第499話:明日からの楽しみは
「はい、巨大飛行軍艦を落とすというミッションは達成されました。やったね!」
「「「パチパチパチパチ!」」」
集落のあった場所でアトムダンテと落ち合い、今日の報告と今後の方針について話し合う。
「一応確認だけど、ソル君達は帰還したんだよね?」
あたしはソル君達に語った最後の言葉を思い出す。
『あたしとクララが半分くらいまで近付いたら、ダンテが『デトネートストライク』ね。で、ソル君が覚えてもう一発ぶつけて。二発も正体不明の攻撃食らえば、泡食って帰ろうとすると思うんだ。そこへ乗り込んで落としてくる。墜落を確認したらソル君達は長老連れて帰還。レイノスの総督府を訪ねて、パラキアスさんかオルムス副市長に仔細を報告すること。ソル君の名前で通してくれるから。面倒なこと押しつけてごめんね。あたしの代わりだぞ?』
ダンテが言う。
「イエス、ボス。ミーに『ヒール』をかけてくれたあと、モジャモジャを連れて転移したのを見たね。バット、ボスとクララのライフオアデスが不明で動揺してたね」
「問題ないでしょ。ユーラシアさんだぞ。アトムはどう?」
「へい。渓谷の狭くなってるところに『マジックボム』仕掛けてまいりやしたぜ」
「うん、御苦労さん」
艦長さん引っかかってないといいけど。
艦長さんのレベルなら多分気付くし、山からの追っ手を防ぐために帝国軍歩兵部隊が仕掛けたものと考えて、スルーすると思う。
「でもデカブツが墜落した時のすげえ音で、コッカーが皆逃げちまいやしたぜ」
「コッカーが? マジか。そりゃ大問題だ!」
「大問題だぬ!」
うちの子達が笑う。
いや、コッカー肉は大いなる楽しみだよ?
他には攻めてきた軍をからかうくらいしか娯楽がないもん。
「さて今後の方針としては、こっちで暴れるのを目的とし、注意を引きつけてドーラの戦況を楽にさせたいです」
「ユー様、暴れることが手段でなく目的となっていますが?」
「よく気付いたね。クララ偉い!」
「えへへー」
クララ誤魔化されてんぞーという、アトムとダンテの視線。
ツッコんできなよ。
「あっしの『マジックボム』で時間は稼げると思いやす」
「稼いだ時間で、あのデカブツからもらえるものはもらっていかねば」
「ドロボーでやすか?」
「戦利品だねえ」
艦長さんだって何やらいう脱出用の飛行装置くれるって言ったしな。
いや、他のものも遠慮せずもらうけど。
「うーん、早く火消えないかなあ。危なくて近寄れないわ」
「今日の夜からヘビーレインね。トゥモローの午前中にはやむね」
「雨か。助かるね」
天気良さそうなのにな。
山の気候は変わりやすいのか?
「じゃあ、明日雨がやんだらドロボーしに行こう!」
「「「了解!」」」
よーし、うちの子達も共犯だ。
「ヴィルはどうしますか?」
「ちょっと悩みどころなんだよね」
こっちには悪魔がいるんだぞ、ということをもう少し見せておきたいのは山々だ。
でも一度見せたから、多分対策はしてくるだろうしな。
「報告で知っても、どのくらいのレベルの悪魔かはわかりゃしやせんぜ」
「オブザーベーションしに来ると思うね」
「ありそーだな」
もう一回ヴィルは通用すると思っていいか。
しかし?
「ヴィルはこっちにいなさい。ワープは使わないようにしてね」
「わかったぬ! でもどうしてだぬ?」
「ワープや転移をブロックされる可能性があるから」
うちの子達に説明する。
「一〇日足止めしておいてもらえると助かるとパラキアスさんが言っていたので、半月こっちで頑張るのを当面の目安にしようか。本当の目的はもちろん帝国軍の目をこっちに引きつけることだけど、名目上は山の集落の皆を逃がすためとします」
「ワッツ?」
「まさか転移で村の人達を逃がしてると思わないから、帝国はまだここに村人が残ってると考えるでしょ? で、ハハハバカめ、この半月で同胞は全て逃がしたぞ。おしりペンペンバイビーで高速『フライ』見せつけてとんずらすれば、どこかにひっそり潜伏してるか港から海外に逃げようとしてると考えるんじゃないかな。転移までは頭回んないでしょ」
皆頷く。
「で、転移をブロックされるとまずいから、なるべくヴィルのワープも見せないということでやすね?」
「そゆこと! 帝国が本当に転移をブロックできるかは知らんけど、魔道結界なんてものを発明できるくらいだから、可能性はあるじゃん? あたし達も最後ここを去るまで転移は使わない」
クララが聞いてくる。
「ユー様の考えはわかりましたが、そこまで偽装したがるのは何故ですか?」
またユー様悪いこと考えてるって目でクララが見てくるけど、さして悪いことでもないんだよ。
「帝国が真剣に転移を研究して欲しくないってのは、重要な理由だね。軍事に応用されても困る。もう一つ、村人達が転移で逃げたって感付かれると、どうしたって戦争中であるドーラとの関連が疑われるじゃん? それは避けたいんだ。ドーラ独立後も、帝国はいい商売相手であって欲しいんだ。帝国は敵じゃないよ」
貿易や移民が活発でないと、ドーラの発展が妨げられる。
ドーラが独立したって、関係の深い外国はカル帝国しかないのだ。
帝国にそっぽ向かれるのはドーラの自滅に等しい。
「帝国はエネミーでない?」
「そうそう。皆友達。ウィンウィンで儲けたいの」
「姐御のスケールはデカいなあ」
「ハッハッハッ、あたしは褒められれば褒められるほど伸びる子だ!」
皆で笑う。
あ、ヴィルが撫でられに来た。
よしよしいい子。
「基本方針は以上ね。でもこっちの身の安全のほうが重要だから、帝国が本気になってヤバくなったらとっとと逃げるよ」
「「「了解!」」」
まあしかし山をえっちらおっちら登ってくる歩兵なんかに、うちのパーティーが負けるわけないだろ。
飛空艇以外に決定的な打撃を与える兵器があるとも思えん。
ヴィルが聞いてくる。
「わっちはどうすればいいかぬ?」
「ヴィルには偵察してもらいたいんだけど、帝国の対魔族ウェポンはどんなんがあるか見当つかないんだよね。だからあたし達のいないところでは帝国兵に姿を見せない。岩陰から見つからないようにそーっと偵察する。ワープもしない。それと通信も一応やめとくからね。わかった?」
「わかったぬ!」
「よーしオーケー。御飯食べて寝よっ!」




