第501話:戦利品をいただく
――――――――――九九日目。
朝起きて大きく伸びをする。
たわわ姫の夢が本当だとすると、あたしは物事やりたいようにやっていいらしい。
ダメって言われてもそーするけど、女神様の御墨付きと思えば気分がいいな。
昨晩はかなり雨降ったみたい。
岩穴の家はあんまり外の音が聞こえないんでわかんなかったけど、朝起きたら外は水溜りだらけだったわ。
午後にはすっかり水も引いたが、南の盆地はドロドロだった。
クララの『フライ』でデカブツの残骸のところへ。
「うわー。爆弾半分くらい生きてるんじゃない? これ」
「そうでやすね」
爆発しちゃったり雨に濡れてダメになってそうなのも多いんだが、いくつかの部屋に分けて置いてあるので、丸々大丈夫な部屋もあるのだ。
「これ、爆発力どのくらいあるのか調べておきたいねえ」
火じゃないと爆発しないのか、アトムの『マジックボム』でも爆発するのか、その辺も確認したい。
一辺三ツカくらいの包みを一つ持って、もう既に乾燥している、岩場の高いところへ行く。
「この辺なら岩硬いでやすよ」
「じゃここに置いてと。ダンテはすぐ『三属性バリア』かけてね。クララは万一の場合に備えて『フライ』の用意」
「「了解!」」
「火をつけるよ」
『火の杖』の『プチファイア』で導火線に火をつけて、皆のいる場所へ駆ける。
全員『三光輪』を装備しているので火耐性は高い。
ズゴオオオオオオオーーーーーーン!
「どわーっ! 痛い痛い!」
思ったよりすんごい爆発だった。
熱は対策もあって大したことないけど、飛んできた岩の欠片が痛い。
パワーカード起動して防御力上げてるのにな。
「岩が抉れてやすぜ」
「本当だ。帝国の火薬はすごいな」
実験するのは場所が重要だわ、これ。
「次、『マジックボム』でも爆発するのかだけど、どこでやろうか?」
「ボス、盆地と渓谷のマージナルがいいね」
「おお、いいね」
あそこなら隠れるところは多いが、下濡れてないかな?
「アトム、ダンテ、適当な大きさの石いくつか持ってきて。クララ、『フライ』で移動」
「「「了解!」」」
集落南の盆地と渓谷の境のところへ行く。
役人か兵隊が、魔物除けに塞いだ板をどけちゃってるな。
「石並べて、と」
濡れないようその上に爆弾を置く。
「よし、岩陰に隠れよう。アトム、よろしく」
「へい、マジックボム!」
……ふむ、包みは破れたが爆発しない。
「濡れちゃったかな? プチファイア!」
ズゴオオオオオオオーーーーーーン!
なるほど。
「爆発には火か温度かが必要みたいだねえ」
「ユー様、悪い顔してますが」
「さっきの爆薬庫でさ、爆弾の包み開けて中身を『マジックボム』に入れ替えたやつをいくつか積んどくと、帝国兵が運び出そうとして持った瞬間に爆発するから面白いかなーと思っただけ」
「人間の所業ではないのでは?」
「精霊の所業だとどうするんだっけ? ウシの糞もウマの糞も手に入らないんだけど」
こらクララ、呆れた顔すんな。
アトムとダンテは『マジックボム』でその手があったかって顔してるのになー。
「爆薬はいくつか持って帰ろう。ドーラ人にも帝国の火薬がどれくらいの威力か知っといて欲しいし、研究する人がいるかもしれない」
「「「了解!」」」
クララが言ってくる。
「ユー様、今なら帝国軍もいませんし、一度この爆薬を持って転移で帰りますか?」
「……いや、やめとく」
どーも遠くから見られているような嫌な感覚があるのだ。
何だろう、これは?
「予定通り、転移は最後に戻る時だけで」
「「「了解!」」」
「もうちょっとデカブツの探索しようか」
◇
「こんなデカいものはさすがに持っていけないしな」
デカブツの機関室にあった動力炉と魔力炉のことだ。
これこそ持ち帰ることができたなら研究者が喜ぶんだろうが。
「壊しておきましょう」
仕方ない。
回収されちゃかなわんから動力炉も壊しておく。
「エディブルなものがないね」
「それなー」
食べられるものを積んでないのだ。
「試験飛行でやしたからねえ」
「日帰りピクニックでもお弁当持ってくでしょ、普通」
この辺が帝国人と感性が合わないところだな、きっと。
ただ調理室はあったので、調理器具はもらっていくことにした。
「姐御、布団がありやすぜ」
「やたっ! 持ってこう!」
昨日の夜、寝づらかったのなんの。
山は寒いし。
今日は布団のおかげでゆっくりぐっすり寝られるな。
「あと、使えそうなのはこんなとこ?」
釘や工具の類はもらっていこう。
桶だのロープだのはたくさんあるけどいらないかな。
本と地図、観測機器? の類はクララが欲しがった。
「じゃーん、これこれ!」
「ワッツ?」
「多分、空飛んで脱出する時のやつ」
「ウインドスライダーと言ってましたね」
「魔道の道具ではないでやすね?」
魔道結界張ってる船からの脱出想定のツールだ。
魔道の道具じゃ都合が悪いんじゃないかな。
単にコストの問題かも知れないけど。
「とゆーことは、広げて風を受けて滑空するということだよね?」
「そうでしょうねえ」
「クララ、やってみてくれる?」
「はい」
説明書がついているので、それを見ながらカシャンカシャンと広げていく。
軽い金属の骨に丈夫な布が張ってあるような構造だ。
「……格好いいじゃないか」
シンプルかつメカニカル。
機能美の見本がここにある。
「じゃあ行ってきます」
「うん、充分注意してね」
クララが『フライ』で飛び立つ。
上空に舞い上がったところで『フライ』を切り、ウインドスライダーに身を任せる。
「おおう、あの布、あんなに伸びるんだ?」
大きく反った布が空気を包み受け、ゆっくり弧を描くように降下してくる。
「お帰り、クララ」
「どうね? どうね?」
「気持ちいいんじゃねえか?」
おお、アトムとダンテが食いつくね。
やっぱ空を飛ぶというのはロマンだから。
しかし首をかしげるクララ。
「でもこれ、かなり危ないですよ? ちょっと風に煽られると墜落すると思います」
「だろうなー。あくまで非常用だね」
残念そうな顔すんな。
きっとアルアさんが飛べるパワーカード作ってくれるから。
「あたしはむしろこの伸びる布に興味があるわ」
量産できれば何かに使えそう。
「よし、今日はこんなとこだね。岩穴に戻ろう」
「「「了解!」」」
戦利品を抱え、クララの『フライ』で岩穴へ。




