内戦えるのは数人だと、既に判明している!」

「当たってる。でも人数イコール強さじゃないからね?」

「結構だ! かかってこい!」

「じゃあお言葉に甘えて」


 右手を挙げてうちの子達に合図する。


「ハハハ、爆弾など通じぬ! え?」


 水魔法っぽいな。

 導火線についた火を消してしまうだろう霧のようなものが展開されるが、雨あられと落とされるのは岩と石。

 時々混ざる『マジックボム』。


「ば、爆弾はどうした!」

「バッカだなー。対策されてるのがわかってるのに使うわけないじゃん」

「くっ、卑怯な!」


 ヒゲ隊長の卑怯の基準がどこにあるか知らんけれども。

 混乱して魔法が切れ、隙ができた時にヒゲ隊長を当て身で気絶させる。


「隊長討ち取ったり!」


 ズゴオオオオオオオーーーーーーン!


 あたしの宣言とともに、動揺した兵士・魔道士達へ爆弾を落とす。

 さっきの水魔法はどうした。

 もう対応できないじゃん。

 ぬるいなあ。


 ズゴオオオオオオオーーーーーーン!


「逃げるなら今の内だぞー」


 皆が蜘蛛の子を散らすように逃げ散っていく。

 退却時にどうするかはあらかじめ決めてあったんだな。

 爆弾でまとめて吹き飛ばされないようにだろう、逃げる方向がバラバラだし、ヒゲ隊長以外に倒れて放置された者もいない。


 案外優秀だわ。

 この分だと、追撃された場合どうするかのマニュアルもありそう。

 今日は追撃なんてしないけど。


「さて、この人どうしようか?」


 岩の上から降りてきたうちの子達に話しかける。

 大柄のヒゲの隊長さんは貴重な情報源だ。


「どうするか決めてるんでやしょう?」

「決めてるけれども」


 ユー様悪い顔してる、とクララが思っているのはわかる。

 ダンテがふーって顔してるのもわかる。

 アトムとヴィルは楽しそうだけれども。


「とりあえず縛っておいて昼御飯食べよ」


          ◇


「あ、隊長さん起きた?」


 ヒゲ隊長が縛られて横になったまま目を開ける。


「……何をしている?」

「お昼食べ終わったとこなんだ」

「殺せ」

「ん? あたしの寝覚めを悪くさせる作戦かな? そんな計略には乗らないぞ?」


 ヒゲ隊長の戒めを解いてやる。


「スープがあるよ。食べる?」

「随分と気前のいいことではないか」

「敵の兵糧を減らすのは卑怯で気が引ける? それとも敵の寄越した御飯を食べる気にはならない?」

「ハハッ、いただこうか」


 スープをすするヒゲ隊長。


「……美味いな」

「渓谷で取れたコッカーっていう魔物のお肉と野草が入ってるの。この辺の岩塩がまた独特でおいしいんだよ」

「ほう」


 興味深げな視線を向けてくる。


「何故、拘束を解いた?」

「隊長さんくらいのレベルがあれば、あたし達相手に絶対勝てないことくらい理解できるはず。あたし達はここを守るのが役割だから、逃げても追わないよ。でも逃げないんでしょ?」

「どうしてそう思う?」

「負けた事実は覆せないとして、あと帝国軍人としてやれることって言ったら、可能な限り情報を持って帰ることだけだから」

「……ふむう」


 ピクピクと動くヒゲ。


「隊長さん以外は皆撤退したよ。一人も倒れてなかったから安心して」

「そうか。貴重な情報をすまんな」


 明らかに安堵の表情を浮かべる。

 この人もいい人だな。


「あたし達にも教えてよ。何で攻めてくるの?」

「この地の聖火教徒が反乱を企図しているとの情報があったのだ。今は飛空艇を撃墜したという君への嫌疑がある」

「反乱を企図してたってのは濡れ衣だなー。聖火教徒でもないし。飛空艇を落としたのは確かにあたし達だよ。でも爆弾落とそうとしてたから正当防衛だぞ? やられる覚悟のないやつがやっちゃいけないよ」

「いや、飛空艇をどうやって落としたのだ?」

「飛行魔法で乗り込んで操舵室を壊したの。艦長さん言ってなかった? クリーク少将って人だったけど」

「報告書は見た、が……」


 信じられなかったか。

 さもありなん。


「君は何者なんだ?」

「山の四天王が一人『美少女戦士』だってば」

「それも報告書で見た、が……」

「え、『美少女』に疑問持ってるの? 許さないぞ!」

「いや、疑問ではなくてだな」


 慌てて否定するヒゲ隊長。


「『白き幼女ヒーラー』はわかる。『カードマニア』と『インチキ横文字トーカー』はどっちがどっちだ?」

「青褐色のごついのが『カードマニア』で、オレンジ髪のイケメンが『インチキ横文字トーカー』だよ」


 やるなあ。

 デタラメに言っただけなのに、艦長さんまんま報告してるよ。

 ヒゲも報告書読み込んで暗記してるんだけど?


「亜人か」


 否定はしないでおく。


「あの子達は外の人にいい感情持ってないよ。多分喋んないと思う」

「ふむ」


 あっさり納得するヒゲ。

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