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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第493話:運命の日

「サイナスさん、こんばんはー」


 夕食後、寝る前恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは』

「ギルドと塔の村に根回ししてきたよ。ドーラでの用は終わった」

『ドーラでの用? 君、戦争中は何をする予定なんだ?』

「明日からうちの子達と帝国本土行ってくる」

『!』


 驚いてる驚いてる。

 人の意表を突くのは気分がいいなあ。


「テンケン山岳地帯っていう山の中ね。『アトラスの冒険者』の転送魔法陣が出てて、あたしは以前から行けるようになってた場所。どうやらそこも戦場になる予定でさ」

『……しばらく帰ってこられないというのは、帝国の山にこもるということか』

「うん、うちの子達にお弁当作り任せちゃった。煮て包んで冷凍してさ。うちには『氷晶石』があるから、持ってって冷やせばしばらくは大丈夫」

『何だか楽しそうだね』

「戦争さえなければマジでピクニックなんだよ。向こうにはコッカーっていうおいしい鳥の魔物もいるし」


 くすんだ笑い。

 コッカーは楽しみだな。

 ずっと戦闘状態にあるわけじゃないだろうし、狩って食べることもできるだろ。


「とゆーわけで、明日から夜のヴィル通信はしばらくお休みね」

『ユーラシア達が長期間向こうに滞在するからかい?』

「帝国の魔道技術がどれほどかわかんないんだ。不安な点の一つだね。山で大活躍するつもりだけど、ドーラと繋がってることがバレるとドーラが恨まれそうじゃない?」


 ヴィル通信を探知される可能性があるかもしれない。

 最悪通信や転移をブロックされることだってあり得る。


「だから転移も最後に帰ってくる時だけにしようかと思ってるんだ」

『なるほどね。意外と君は慎重派だよな』

「意外とじゃないわ。神経が繊細で賢いから、隅々まで気を回してるだけだわ」


 笑うとこじゃないわ。

 まーこんだけ考えているのだ。

 無事生き延びて帰れればいいけどなあ。


「あ、それからレイノス東やカラーズが攻められる可能性は低くなった」

『どうしてわかる?』

「塔の村で聞いたことなんだけどさ。帝国の皇女が塔の村にいるってことがバレてるみたい」

『ほう? つまりその皇女の奪還が帝国軍潜入部隊の目標になるということだな?』

「うん。話したっけ? 海の一族の監視を抜けてくる帝国の技術。あんまり乱用できないし信頼性もないから、西が標的になるのなら東にもっていう余力はないと思うんだ」

『了解だ。カラーズにとっては朗報だな』


 でも余裕ぶっこいてんじゃねーぞ?

 実際にどうなるかはわからないんだから。


「塔の村にも気合い入れてきたから大丈夫」

『気合い入れただけでいいのか?』

「向こうにも結構レベル高い冒険者いるんだよね。警戒を怠って隙を突かれたなんてことなければ問題ないよ」

『ふむ』


 ドーラはまず平気。

 あれ、マジであたしの働き次第なんだが?


「カラーズからは今日輸送隊が出発したんだっけ?」

『ああ、情報収集を兼ねてね』

「アレクとケスに成長が見られるといいねえ」

『成長か。ユーラシアはそういう目線なんだね?』

「慈愛に満ちた聖母のようでしょ?」


 笑い合う。

 サイナスさんも肩の力が抜けたようだ。


「サイナスさん、おやすみなさい。今日はゆっくり寝るんだ」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 いよいよ明日だ。


          ◇


 ――――――――――九八日目。


 カル帝国と開戦、ドーラとユーラシアの運命の日。


          ◇



「カカシー。あたしら帝国へ出張でしばらく帰ってこられないからさ。今日の凄草の株分け分は皆食べちゃうからね」

「おう、わかったぜ」


 畑への魔力供給が自動でできるようになって本当によかった。

 これなら当面凄草は枯らさずにすむ。


「帰りはいつ頃になるんだい?」

「ハッキリとはわかんないんだなー。最低一〇日は向こうで頑張るつもり。でも多分もうちょっと長くなると思う」


 首尾よく空飛ぶ軍艦を落とせたとしても、部品を回収されてすぐ再建されたんじゃ困るのだ。

 聖火教徒の村人がドーラに逃げた痕跡もなるべく消さなきゃいけない。

 パラキアスさんは七日の一〇日間のって言ってたが、向こうでしばらく暴れたほうが、帝国がドーラに構ってる暇もなくなるだろうし。


「まあ畑はオイラに任せておけよ」

「うん、お願い」

「ユーちゃんも腹なんか壊すんじゃねえぞ?」

「カカシは優しいなー」


 お腹以外に注意点はないんだろーか?

 さて、凄草サラダをたっぷりいただこうじゃないか。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 ギルドにやって来た。


「やあユーラシアさん。今日は一層チャーミングだね」

「おっはよー、ポロックさん。一層っていうのは気分がいいねえ」


 アハハと笑い合う。


「どうなってるかな?」

「七艦からなる艦隊が現れたと、レイノスから連絡が入っているよ」

「残り一艦は西なんだろうなー。塔の村が襲われる可能性が高いみたいなんだ。向こうには注意しろって言ってきたけど、攻められてるのがハッキリしたら、西域防備の冒険者を再編して塔の村へ派遣して」

「了解です」

「冒険者達はまだ来てないよね?」

「ソールさんパーティーはもういらしてますよ。カールさんは西域へ先発しています」


 ピンクマンの動きが早い。

 ソロなんだから誰かと一緒に行動すりゃいいようなものだが、おそらく偵察だろう。

 工作兵を見つけたらすぐギルドへ戻って、場所を報告するつもりに違いない。


 ふてぶてしい顔を見せながらダンが玄関から入ってくる。


「よう」

「あんた転送で来るんじゃないんだ?」

「昔からの習慣だしな」


 『アトラスの冒険者』じゃない時は、当然徒歩でギルドに来てたろうしな。


「現在の状況はどうなってる?」

「艦隊はもうレイノスに来てるって。それ以外はまだ何とも」

「わかった。じゃ、うちの連中にタネ明かししてくるぜ」


 カイルさん以外のオーランファームの従業員は、まだ戦争があることは知らないはず。

 パワーレベリングの真の理由を話すんだろう。


「あんたも気をつけろよ?」

「うん」


 心持ち顔を引き締めたダンが転移の玉を起動していなくなる。

 いよいよ始まる。


「じゃ、手筈通りに」

「わかりました」


 ポロックさんが頷くのを見てギルド内部へ。


「「「ユーラシアさん!」」」


 ソル君パーティーだ。

 うん、いい面構えだね。


「待たせたね。行こうか」


 フレンドで転移の玉を起動しホームへ。

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