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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第492話:三人娘に発破をかける

 もう少し俯瞰で見たあたしの意見を話しておくか。


「ぶっちゃけ帝国に負けるわきゃないんだ。ドーラは海の王国の支配領域が取り巻いてるっていう特殊事情があるから。潜入工作兵が来るったって数は知れてるしな。おまけに侵攻対象まで割れてるときたもんだ」

「ユーラシアの言う通りかもしれないけど」

「ただ苦戦はしたくないじゃん? 簡単に勝ちたい」

「君は簡単に、なんて言うから……」

「苦戦するってことは、人死にが多くなっちゃうってことだからね」


 シーンとするな。

 ブルーな効果を狙ったわけではないわ。


「リリーは皇女であることを利用したっていいんだよ」

「利用、とは? どういうことだの?」

「『我がここにおるのに攻めてくるとは何事か、この不忠者どもめが!』ってどやしつければ、帝国兵の腰が砕けるんじゃない?」


 ポカンとするリリーと黒服。


「し、しかしお嬢様の身バレはよろしくないと……」

「よろしくはないだろうけど、誰もあんまり気にしないと思うよ。ドーラは帝国からの移民で成り立ってるでしょ? でも誰それは帝国で貴族だったとか犯罪者だったとか、話題にならないもん」


 レイカやエルも言う。


「ユーラシアの言う通りだ。ドーラには王族や貴族がいないからかもしれんが」

「身分を気にしないのはいいことじゃないか?」

「レイノスに上級市民はいるけど、あれ身分制度じゃないよねえ?」


 考え込むリリーと黒服。


「まあ方法は何でもいいけど、無様な戦いを見せてくれるなよ? 塔の村が攻められてるのがわかれば、二、三日で援軍来るから」

「「「「「「おう!」」」」」」


 発破をかけて内緒話モード解除。


「戦争のことはちょっと置いとくね。ドーラでもお茶作ってるところがあったんだ。これ」


 リリーにお茶葉の入った筒を渡す。


「今度来た時に品質どんなもんか教えてよ。あたし本当のお茶飲んだことないからさ」

「うむ。ドーラでもお茶が普通に飲めるようになるといいの」

「……当分難しいかな。ドーラは貧しいから」


 ドーラで一般的に飲まれているのはハーブティーや柿の葉茶、つまり他の用途のために栽培されている植物を、飲用としても利用してるに過ぎない。

 お茶のような腹の足しにならない嗜好品を作るのは難しく、また販売しても買うだけの余裕のある者はほとんどいないだろう。


「でもユーラシアは、いつかは何とかしようとしてるのだろ?」

「そりゃそーだ。何であたしが遠慮しなきゃいけないんだ」


 エルが言う。


「ユーラシアはボクの国の食文化も取り入れようとしてるんだ」

「あっ、エル! 多分来年にはかれえの試作品ができるぞ!」

「本当かい!」


 レイカとリリーが聞いてくる。


「「かれえとは?」」

「ボクの国ですごく人気のある料理だよ。嫌いな人はいないとまで言われる」

「こっちでは似た食べ物がないから表現しづらいんだけど、スパイシーで食べやすいシチューの類なんだ。主に炊いた米にかけて食べるの」

「米か」


 リリーが反応した。


「ドーラで米は見ないな?」

「私は食べたことがないな」

「レイノスに少しはあるんですけれども」

「ドーラでもちょっとは米を作ってるんだけどね。地形と水事情が米作に向いてないんだよねえ。でもアルハーン平原の掃討戦で、クー川っていう大河まで人間の領域が広がったから、来年には米も大規模試作が始まるよ。再来年には米食をいっぺんに広めるつもりなんだ。エルやリリーは米のレシピ教えてよ。参考にするからさ」


 レイカがしみじみ言う。


「ユーラシアはこういう話する時、本当に楽しそうだな」

「すごく楽しいよ」

「「「「「食い意地が張ってる」」」」」

「何だとお!」


 黒服さんだけだよ、あたしを尊重してくれるのは。

 楽しい時間が過ぎてゆく。


          ◇


 名残惜しそうにエルが呟く。


「帰るのか?」

「そんな寂しそうな顔したってダメだぞ? この当たり判定の小さいおっぱいめ」

「誰の何の当たり判定が小さいかっ! うがー!」


 皆が笑う。

 エルはこーゆー時、おセンチになる傾向があるからな。

 エルのパーティーは塔の村の主力戦力でもあるし、意識して発奮させておかないと。


「しばらく塔の村へは来られないのだな?」

「長期出張になりそうな気配だね。なのにお土産持ってこられる当てがないんだ。ごめんよ、でもひどくない?」


 黒服が声をかけてくれる。


「お気をつけて」

「あたしに親切にしてくれるのは黒服さんだけだねえ。見習いなよ」

「「「どの口が言うか!」」」


 アハハと笑い合う。


「……結局ユーラシアが一番大変なところを受け持つんじゃないか」

「一番手柄はあたしのものと決まった。あんた達は残りカスみたいな戦功を奪い合ってちょうだい」

「威勢がいいではないか」

「あたしは好き勝手動けるからいいんだ。相手の不意を突くってゆー、とっても楽しい部分をもらっちゃって悪いけど、こっちはマジで頼むよ?」

「任せておくのだ!」


 おお、リリーも威勢がいいね。

 再び内緒話モード発動。


「レイカはフィールドでお肉用の魔物とか狩ってたから、地形よくわかってるでしょ? 偵察は任せた。潜入工作兵の数なんか知れてるんだ。正直不意打ちさえ食らわなきゃどうにでもなると思う」


 レイカパーティーが頷く。

 夜襲してくるにしても、土地に不慣れな連中だ。

 必ず近場に痕跡は残すはず。


「帝国の潜入工作兵が本当に塔の村へ攻め寄せるなら、向こうさんの目的はリリーに決まったようなもん。間違ってリリーが捕まったりすると、あとは野となれ山となれで向こうさんは強力な殺傷兵器を使ってくるんじゃないかと思うんだ。だからリリーは、前に出たいのはわかるけど引き気味に。補助に回って」

「……わかった」


 不承不承リリーが頷く。


「レベル的にもパーティーバランス的にも主力はエルだぞ。任せたよ」

「ああ」


 言葉少なにエルが答える。

 気合入ってるのがよくわかるよ。


「あたしが工作兵指揮官なら、戦争だという情報が塔の村に伝わる前に急襲したくなるな。つまり明日だぞ? 油断するなよ」

「「「「「「おう!」」」」」」


 内緒話モード解除。

 これでよーし。


「じゃ、あたし帰るね。諸君の健闘を祈る! また会おう!」

「ユーラシアこそつまらないケガするんじゃないぞ」

「塔の村は問題ないのだ」

「待ってる」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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