第481話:伝説のドスケベスライム
――――――――――九六日目。
八艦からなるカル帝国艦隊は洋上を遅滞なく航行している。
二日後にはドーラに到達予定。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
今日は朝からギルドへ来たぞ。
新しい情報でもないか、あるいは誰か慌てていないかな?
「やあ、ユーラシアさん。今日もチャーミングだね」
「おっはよー。ポロックさんがいつもチャーミングって言ってくれるから、あたしもパワーが溢れてくるよ」
「魅力というパワーかな?」
「力こそパワーだよ」
アハハと笑い合う。
ふむ、念のためギルドに来てみたけど、特に戦争についての情報交換は必要なさそうな気配だ。
おどけているように見えるポロックさんも冷静で、やるべきことは終えているのだろう。
特にこれ以上話しかけてこないみたいだし、問題ないと見た。
ギルド内部へ。
「御主人、こっちだぬ!」
おっぱいさんのところにいるヴィルに呼ばれる。
あれ、こーゆーパターン珍しいな。
依頼受付所へ。
「サクラさん、おっはよー」
「おはようございます、ユーラシアさん」
「ひょっとしてあたしに依頼があるとか?」
「はい。ユーラシアさんほどの実力者に見合う依頼ではないのですが、ちょうど依頼先の転送魔法陣をお持ちなので、お願いしようかと」
あたしが今までに行ったことのある場所か。
やっぱりおっぱいさんが石板クエストの割り振りを決めてる説が濃厚。
戦争前の息抜きとゆーか気晴らしにはよさそう。
「どこかな?」
「スライム牧場です」
「あっ、ちょうどいい! 用があって行こうと思ってたところなんだよ」
カラーズ緩衝地帯から掃討戦跡地まで、転移石碑で行き来できるようにしたい。
黒妖石はストックがあるけど、『スライムスキン』がもうないのだ。
まとまった数になりそうだから、道具屋さんで取り寄せてもらおうかとも思ってたところだった。
イベント絡みでスライム牧場に行けるなら、スライム爺さんに先に相談すりゃいいな。
おっぱいさんがすまなさそうな顔をする。
「この依頼、ギルドは仲介料を受け取っていますが、冒険者には現金報酬がなくて現物支給なんですよ。その分獲得経験値に上乗せしたいところですけど、ユーラシアさんのパーティーはレベルカンストしていますし」
「全然構わないってばよ」
「はい、ではお願いします。こちら石板クエスト扱いになります。後のギルドカード確認は必要ありませんので」
「わかった、行ってくるね!」
現物支給なら『スライムスキン』が手に入りそうな気配じゃないか。
いよいよもって好都合だ。
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
スライム牧場のある地に転送して来た。
前来た時とさほど印象変わらないな?
相変わらず荒地っぽく見えるけど、荒れ果てている感じではない。
「もっとすげー寒くなってるかと思ったよ」
「寒い風は山で防がれるのかもしれませんね。さすがにこの時期だと枯れてる草が多いですけれど」
アトムから声がかかる。
「姐御、黒妖石がかなり落ちてやすぜ。魔境よりも多いかもしれやせん」
「マジ? じゃ拾い集めるのは任せた! ダンテ、袋広げてあげてて。あたしはクララとスライム爺さんのところ行ってくる」
「「「了解!」」」
ムイムイ鳴く牧場のラブリースライムの頭を撫でてやる。
どーしてこいつらはこんなに可愛いのだ。
とゆーかレベルの上がった今ならわかるけど、ラブリースライムには魔物特有の邪気がないな。
完全に家畜化されている。
さて、爺さんがいるだろう小屋へ。
「こんにちはー。ギルドにくれた依頼で来たよ」
「おお、お主達が来てくれたか。久しぶりじゃの、活躍は聞いておるぞ」
何本か歯の抜けた口を開けて笑い、あたし達を迎えてくれた。
爺さん以外にもう一人、二〇歳そこそこの若い男の人がいるな。
「そちらの方は?」
「ワシの孫じゃ。牧場を継いでくれることになってな」
「よかったねえ」
スライム牧場は有益で将来性のある事業だと思う。
跡継ぎがいるならあたしも嬉しい。
お孫さんに挨拶される。
「精霊使いユーラシアさんですね? お名前はかねがね」
「初めまして。今後ともよろしく」
握手。
感じのいい人だ。
「牧場を拡張しようということになったのじゃ。今の規模ではワシの食い扶持が精一杯じゃからの」
「うん、いいことだと思う」
「生産は増えても、需要がないと困るんですけど……」
お孫さんが心配しているようだが。
「『スライムスキン』の需要は全然大丈夫だよ。海の女王も欲しいって言ってるし」
「お主、魚人にも顔が利くのか?」
「友達なの」
『スライムスキン』は今後魔道具の発達による需要も見込めるしな。
あればあるだけ売れる気がする。
「依頼は牧場拡張のお手伝いなのかな?」
「拡張は急ぎではないので、ワシらだけで可能じゃ。問題は西に大型のスライムが現れたことでの。ワシの見たところ、レベル一五以下の者では退治はムリだろうと思われる。よって依頼を出したのじゃ」
強いスライムだな。
スライム爺さんは元『アトラスの冒険者』だ。
年齢から実戦はムリでも、魔物の見立てが間違っていることはないだろう。
「ここ、結構スライムが出るのかなあ?」
「夏涼しいが冬はさほど冷え込まないのじゃ。スライムの生育には適しておるの」
以前、魔物を飼うのに他人の理解が得にくいから、奥地に引っ込んでるみたいなことを言ってた。
気候が適してるってこともあるんだな。
「りょーかいでーす。西だね?」
「注意が必要なことがある。通常のスライムは雑食性じゃが、件の大型スライムは純植物食性なのじゃ」
「……何か問題があるのかな?」
「植物を溶解して取り込むスピードがかなり速い」
「えーとつまり?」
言いたいことがよくわからない。
むしろ純植物食性なら危険がないよーな気がするんだけど。
「油断してると服を溶かされるから気をつけよ」
伝説のドスケベスライムここでキター!
帝国の変態貴族が飼い慣らしているとゆー噂の魔物か。
なるほど、服に用いられている木綿や麻は植物性だから。
「溶解液を飛ばしてくることがあるが、お主らの実力ならば避けるのは容易いはずじゃ」
「わかった。注意してくれてありがとう!」
「もう一つ。上手に倒せば、通常の二〇倍以上の『スライムスキン』が採取できる」
ほう? 聞き捨てならない情報だ。
ドスケベスライムというと、漫画『BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー』に登場したものが思い出されますね。




