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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第479話:デミアンの思惑

 ヌヌスツインズが代わる代わる言う。


「故郷の集落にポーションやマジックウォーターは売ってないですね」

「回復アイテムはチドメグサ、魔法の葉くらいです」

「じゃ、マジックポイントなくなったら寝て、次の日にクエストを持ち越しなさい」

「うむ、悪くないだろう」

「えっ? 魔法の葉でもいいのでは? マジックポイント回復効果があるんですよね?」


 ツインズを制して言う。

 そーゆー人として誤った考え方をしてはいけないから、わざわざ注意しているのだ。


「あれは人間の口の中に入れるもんじゃないの。味覚が破壊されるし、精神を病みそうになるからやめなさい」

「草食動物も一ヒロ以内に近付かないほどだ。ユーラシアの意見、悪くない」

「魔法の葉かしからずんば死か、それくらいの不味さだよ」

「冒険者は一度は口にするものだ。しかし、いかに勇敢であっても二度目はない」

「魔法の葉食べるかイビルドラゴンの攻撃食らうか選べって言われたら、あたしはためらいなくイビルドラゴン選ぶ」


 コクコク頷くツインズ。

 これだけ言っとけば、魔法の葉を食べようなんてバカな気は起こさないだろう。

 こうして一組の双子を救ったのであった。


「ありがとうございました。他に冒険者未満の駆け出しが注意すること、あるでしょうか?」


 ……ツインズは冒険者として基本的なことをわかってたもんな。

 改めて注意することなんかこれ以上ない気はするけど。

 あとはギルドに来てからでいいんじゃないの?


「デミアンから何かある?」

「『経穴砕き』については、今知っていても悪くない」

「おお、デミアンやるね。一五〇〇ゴールドで手に入る『経穴砕き』ってスキルがあるんだけど、これはちょっと気の利いた冒険者なら覚えてるんだ。必ず元取れるから」


 バエちゃんの持ってる、販売中のスキルスクロールの価格と効果一覧を、興味深そうに見るツインズ。


「『経穴砕き』……敵単体に一ダメージを与え魔法防御をかなり下げるバトルスキル、ですか。ちょっと使いどころがわかりませんが」

「と、思うでしょ? このスキル、必ず一ダメージ与えるというところがミソなんだ。人形系って呼ばれてる特殊な魔物がたまに現れるんだけど、こいつは普通の物理攻撃や魔法攻撃が効かないの。衝波系とか防御力無視って呼ばれる攻撃じゃないと。極めてレアな固有能力持ち以外は、低レベルの内は『経穴砕き』しかダメージを与える手段がないんだよ」

「人形系は総じてヒットポイントが少ない。低レベルの内に出現する踊る人形は一、ギャルルカンは二だ。にも拘らず獲得できる経験値は非常に多く、高価な魔宝玉を必ずドロップする。悪くない」

「経験値もおゼゼも稼げるんだよ? 冒険者として万々歳じゃん。人形系を倒せないなんて、そんな人生つまんない」


 これは誰が何と言おうと至言であり金言。

 ともかくツインズのチュートリアルは終了だな。

 御苦労様。


「では、お気をつけて。あなた方の御活躍をお祈りいたします」

「「ありがとうございました。失礼します」」


 転移の玉を起動、嬉々としてツインズが帰っていった。


「大喜びで帰っていくのは気分がいいねえ。ってゆーか、あたしいらなくなかった? デミアンだけで十分だったじゃん」

「いやいや助かった。悪くない」

「そお?」


 ヌヌスツインズは魔物と戦ったことこそないようだったが、かなりわかってる子達だった。

 先輩の助けなんかなくてもギルドに到達できたと思う。

 あたしは御飯奢ってもらったからいいんだが。


「今日思ったのはさ。装備決定の時点で、現役冒険者の意見を取り入れるべきだってことだねえ」

「同感だ。悪くない。しかし初期装備をスキルに入れ替えられるというのは、我輩知らなかったが」

「初期装備が三〇〇〇ゴールド相当なら何でもいいみたいだよ? 出身地が武器や防具が簡単に手に入る場所の時もあるだろうし、現金やアイテムもらうのがいいケースもありそうだけど」

「武器や防具より、現金やアイテムの支給がいいこともあり得るのね? うん、わかった。上に提案してみる」


 新人さんの選択肢が増えるね。


「てかどーして今頃新人さんが来るの? こっち帝国との戦争直前で忙しいんだけど」

「だって人員の選定はともかく、投入時期については私みたいな一係員が関わり得るところじゃないんだもの」

「!」


 驚くデミアン。


「バエちゃんは他所の世界の人だから、帝国とドーラの戦争には無関係なんだ」

「他所の世界?」

「えーと、亜空間を越えた別の世界ってこと。『アトラスの冒険者』も他所の世界のものなの」

「ああ、だからか。納得の超技術だ。悪くない」

「理解が早くて助かるよ。『アトラスの冒険者』は今のところうまく回ってるから、このことは内緒にしといてね。つまんない詮索されて、システムに疑問持たれると困る。ドーラが混乱しちゃうわ」

「オーケー、いいだろう」


 自分から天才って言うだけあるな。


「バエちゃんはどこまで聞いてる? 三日後には帝国の艦隊が来るんだ」

「三日後?」


 バエちゃんが心配そうな声を出す。

 ふむ、やはりギルドの正職員で共有されているはずの情報が、チュートリアルルームのバエちゃんには届かない。

 最低限の事務的なやり取りしかないんだろうな。 


「魔境のペコロス氏にある程度のことは聞いた。西域に行くんだろう? 悪くない。しかし何故、ユーラシアは情報が早いんだ?」


 デミアンは答えにくいことを聞いてくるなあ。

 バエちゃんの前で本の世界のことはこれ以上言いたくないし。


「クエストの転送先に事情通がいるんだ。その情報をパラキアスさんに流して、代わりにパラキアスさんからも話を聞いてるの」

「なるほど。ペコロス氏も、詳しいことはユーラシアに聞けと言っていたんだ。今日、ユーラシアを誘い出した理由でもある。悪くない」

「ほー、策士だね」

「帝国軍工作兵が西域に密かに上陸すると聞いた。潰せばいいんだな?」

「実際にはどこに上陸するかわからないけど、西域の可能性が最も高いってことね。せいぜい派手に働いてくれる? パラキアスさんと『西域の王』バルバロスさんとの協定で、『アトラスの冒険者』が西域の守りにつくことが、西域の離反しない条件なんだって」

「やるせない条件だな。いいだろう」


 いいんだ?

 現実主義者だな。

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