第50話:オチ要員
あ、アンとセリカが食堂に入ってきた。
夕御飯でも食べにきたんだろう。
あれ? 何だ、こっちの様子が気になるのか?
アンセリは仲間になりたそうにこちらを見ている!
チラッと見ていたダンが言う。
「最近ギルドに出入りしてる二人だな。確か二人とも魔法系固有能力持ちの」
「よく知ってるね。可愛い子をチェックするのがダンの仕事なん?」
「当然だろ」
途端に怪しい情報屋に思えるんだが。
「マウさーん、あそこの二人知り合いなの。アンとセリカって言うんだ。冒険者希望で、マウさんの話聞きたいと思うから、ここに呼んでいい?」
「またお嬢さんか。ええぞ。たまには賑やかなのも」
手招きで呼ぶと、アンとセリカは嬉しげに席に着く。
マウ爺全然偏屈じゃないじゃないか。
ダンよ、多分あんたが嫌がられてるだけだぞ?
「では、新人冒険者に最も必要なことを教えよう。心して聞くがよい」
マウ爺が歴戦の勇士オーラを全開にして言い放つ。
何だろう? ドキドキ。
「そこにおるようなつまらぬ男に引っかからぬことじゃ」
「「「はーい、気をつけまーす!」」」
「そりゃねーよ、爺さん!」
と言いながら悪びれたふうでもないダン。
メンタル強いな。
「ねえ、ダン。質問いい?」
「何だよ」
「ここのギルドでは、ダンがオチ要員ってことでいいの?」
「いいわけあるか! 何だオチ要員って。屈辱か?」
ふーん、違うのか。
色々パーフェクトなのに、もったいない。
ま、いいや。
あたしがお約束要員として使ったろ。
「ユーラシアさん?」
先ほどからうちの子達をチラチラ見てたセリカが話しかけてくる。
「ん、何?」
「この前も思ったんですけれど、精霊さんは喋らないんですか?」
「ベラベラ喋るよ。だけど……」
マウ爺が言葉を継ぐ。
「人間と精霊とは元々相性が悪いものなのじゃ。ごく一部の精霊親和性の高い人間のみが『精霊の友』たりえ、話すことができる。さらに『精霊使い』たるには、カリスマ的な影響力を行使できねばならぬ。『精霊使い』がレア中のレア固有能力である所以じゃ」
「へえ……ユーラシアってすげえんだ」
「まーあたしのことはもっと尊敬しても構わない。ほれほれ」
ダンが苦笑する。
だけど『精霊使い』が持ち上げられるほどすごい固有能力かって言われるとどーかな?
レアはレアなんだろうけど、『精霊使い』だから冒険者として優秀ってわけではないし。
あたしはうちの子達と楽しくワイワイできることが嬉しいけど。
「ちなみにあんた達、マウさん、ダン、アン、セリカの四人で一番精霊親和性が高いのは誰? せーのっ!」
「「「ダン」」」
うちの子達精霊三人の声が揃う。
「うわ最悪」
「何でだよ! 俺を盛大に称えるところだろ!」
いやまあ、ダンの精霊親和性が高そうなのは何となくわかってた。
コミュニケーション力ありそうだしな。
だからこういう話題振ったんじゃないか。
オチ要員なら理解しろよ。
「ところでアンとセリカは、毎日どうやって過ごしてるの?」
「実戦で腕を磨きたいのは山々なのだが、冒険者は皆、目的を持って行動してるだろう?」
「ずっとパーティーメンバーになるわけでもなく、ただクエストに連れていってもらうのは難しいのです……」
だろうな。
予想通り。
しかしソル君がギルドに来るまでにはまだ間があるだろうし……。
「マウさん、この二人を鍛えてやってくれないかな?」
「ん? どういうことじゃ?」
「アンとセリカは、いずれギルドに来るスキルハッカーの仲間になるの。それまでに少しでも経験を積んでおきたいんじゃないかなーと」
マウ爺が思慮深げに言う。
「……『スキルハッカー』の固有能力持ちが『アトラスの冒険者』になったという噂は聞いたが」
「スキルハッカーがアンとセリカを仲間にすると決まったわけじゃねえだろ?」
「いや、決まってるの」
「どういうことだよ!」
あたしは事情を話す。
「『スキルハッカー』持ちの子はあたしより三日後輩でね。その子はその子で苦しんでいるんだよ。パーティーメンバーを欲しがってたから、あたしが仲介した」
「あんた、スキルハッカーともう面識があるのかよ?」
ダンはかなり驚いている。
「たまたま会っただけだけどね」
「どんなやつだ?」
ゴシップ屋『早耳のダン』としては知っておきたいことなのだろう。
「あたしより一つ年下一四歳の男の子だよ。今三つ目のクエストで、クリアするとギルドに来られる予定なんだ。早ければあと数日かな」
「つまり、残り数日でやれることはやっておきたいということか。お主達もそれでよいのだな?」
「はい、お願いできるのでしたらぜひとも!」
「我らに教えて欲しいのです!」
アンセリが勢い込んで答える。
うんうん、やる気があるのはいいことだ。
「では引き受けよう。お主達のレベルに適した場所で、素材とアイテムの回収を兼ねた戦闘訓練じゃ」
「「はい」」
「爺さんばっかりずりーよ。俺も混ぜてくれよお」
「構わんぞ」
「え?」
あまりに軽い了承にダンが面食らっている。
「後衛職の娘達を危険に晒すわけにはいかぬ。お主は前衛として盾となれ」
「お、おう」
あれ? みたいな顔すんな。
女の子を守るナイト役だぞ。
オチ担当から大出世だ。
そしてマウ爺はダンを鍛える意図もあるっぽいな。
「よかったねえ」
「頑張るのです」
「ユーラシアさんの予定はどうなっているのだ?」
「明後日から新しいクエストかな。明日はその準備で」
「あれ、準備に一日かけるのか?」
ダンが意外そうだ。
「調整が面倒なんだよね。明日もう一枚パワーカードを手に入れる予定で、皆のカードを再編成して試しに戦うところまではやっときたいけど」
ダンが初めて気付いたように言う。
「パーティーメンバー全員がパワーカード装備だから、やりくりしなきゃいけねえのか」
「手持ちがまだ少ないからね」
次のクエストがほこら守りの村の怪というヤバげな名前なので、充分注意したいという事情もある。
「では今日はお開きとするかの。アン、セリカ、ダン、明朝ギルドに集合じゃ」
「「はい」」「うーす」
「あたし達は帰りまーす。マウさん、今日はありがとう!」
「おう、しっかりな」
「皆もじゃあね、またね」
「「さようなら」」「俺に惚れるなよ」
ダンを華麗にスルーして転移の玉を起動する。
ためになる一日だったなあ。




