第478話:戦術指南
バエちゃんが言う。
「ゼファーさんは攻撃力・防御力・最大ヒットポイントに優れた前衛向きで、『魔力操作』の固有能力持ち、エオリアさんは魔法力・敏捷性・最大マジックポイントに優れた後衛向けで、『アシスタント』の固有能力持ちです」
『魔力操作』はうちのアトムと同じ固有能力だ。
習得していくスキルも、前衛向きのパラメーター持ちとは相性がいいんじゃないかな。
『アシスタント』は支援系補助系のスキルをいくつか覚えるんだそうな。
後衛向きの固有能力と思われるが……。
「デミアン、どう思う?」
「ゼファーは問題ない。悪くないだろう。しかしエオリア次第で、序盤が易しくも難しくもなる」
「同感だねえ」
初めは有用なスキルなんか持ってないだろうし、序盤は完全にエオリアが足でまといになりそう。
初期装備が案外難しいな?
「こちらが用意させていただいたお二人用の装備です」
どんな調査してるんだか知らないが、初めっからエオリアも冒険者として活動するってわかってたみたい。
どれどれ、装備品は……剣と胸当て、棍、革の服か。
ごく常識的だが、むーん?
「『プチウインド』と『ウインドカッター』、どっちがいいかな?」
「『ウインドカッター』、悪くないだろう」
デミアンの言う通りだな。
『プチウインド』と『ウインドカッター』のスクロールの価格は同じだが、序盤はマジックポイント節約より与ダメージが大きいほうを。
ガンガン魔法ぶつけて、マジックポイントがなくなれば撤退でいい。
「バエちゃん、棍と革の服はいらない。代わりに『ウインドカッター』のスキルスクロールをエオリアに」
「え? はい」
ゼファーが剣と胸当てを装備し、エオリアが『ウインドカッター』のスキルスクロールを開いて習得する。
「ゼファー、この場合の戦術としてはどうしたらいいと思う?」
「僕が前衛で、後ろに攻撃を通さないようにするべきですよね? エオリアが引いた位置から攻撃魔法を放ちます」
「オーケー。エオリア、今後の方針は?」
「装備の充実と、いずれ私が回復を担当することになると思いますので、その手段を得ること、ですか?」
「いいだろう、悪くない」
「よーし、あんたら偉い! バエちゃん、テストモンスター用意して」
「わかったわ! 出でよ! 邪悪なる存在、テストモンスターよ!」
魔物が身近な自由開拓民集落の出身なのかな?
よく理解してる。
バエちゃんがノリノリでテストモンスターを起動する。
剣と盾を持った、ファイターみたいな見かけの影のようなものが現れた。
「フィールドで出現する最弱魔物より弱いよ。あんたらの実力なら問題なく勝てる。ガンガンいこうぜ!」
「ガンガンいっちゃってください!」
「「ガンガンいきます!」」
「ガンガン、悪くない」
レッツファイッ!
エオリアのウインドカッター! ゼファーの斬撃! テストモンスターに攻撃ターンを許さない完勝だ!
「おめでとうございます! これでチュートリアルは終わり、新しい『地図の石板』が出ますよ。次からは実戦で頑張ってくださいね」
「少なくともあたしがレベル一の時よりは強いよ」
「複数を相手にすると後衛が厳しいだろう。装備が整うまで、単体の魔物を相手にするのが悪くない」
「「はい!」」
おー嬉しそうだなツインズ。
「ゼファーは『魔力操作』の固有能力持ちでしょ? レベル一つ二つ上がると覚える『マジックボム』が強力だから、問題なくギルドまでは来られると思うけどな」
「ほう、ユーラシアは博識だな。悪くない」
「いや、たまたまうちの子の一人が『魔力操作』持ちなの。だから知ってただけ。でも『マジックボム』も欠点あるから注意ね」
全員が欠点って何? って顔をする。
「爆散する威力が強いの。例えば洞窟コウモリを『マジックボム』で倒しても、食べるところ残んないんだよ。うちではおいしい魔物倒す時は禁じ手にしてた」
笑うな。
大事なことだぞ。
「エオリアさんが早めに回復魔法『ヒール』を使えるようになると、さらにいいと思いますよ」
「バエちゃんの人の良さそうなタレ目に騙されちゃダメだよ。『ヒール』のスキルスクロールはチュートリアルルームの収入源で、かなーり阿漕な値段なんだ」
「ユーちゃん、ひどーい」
皆で笑う。
「精霊使いのパーティーで使っているパワーカードはどうなんだ? 悪くないだろう?」
「確かに」
ツインズに『アンリミテッド』を起動して見せてやる。
「あっ、ユーラシアさん、武器持ってるんですね?」
「あたしほど優秀な冒険者が丸腰なんてことはないのだ。なんちゃって。この手のカードの一種に『ホワイトベーシック』というのがあって、装備すれば『ヒール』『キュア』が両方使えて魔法力も上がる。で、ギルドでの販売価格一五〇〇ゴールド。ちなみに『ヒール』と『キュア』のスキルスクロールを両方買うと一万ゴールド」
「『ホワイトベーシック』のほうが疑いようなくお得ですね」
「お得なんだけど、うちのパーティーは『ホワイトベーシック』を装備したことないんだ。どうしてだと思う?」
パワーカード装備体系の利点欠点を教えてやる。
「……ということで、うちのパーティーにとって『ホワイトベーシック』よりも有用と考えられるカードを装備させてるし、あたし自身は『ヒール』や『キュア』より高価な『クイックケア』をスクロールから覚えてるんだ」
「なるほど、装備するには七枚の制限がある……」
「パーティーメンバーの能力次第で必要なカードを……」
考えてるね?
「まああんた達はパワーカードじゃなくてもいいと思うけど、パーティーに一人パワーカード使いを入れとくのが最近のトレンドだとは聞いたよ。装備が軽いから、アイテムや素材の採取が捗るんだよね」
「ギルドまで来れば仲間を得やすい。最終的なパーティーの方向性は、その後に決めても悪くない」
「ギルドまでは火力で押して、回復はアイテムに頼ってでもいい。あんた達の村ではポーションやマジックウォーター売ってるかな?」
ツインズが顔を見合わせる。
なきゃないでいいんだよ。
チュートリアルルームからギルドまでに、長々と探索させるようなクエストは出ないから。
ヒットポイントやマジックポイントに不安を覚えたら、転移の玉で家に戻って、また明日頑張ろうで十分なのだ。




