第482話:一刀両断
せっかくだからうまーく倒して、『スライムスキン』をゴッソリ手に入れたいものだ。
しかし相手は伝説のドスケベスライム。
あたしの得意技『雑魚は往ね』なら、ボス補正さえなければ傷一つつけずに倒せる。
でもなー、溜め技だからなー。
溶解液を広範囲に噴射されたりすると、服を溶かされサービスシーンになってしまう。
どうしたものか?
「どうやって倒すのが理想的かなあ?」
「即死攻撃で一突き、じゃな」
「うーん、ちょっと難しいね」
あたし達のレベルで普通に刺突攻撃したら、スライムなんか破裂してしまう。
手加減した攻撃で、パワーカード『ニードル』と『ファラオの呪い』やアトムのバトルスキル『朱屠拘束』を用い、即死効果に期待することは不可能ではないが、即死効果が出るのって相手が無耐性でも二〇~三〇%の確率らしいしな?
何度も突いたんじゃ穴だらけになって本末転倒だ。
ボス補正があったりすると、そもそも即死が効かないし。
「まあ即死はムリじゃろう。であれば真ん中から真っ二つにしてくれればよいぞ。あちこちに傷がついたり、魔法で変質してしまったりするよりよほどよい」
「わかった、任せてよ。我が刃の錆にしてくれるわ!」
パワーカードで具現化した刃は錆びたりしないけれども。
「ハハハ、心強いの。ではまいろうか」
小屋を出る。
「アトムー、ダンテー、お仕事行くよー」
アトムとダンテが駆け寄ってくる。
スライム爺さんが疑問に思ったようだ。
「こやつらは何をしておったのじゃ?」
「石を拾い集めてもらってたんだ」
「石?」
「こういう黒くて硬い石だよ。黒妖石って言うんだけど」
袋の中を見せる。
「ああ、この小石か。うちのスライムが嫌うので、避けてたくさん集めてあるぞ。必要か?」
「欲しいでーす」
「こちらへ」
小屋の裏の納屋に案内される。
ヒットポイント自動回復持ちのスライムは、体内の魔力量の多い魔物だ。
迂闊に触れると、体内の魔力が黒妖石側に流れちゃうのかもしれないな。
だから嫌うんだろう。
ただ『うちのスライム』って言い方からすると、普通のスライムはあんまり気にしないんだと思われる。
野良スライム避けには効果がないとゆーことか。
ラブリースライムはデリケート。
「どわっ、こんなに?」
納屋の中には黒妖石の山があった。
集めるの大変だろうに。
「もらっちゃっていいのかな?」
「大した礼もできぬのじゃ。全部進呈しよう」
「わあ、ありがとう!」
やったあ!
当分黒妖石には困らないぞー。
実験し放題だ!
「うむ、では西へまいるぞ」
「ドスケベスライムのいる現地だね?」
テクテクと一〇分ほど歩くとそいつはいた。
「本当だ。デカいな」
「スライムの強さの見分けは簡単なのじゃ。単純に大きいものほど強い」
「知らなかった。覚えとこ」
この縦だけでもあたしの背の高さほどあるスライムは、察するに中級冒険者一人で倒すにはかなり厳しいと思われる。
ヒットポイント自動回復持ちの魔物は、火力を集中して一気に倒すべきだよなー。
まーうちのパーティーはレベルがレベルだから苦戦なんかしないけど。
「こいつは一体だけなのかな?」
「一体だけじゃ。任せたぞ」
緑色のドスケベスライムに警戒されるのを承知で、あえて風上から近付く。
だって風下は、斬った時に汁飛んできたら嫌じゃん。
「……」
真ん中から真っ二つなら、『アンリミテッド』より斬撃属性の『スラッシュ』のほうがいいか。
無言のまま、『スラッシュ』&『スナイプ』の間合いに入ったところで一閃。
リクエスト通り、真っ二つにして倒す。
ドスケベスライムなのにサービスシーンはないのかって?
だからないよそんなものうっふーん。
「お見事!」
「ほう、かなり遠くても届くのじゃの」
爺さんとお孫さん大喜びだ。
二人で手際よくスキンを剥いでゆく。
へー、職人技はすごいな。
「ではこれが依頼料になる。受け取ってくれ」
「ありがとう!」
やはり現物支給は『スライムスキン』だった。
これで転移石碑用の『スライムスキン』はバッチリだな。
何もかも計画通りでひっじょーにありがたい。
「ところでお主ら、あの黒い石は何のために集めておるのじゃ?」
「カトマスのマルーさん知ってる? マルーさんの技術で……」
大丈夫かな?
ものすごい勢いで咳き込んでるけれども。
命の危険を感じるくらいだぞ?
「『強欲魔女』が関わっておる案件か? いやいや、聞かなかったことにする。ここでその石を得たことは内密に頼むぞ!」
「はーい、わかりました」
マルーさん、どこ行ってもこんな扱いなんだけど?
いっそ愉快だな。
「今日はすまなんだの。お主らほどのエース冒険者にわざわざ来てもらって」
「いやいや、こっちこそお土産もらい過ぎだよ。お礼したいんだけど」
どう考えてもあの黒妖石の山は過剰だ。
却って悪いなあ。
「よいよい。売れるものではないし、ワシらが持っていても使えぬものじゃ」
貸し作るのは好きだけど、借り作るのは好きじゃないんだよなー。
「あっ、じゃあお孫さんを一時間ほど貸して! スライム牧場に相応しい人材にしてみせるよ!」
あたしの得意技で恩返しだ!
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
スライム爺さんのお孫さんを連れて魔境にやって来た。
「今日も魔境ツアーですか?」
「うん。この人、昔『アトラスの冒険者』やってて今スライム牧場営んでるお爺さんの孫なの。スライム牧場というのがあたしの最初のクエストでさ、すごくお世話になったから、お孫さんのレベル上げに来た」
「ほう、そのスライム牧場のある場所というのは、魔物の出る土地柄ですか?」
「たまに出るみたいだね。今日もでっかいスライムが現れて、退治依頼があたしに振られたんだ」
「つまりそのお孫さんに強くなってもらって、魔物退治まで含めて自分で管理できるようにしておく、ということですね?」
「うん!」
スライム牧場が今後しっかり運営されることは重要だと思うのだ。
オニオンさんがお孫さんに言う。
「ユーラシアさんは魔境のプロフェッショナルです。指示に従っていれば危険はありませんから」
「は、はい」
「行ってくる!」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊及び未だ事情のわかっていない牧場の跡取り出撃。




