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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第498話:間に合え!

 ――――――――――飛空艇機関室。ユーラシア視点。


「ハヤブサ斬り・零式!」


 明らかに時間稼ぎをしていた艦長を倒し、『あやかし鏡』の効果によるもう一撃で魔力炉を壊す。

 瞬時に魔道結界が消失したことを肌で感じる。

 これで魔法を使えるはず。


「セイクリッドポール!」


 間髪を入れずクララが最大の攻撃魔法で船体を壊し、外へ通じる大穴を開けた。

 小さい窓があったから、壁を隔ててすぐ外だってことはわかってた。

 船体が丈夫だったら追撃であたしも『ハヤブサ斬り・零式』を放つつもりだったが必要なかったな。

 しかし地面が近い!


「クララ、『フライ』!」

「はい!」


 艦長を小脇に抱え、クララの飛行魔法で脱出!

 間に合え!


「全速! できるだけ離れて!」

「了解!」


 ズゴゴゴゴゴゴオオオオオーーーーーーーンンンンン!


 墜落した!

 しかし爆薬を積んでたはず。


「油断しない! もっと遠くへ!」

「了解!」


 グオオオアアアアアアアアーーーーーーーーーーンンンンン!


 飛空艇が爆発、炎上する。

 少々爆風に煽られたが問題はない。

 岩壁を越えた渓谷側の適当なところへ着地する。

 飛空艇が落ちたのは、山の集落の皆が畑にしようとしていた盆地側か。

 


「ふいー、危なかった」

「そうですねえ」


 クララののんびりした様子からは危機感が伝わってこないんだよな。


「ユー様がクリーク少将とずっと話してるものですから、ヤキモキしてましたよ」

「いや、艦長さんとの話もなかなか面白かったもんだから、ついエンターテインメントを優先してしまって」


 普段は何も言わなくても、クララの考えはちくちく刺さってくるものなんだけどな。

 今回はあたしにもクララの気持ちを察するだけの余裕がなかったということか。

 艦長がおかしな行動を起こさないか注目してなきゃいけなかったし、それ以上にあとどれだけで墜落かを感じ取らなきゃいけなかった。

 どう考えてもヤバかったな。


 ……格好悪いからクララには言わないけど、少し膝が震えている。

 一〇〇日ほど前、夢の中に出てきた薄着のたわわ女神の言葉を思い出す。


『あなたはカル帝国との戦争で、勇敢に戦いました。しかし残念ながら、命を落としてしまったのです』


 死ぬ運命ではあったんだろうな。

 あたしは運命に打ち勝った。

 密かに充実した思いを感じ、拳を握り締める。

 もーちょっと楽な戦いをしたいもんだ。


「ユー様、どうしたんです?」

「ん? クララの『セイクリッドポール』見たのは初めてだなと思って」


 照れ隠しだわ。

 全然違うことを口にしてしまった。

 『セイクリッドポール』は『白魔法』の固有能力持ちが高レベルで習得する、珍しい聖属性の攻撃魔法だ。


「結構な威力だったじゃん。てっきり風魔法『ダンシングウインド』使うかなと思ってた」

「ユー様に一度見せてあげようかなと思ったのです」

「おおう、エンタメ要素だったのか。やるね」

「ユー様こそ『カードマニア』だの『インチキ横文字トーカー』だの、笑っちゃいそうになりましたよ」


 アハハと笑い合う。


「ソル君達は帰ったかな?」

「早く報告できれば、それだけドーラでの戦いを有利に進められるでしょうからねえ」


 レイノスに艦隊が集合している。

 ドーラ首脳が一刻も早く飛空艇の顛末を知りたいことは、ソル君も理解しているはず。

 なら艦長を蘇生してもドーラとの繋がりはバレないな。


「レイズ!」

「リフレッシュ!」


 艦長を蘇生させる。


「オレは……生きているのか」


 自嘲気味に艦長が呟いた。

 遠くから散発的に聞こえる爆音で、飛空艇がどうなったかはお察しだろう。


「ごめんね、乱暴で。艦長さんモタモタしてたからさあ。あと五秒遅れてたらドカーンだったよ」

「ふ……ははははははっ!」


 堰き止めていたものが崩れてなくなったように笑う。


「いやあ、思い切りがいいな」

「エンターテインメントとして合格だった?」

「ここまで気持ち良くやられると笑うしかない」


 あ、サッパリした顔になったね。


「今日は完敗だ」

「あんなデカブツがあったって誰も幸せにならないから、何度攻めてきても落とすよ。今回は情報があまりなかったんでギリギリで危なかったけど、次までにもっと安全にぶっ壊す方法考えとく」

「本気だな? しかし安全なはずの試験飛行で完膚なきまでにやられてしまっては、飛空艇計画は頓挫せざるを得ない」


 マジっぽいな。

 となると?


「艦長さんはどうなっちゃうのかな?」

「……まあ降格の上、閑職に回されるだろうな」

「運が悪かったねえ」

「ハハッ。無能者に相応しい末路だ」

「艦長さんが本当に無能だったら、あたしを捕まえろみたいな間抜けな指示出して、人死にが多くなってたんだなー」

「そうかもな」


 あたしを見てくる。

 あんまりえっちな目じゃないね?


「君は……どうするんだ?」

「もちろん山を守るけど」

「ふうん」


 あまり信じていないようだ。

 まあド田舎の山にいる高レベルの美少女戦士ってのは、さすがに我ながらツッコミどころ満載だったわ。


「山を下りる気はないのか?」

「都会は人が多いからモテ過ぎて困るかな」

「ハハハ、そうか」


 冗談めかして言ってくる艦長。


「いや、君がオレの上官だったら面白かったろうな」


 艦長さんが中空を見つめる。

 軍人としての出世が閉ざされ、思うことがあるのだろう。


「君にやられたと思えば諦めもつく」

「艦長さんは優秀な男だよ。あたしが保証する」

「それはどうも。君に言われると信じたくなるよ」

「もうちょっと信じてみる?」

「え?」


 艦長さんの目をじっと見つめる。


「あたしは『閃き』の固有能力持ちなんだ。すごくカンがいいってやつ」

「ほう?」

「その『閃き』能力持ちのカンだけど、艦長さんの未来は海を越えたところにあるみたいだよ?」

「海を越えたところ?」


 艦長さんが首をかしげてる。


「じゃあね。あたしはもう行く。艦長さんとはまた会える気がするよ」

「オレも拾った命だ。せいぜい大事にしてみるさ」


 握手。


「軍はまだこの場所に拘るぞ? 気をつけろよ」

「だろうねえ。ありがとう。帰り道わかるかな?」

「下っていけばいいだけだろう」


 まああたしもそれ以上知らんけど。

 艦長さんが片手を挙げ、去ってゆく。


「飛空艇の火が消えるのは時間かかりそうだねえ」


 まだ爆発が続くかもしれないしな?


「アトムダンテと合流してから考えようか」

 勝った!

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