第490話:新魔法『ロック&デス』
依頼受付所からお店ゾーンへ。
あれ? ペペさんいるな。
挨拶しとくか。
「たのもう!」
「ふあっ?」
飛び起きたペペさんに倒れてきたあのデカい杖が直撃、ごいんと結構な音がした。
「大丈夫? あ、この杖随分重いんだねえ」
「あ痛たたた。あれ、ユーラシアちゃん、どうして上を見てるの?」
「天井でも落ちてくると、ギャグとして完結するなあって思ったの」
「やだもー!」
ペペさんが弾けるように笑う。
ペペさんの笑顔は本当に幼く見えるなあ。
「新たにユーラシアちゃん専用のロマン魔法が完成したのよ! じゃーん! 『ロック&デス』!」
「いや、ペペさん作のスキルに、ロマンが満ち溢れてることは疑いようないけど」
「えっ? 他に重要なことあったっけ?」
「効果とコスト」
ペペさんは大マジで言ってるからなー。
でもまたあたし専用の魔法作ってくれたんだな。
考えてみりゃ一個限定とは言ってなかったわ。
「ええと効果は敵単体を無力化して、これくらいの大きさの檻? 箱? に永久拘束するというものなの」
掌大くらいの大きさか。
「随分変わった効果だね。ドロップアイテムはどうなるの?」
「無力化して閉じ込めただけじゃダメだけど、それを叩き潰してとどめを刺せばドロップアイテムは得られるわ。だけど経験値は得られない」
「この魔法はどの辺がロマンなのかな?」
「ユーラシアちゃんのパーティーだったら、理論上どんな魔物にでもかかるわ。ボスだろうが人形系レアだろうが」
「おおう、すごいね」
赤の女王(仮称)であっても拘束し、倒すことができるということか。
「で、コストは?」
「パーティー全員のレベル全部。ただしパーティーは四人まで」
「え?」
「ロマンでしょ?」
「……つまりこの魔法を使うと、パーティー全員がレベル一に戻されるってこと?」
「うんそお」
発想がぶっ壊れてるでござる!
まあペペさんだからなー。
「買うんだろ?」
「買うけれども」
ダンは横から出てきてニヤニヤすんな。
「毎度ありがとう! 五〇〇〇ゴールドです」
支払いをすませスクロールを開く。
魔力が高まり、『ロック&デス』を習得した。
「ヤベースキルだな」
「今これを覚えるってことは、使わなきゃいけない場面があるんだろうなーって気がする」
「フラグだフラグ」
何でダンはそんなに嬉しそうなんだよ。
「ペペさんはどういう考えで、このスキルをユーラシアに?」
「え? 考えなんて特にないけど?」
「ペペさんに打算なんてもんがあるわけないじゃん」
感性の塊だってこと理解しろよ。
ケイオスワードの組み立てには緻密な知性が必要なはずなのに、丸っきり知性方面を感じさせないのが真の天才の仕事だな。
「じゃあ、おやすみなさい」
「あれ、家帰らないの?」
「最近家で一人でいると、考えることが多くて寝られないの」
戦争が近いしな。
「なるほど、発想を転換して職場で寝ることにしたんだね?」
「うんそお」
うちの子達は何を言ってるんだという顔をしてるが、後ろのダンは面白そうだ。
「起こしてごめんね」
「んーん。お店だから仕方ないわ」
「『売るものありません』って張り紙しとけば、きっと起こされないよ?」
「……それもそうねっ!」
ついに笑い出したダンがペペさんに声をかける。
「いやあ本末転倒で傑作だ。もう昼飯時だぜ。ペペさん、奢るからどうだ?」
「ありがとうダンいい男!」
「ユーラシアは金持ちだし人数多いじゃねえか。まあいいや、食堂行こうぜ?」
「すみません。御馳走になります」
「ペペさん、もっと堂々と奢られればいいんだよ?」
「あんたはもっと遠慮しろ」
笑いながら食堂へ。
「あっ、ソル君達! 今からお仕事?」
ソル君パーティーは、お昼を食べ終えたところのようだ。
「ええ、準備もありますし」
「明日は朝からギルドに来ててよ。出番だよ」
「わかりました」
「じゃあ失礼します」
「ばいばーい」
「バイバイぬ!」
ダンが不審げに聞く。
「明日って……何かあるのか?」
「ん、デート?」
「アンセリがいるじゃねーか」
「ソル君もやるよねえ。両手に花のくせに、もう一輪どうにかしようなんて」
「掛け合いはいいから話せよ」
案外マジだね?
内緒話モード発動。
「帝国の秘密兵器である魔法攻撃の効かない空飛ぶ巨大軍艦が、明日帝国内部の山岳地帯に試験飛行なんだ。ドーラに飛んできてレイノスにボコボコ爆弾落とすんじゃかなわないから、油断してる内に何とかしてくる」
「おい、その話初耳だぞ!」
ペペさんはある程度の話聞いてるらしいな。
「ギルドの職員とソル君達には、あたしの予想を交えてある程度話してあったけど、確定したのは今日の朝なんだ。明日朝には帝国艦隊がドーラに来る。あたしとソル君のパーティーが空飛ぶ巨大軍艦担当」
「ユーラシアちゃんはわかるけど、どうしてソールさんが?」
「スキルハッカーだから」
ダンとペペさんが見つめてくる。
いやん。
「必要なんだな?」「必要なのね?」
「必要だねえ」
あ、ヴィルがあたしのところに来た。
ダンとペペさんはちょっと緊張してるのかもなー。
よしよし、いい子。
「皆が自分の仕事こなせばいいんじゃないの? ダンは西だね、ファーム近辺」
「西ったって大して西じゃねえ。自分家だしな」
「カトマス~レイノス間の物流を切られるとシャレになんないんだぞ?」
「よおくわかってるぜ」
ニヤッとする。
何だかんだでダンは問題ないだろうけど。
「ペペさんは何か役振られてるの?」
「七日後の会議には参加しろって言われているわ。あとは余計なことするなって」
「だろーなー」
ペペさんは敵に回ったら脅威だけど、味方でも驚異なんだよな。
トラブルメーカーに仕事させてはいけない。
内緒話モード解除。
「ご・は・ん! ご・は・ん!」
「あんたはもっと慎みを持てよ」
「だってお腹減ったんだもん」
「ペペさんを見習えよ」
「見習っていいのかなー?」
「え?」
嫌な予感がしたか、ダンが眉を顰める。
「以前、ピンクマンが奢った時に気付かなかった? ペペさんってものすごく食べるんだぞ?」
「えへへ。言うほどではないわよお」
「ほら見ろ、既にナイフとフォークを装備してる。臨戦態勢だ。バッタバッタと食い倒すつもりだよ」
「……お手柔らかに」
「ダメだ許さん!」
「どーしてあんたが宣言するんだ!」
ダンのサイフをかなり軽くして帰宅。




