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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第485話:クイズ世界は商売商売!

「でもまあ、ケスは雇われるより雇うほうが向いてると思うよ。頑張ろう」


 ケスはガキ大将っぽいとことか、イシュトバーンさんに似た雰囲気ある。

 ふてぶてしさなんかは経験で身につくもんだと思うし。

 今から交易に携わって鍛えられれば、ひとかどの商人になれそう。


「お、おらはどうだべ?」

「人間は御飯のために働かなきゃいかんけど、精霊は必ずしもそうでないでしょ? ハヤテだって風に吹かれていれば、最低限お腹は満たせるんだから。字とか本とか好きなら、利益関係なく楽しめばいいじゃん。やりたいことやって、『精霊の友』の知り合いを増やしていけば面白いと思うよ?」


 ハヤテは将来どうしたいんだろうな?

 ちょっと興味ある。


「おらも金儲けしてみたいだ」

「そーきたか」


 この俗物精霊め。


「……でもあんた普通の人間相手じゃ何にもできないだろうし……」

「難しいだか?」

「魚人は皆『精霊の友』だから大丈夫だな。エルフも精霊親和性が高いって聞いたことあるよ。ハヤテは転移できるんだから、能力を生かせばいい。魚人やエルフ相手に商売する手がある。こっちで高値で売れそうなものを向こうで仕入れて、ケスやアレクに売ってもらえばいいか」


 おーハヤテ嬉しそうじゃないか。

 でもハヤテの金儲けしたいって考えはどこから来たんだろうな?

 精霊は皆比較的無欲なものなんだけど。

 アレクやケスと付き合っている内に影響されてきてるのだろうか?


「ユー姉、ボクは?」

「何であたしがアレクの世話なんか焼かなきゃいけないんだ」

「そう言わずに。美少女精霊使いのカリスマを発揮しておくれよ」

「盛大に期待されちゃしょうがないなー」


 皆が皆してちょろいぜ、の顔。

 あたしはお約束には弱いのだ。

 逆らっちゃいけない気がするから。


「さっきの紙を扱ってる商人さんの話だと、本書く人が足りないみたいなんだよ」

「ボクが本を書けってこと? 面白いとは思うけど、食べていくだけの収入にならないだろう? 本は数が売れるものじゃないから」

「さて、ここで問題。どーして本は売れないのでしょーか?」


 さあ、皆で考えよう!

 クイズ世界は商売商売!


「まず本の利点って何かな? はい、クララ」

「知識を得られるのが素晴らしいです」

「うん。知識を形にして残しておくことは大事だと思う」

「枕としては不適格だけれどもね」


 だから睨むようにあたしを見るな。


「アレクやクララの愛する本が売れないのは何で?」

「読む人が少ないからだべ?」

「ああ、ハヤテの言う通りだ。字を読める人の絶対数が少ない。読めなきゃ本なんて買うわけないから」

「値段の問題もあるだろ。高くちゃ買えねえ」

「うん、ここでやっぱり識字率と、それから本にできるような質のいい紙の価格が問題になるね」


 新聞に使うような紙はさほど高くないようだが。


「紙は緑の民の村でも作ってるって話だから、どの程度のものか知りたいね。理由はそれだけかな?」

「「「えっ?」」」


 素っ頓狂な声出すな。


「さて問題。識字率が高くて価格が安ければ本は売れるのかな?」

「少なくとも今よりは。……内容に興味がないんだったら、いくら安くても買わないだろうけれども」

「それだよ、一番重要なのは。興味がないものは売れない。おゼゼを持ってる人に興味を起こさせる本なら売れる」

「興味、か」


 アレクやクララみたいな、何でも読む子が例外なのだ。

 奇人変人を基準にしちゃいけない。


「何にでも言えることだけど、大量生産できれば価格は下げられまーす。お客さんはドーラ内に限らなくたっていいよ。本は腐るもんじゃないんだし、帝国本土の人に売りつけること考えてもいいんじゃないの? 面白いものさえ書ければ」

「……」


 アレクが黙る。

 あたしが戦争後も帝国との貿易を考えていることに驚いたのだろう。

 今は敵かもしれんけどさ。

 帝国をいつまでも敵扱いしてちゃ、ドーラの発展が妨げられるわ。

 戦争なんかとっとと終えて、楽しい商売の時間だ!


「今、帝国との貿易は細ってるけど、いつまでも現状が続くとは限らないよ。帝国に売りつけて儲け出すくらいの本書いてよ」

「……なるほどね。専門書だけじゃなくて、広く売れそうな本ということか。一般ウケする本を安く出せれば……」


 専門書はどうせ数売れないんだから高くたっていいんだってばよ。

 購買対象が狭い本より、字を読めるようになった人達が喜んで買ってくれるような……。


「エンターテインメントだよ、エンターテインメント。具体的には、あたしが枕にしようとしても、それを押し止めて読ませるだけの威力がある本。絶対に売れちゃうな」


 ユー様不可能じゃないですかって顔をクララがしてるけど、必ずしもムリってことはないんだぞ?


「あー、誰か『精霊使いユーラシアのサーガ』書いてくれないかなーちらっ」

「また『ちらっ』って。『精霊使いユーラシアのサーガ』は、ダンさんに書いてもらえばいいじゃないか」


 何故ここでダンが出てくる。

 いや、ダンはあたしですら忘れてるよーなネタを持っていそうではあるけれども。


「ダンは面白い方向にしか話を盛らないもん。かっちょいい感じに盛ってくれないと」

「面白いほうが売れるよ。エンターテインメントだよ?」

「……一理ある」


 うあ、メッチャ葛藤があるな。

 ケスは明らかに面白い『精霊使いユーラシアのサーガ』がいいって顔してるし。


「ま、いいや。勉強の邪魔しちゃ悪いから。アトム、ダンテ、あんた達は字の読み書きできるんだっけ?」

「書いたことはないでやすが、読むことはできやすぜ」

「モーマンタイね」


 うちの子達は案外優秀だな。


「どこで覚えたの?」

「「パワーカードの説明で」」

「あっ、そーか」


 読めなきゃどれが何のカードかわかんないもんな。


「うーん、必要性は最高の教師だねえ」


 ケスが聞いてくる。


「姐さん達はこれから用があるのか?」

「今日特にないかな」

「じゃあ、ゆっくりしていってくれよ。皆でいると楽しいぜ」

「クララ、アトム、ダンテ、あんた達ここでゆっくりしてなさい」

「ユーラシアさんはどうするだ?」

「あたしは掃討戦後にもらって広げた畑を見てくる」

「ユー様、外は寒いですよ」


 アレクがニヤニヤしながら言う。


「ここにいればいいのに」

「眠くなっちゃうんだよ。わかってるくせに」


 皆が笑う。

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