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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第487話:警告

 ――――――――――九七日目。


 開戦が翌日に迫る。

 言いようのない緊迫感がドーラを覆う。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「アリス、おっはよー」

「あら、おはようございます。今日は早いのね」


 うちの子達に海岸での回収作業他を任せ、あたしは本の世界に来た。

 もちろん明日の情報収集のためだ。


「一人なの? じゃあお肉狩りじゃないのね?」

「うん、可愛いアリスに会いに来たんだよ」

「まっ!」


 赤くなる金髪人形。

 まったくどうして赤くなるんだろうな?

 これは聞いたら教えてくれるだろうか?

 でもこーゆーのは、聞かないのがお約束なんだよなあ。

 あたしもお笑いシップに則った行動を心がけてるから、お約束は外せないし。


「明日帝国艦隊がドーラに到着するっぽいね」

「ええ。七艦からなる艦隊がレイノス港に現れる計画だわ」

「七艦?」


 帝国を進発した時は八艦からなる艦隊だったはず。

 一艦は潜入工作兵の母艦だな?

 さて西へ行ったか、それとも東へ別れたか。

 まあ西だろう。

 西域は広いから、どこに上陸するかまではわからんなあ。


 心配そうに声をかけてくるアリス。


「あなたも戦争に参加するのね?」

「うん。多分戦争でしばらくここにも来られなくなると思う。ごめんね」

「あなたが謝ることではないわ。でもまた来てくれると嬉しい」

「あざといくらいに可愛いな」


 伏し目がちの大きな瞳がウルウルしてくる。

 マジでどういう仕組みなんだろ?


「艦隊の他に戦争について新しい情報、何かある?」

「大型飛行軍艦についての情報があるわ。明日初めて、試験飛行を兼ねて実戦投入されます。行く先はテンケン山岳地帯の聖火教徒の村」


 やはり。


「予想通り。奇しくも艦隊のドーラ到着と同日か」

「乗員こそ少ないですけれども、爆弾はかなり積んでますわ。完全に対ドーラ戦の予行演習です」

「その大型飛行軍艦がうちのパーティーの直接の敵になるんだ」

「えっ?」

「デカブツさえぶっ壊せば、帝国は対ドーラ戦の決定力を失う。勝ったも同然だな」

「ど、ドーラに飛来する前に壊すのが可能ならば、でしょう?」

「アリスの情報はかなり役に立ったよ。ありがとうね。あたしは必ず大型飛行軍艦を落として、戦争を早期に終わらせてみせる」


 我ながら大言壮語だと思う。

 だってアリスがあんまり悲しそうな顔をするから。


 あとでギルド行くのは必須になったな。

 今日中にソル君と連絡取れるといいけど、明日でもいいか。


「山岳地帯には、先に歩兵部隊が投入されるわ」

「ああ、降伏を勧告するくらいの慈悲はあるんだな。慈悲なんてもんじゃないか」


 歩兵部隊による制圧後に爆撃で破壊する算段だったか。

 もし仮に制圧に失敗したとしても爆撃するから同じこと。


「ありがとう、アリス。また必ず来るからね」

「きっとよ。またね」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


「ただいまー」

「お帰りなさい」「お帰りなせえやし」「ウェルカムホームね」


 うちの子達にアリスからの情報を伝える。


「明日、七艦からなる帝国艦隊がレイノスに到着予定だって」

「セブンね? エイトじゃないね?」

「潜入工作兵の母艦が途中から別行動なんじゃないかな」


 潜入工作兵の回収まで考えているとするなら、この一艦は戦力外と考えていいな。


「大型飛行軍艦は明日、山の集落に来る」

「そっちも明日でやすか。腕が鳴りまさあ」

「ただし、爆撃の前に歩兵部隊が来るって」

「歩兵部隊?」


 クララが首をかしげる。


「爆撃後の確認ということでしょうか?」

「いや、先に通告なり宣戦布告なりして村人達を脅して連行、その後に爆撃で村を焼き払うつもりなんじゃないかな」


 飛空艇の存在は秘匿されてるかもしれんけど、さすがに爆撃後まで秘密にすることはできないだろう。

 ならばいきなり爆撃では帝国軍の信を問われるんじゃないの?

 反対派や穏健派を抑えるのが面倒になるだろうから。


「ということは、歩兵部隊を追っ払ってからデカブツでやすね」

「多分ね」


 ダンテが聞いてくる。


「歩兵部隊はどのくらいのスケールね?」

「規模? 渓谷の山道を登ってくるんでしょ? 大した数じゃないと思うけど」

「でも村人に抵抗する意思を起こさせないほどじゃないといけませんから……」


 完全武装で数十人規模ってとこか。


「まー来るってわかってりゃ問題ない数だねえ」

「歴戦の勇士みたいで格好いいセリフでやすね」

「本当だ。ユーラシア隊に相応しいねえ」


 皆で笑う。


「こっちはどうだった?」

「ストーンボードがあったね」

「お? 戦争間近なのに新しいクエストが来たのか」


 ダンテから『地図の石板』を受け取る。

 お馴染みの地鳴りがする。

 新しい転送魔法陣が設置されたに違いない。


「至急だと困るから、転送先の確認だけしとこうか」

「そうですね」


 家の東、魔法陣の区画へ。


「これだけ見ると、結構働いたねって気がするよ」


 チュートリアルルーム、スライム牧場、苔むした洞窟、アルアの家、ドリフターズギルド、ほこら守りの村の怪、謎の本、聖火教アルハーン本部礼拝堂、カル帝国・山の集落、塔の村、海の王国、魔境トレーニング、自由開拓民集落ユーラシア、カトマス。イシュトバーン邸』と、今設置された新たなるもう一つ。

 合わせて一六の転送魔法陣が整然と並ぶ。


「あたしもまだ冒険者歴三ヶ月なのかー」


 思えば遠くに来たもんだ。

 自宅だけど。

 ゲレゲレさんやマウ爺のところはもっとたくさんの魔法陣が並んでたので、それにはもちろん及ばない。

 でもなかなかのもんじゃない?


 一六個目の転送魔法陣の上に立つ。

 強くなる光とフイィィーンというやや高い音、頭の中に事務的な声が響く。


『白き族長アビゲイルに転送いたします。よろしいですか?』

「族長?」

『はい、族長です』


 カラーズでは村の首長を慣習的に族長と呼ぶけど、他では聞いたことがない。

 文字通り解釈すれば、どこかの部族の長なのか?


「ありがとう。転送はやめとく」


 立ち上る光が穏やかになり、音も消える。


「ベリーインタレスティングね」

「うん、楽しみが増えちゃった」


 まあ至急ではないから、予定通り戦後に行こう。


「あたし、山の集落行ってくるよ。あんた達家で待ってて」

「「「了解!」」」


 信じてもらえないかもしれないけど、注意だけはしておかねば。

 明日になっていきなり慌てふためくよりマシだろ。

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