第477話:ツインズ
フイィィーンシュパパパッ。
再びチュートリアルルームに戻ってきた。
ちなみにうちの子達は留守番だ。
「ユーちゃん、いらっしゃいアゲイン」
「ごめんね。お肉アゲインにはならないけど」
「アハハ」
でもちょっと残念そうなバエちゃん。
既にチュートリアルルームに来ていたデミアンと、ステータスパネルを見ている。
何で?
「あれ? 何か別の場所が映ってる?」
「これから来るだろう新人さんの様子を見てたのよ」
「へー、そんなことができるんだ?」
「チュートリアルルームへ転送される魔法陣には、観察機能があるから」
知らんかったわ。
役に立つのか立たないのかわからん機能だな。
見てるとヤキモキするだけなんじゃないの?
「……デミアン、ひょっとして緊張してる」
「少々の緊張は人生のスパイスだ。悪くない」
「おお、イカすセリフだね」
パネルを見ながらも所在なさげにしている。
本当にコミュ障なのか、喋りがユニークなだけなのかわからん。
新人さんもモニターには映るんだが、躊躇してるみたいだな。
気持ちはわかる。
「まだかなあ? 思ったより面白いな。アリジゴクの罠に引っかかるアリを見てる気分」
「アリジゴク悪くない」
「アハハ。こればっかりは本人の性格もあるから何とも。最初悩む人は多いのよ? ユーちゃんみたいに昼御飯食べてから損害賠償請求しに行こう、みたいなのはごく少数派なの」
「何で知ってるんだよもー! 早く忘れろ!」
皆で笑う。
チュートリアルルームにあるのがただのステータスパネルじゃなくて、新人冒険者観察用のモニターも兼ねているとはなあ。
最初ここに来た時、バエちゃんに待ち構えて挨拶されたから変だなーとは思ってたけど。
チュートリアルルーム行きの転送魔法陣がこんな仕組みになってたとは、全然気付かなかった。
「デミアンは最初『地図の石板』得た時、どうだったの?」
「吾輩に相応しい運命の招待状だと思った。悪くない」
「何それ、デミアンかっくいいーって言って欲しいの?」
「大いに歓迎する、悪くない」
デミアンは相当面白いやつだな。
今まで知り合えてなかったのは惜しかった。
「お、アリジゴクに嵌ったかな?」
「言い方悪くない」
「転送魔法陣に入ったわね。来るわ」
シュパパパッ。
薄茶髪の男の子と女の子が現れる。
「ようこそ。ゼファー・ヌヌスさん。私がこのチュートリアルルームの管理人イシンバエワです。よろしくお願いいたします」
どうやら男の子の方が『アトラスの冒険者』らしい。
二人の関係は幼馴染か、それとも兄妹かな。
あたしも初めてチュートリアルルームに来た時はクララを連れてたけど、二人で来る人は比較的珍しいんじゃないかと思う。
「「こ、こんにちは」」
「緊張しなくていいよ。あなた達二人の関係は?」
「双子です。ええと、あなたは?」
「あたしは精霊使いユーラシアだよ」
「「えっ、あの有名な?」」
さすが双子。
息ピッタリだね。
あたしはかの有名な美少女精霊使いユーラシアだよ。
興奮気味の双子の視線が心地いいなあ。
「バエちゃん、まず簡単に『アトラスの冒険者』の説明してあげてよ。決まり文句があるんでしょ?」
「わかったわ」
――――――――――一〇分後。
「……とゆーわけで、行けるところが増えるのは単純に便利。あんた達だってレイノスやカトマスへ簡単に行けるようになったら嬉しいでしょ?」
「「そうですねっ!」」
バエちゃんの『アトラスの冒険者』に関する基本的な説明のあと、あたしがそのメリットを力説する。
あたし自身が『アトラスの冒険者』のおかげで人生楽しいから、力も入るわ。
ツインズもメッチャノリノリになってきた。
ちなみに妹さんの名前はエオリア、二人は西域の自由開拓民集落の出身だそーな。
「仮に自分達の転送先に行きたい場所が出なくても、知り合いの誰かの転送先にあれば、一緒に飛べるようになるから。それには冒険者の集まるドリフターズギルドに行って、ギルドカードをもらうことが必要」
「なるほど、ではギルドに行くためにはどうしたらいいですか?」
「今日のチュートリアルが終わると、新しい『地図の石板』が手に入るよ。二つめの転送魔法陣が設置されて、転送先に新しいクエストがある。クエストを二、三終えると、ギルド行きの石板をもらえるとゆー仕組みなんだ」
熱心に聞くツインズ。
「はい、ここでいい話と良くない話がありまーす。どっちから聞く?」
「で、ではいい話から」
「ギルドとレイノスはすぐ近くだよ。歩いて二〇分くらい。道さえ間違えなきゃ魔物も出ないんだ。ギルドまで来られたらレイノスでお買い物できるよ」
「良くない話とは何ですか」
「『アトラスの冒険者』は、ギルドに来るまでに半分が脱落しちゃう。残念なことに」
ツインズの顔が曇る。
「半分も、ですか……」
「ただ落伍者量産も過去の話なんだなー」
「「?」」
ツインズに説明する。
ここが先輩に助けてもらえシステムの肝だから。
「新人冒険者が脱落しても誰も得しないんだよ。困りごとを抱えてる人は救われない、ギルドは儲からない、バエちゃんは給料下げられる。そして新人冒険者は……」
一呼吸置く。
「挫折感以外何も得られない」
全員が頷く。
しんみり。
優秀で性格のいい子達を集めといて半分に挫折感を与えるって、考えてみりゃひどい仕様だ。
何故今まで文句が出なかったのか?
「だから新人冒険者をサポートする制度ができたのでした。おめでとう! あんた達は制度の恩恵に与れる、栄えある第一号だよ!」
「「はい!」」
「あんた達が順調にクエストをこなせればいいんだけど、もしムリだと思ったならバエちゃんに泣きつきなさい。『アトラスの冒険者』が誇る天才デミアンが、あんた達をサポートするよ」
拍子抜けしたような顔でゼファーが言う。
「あの、ユーラシアさんは?」
「あたしはデミアンのサポートを今日のお昼御飯で頼まれたの。デミアンが困ればあたしも力になるから、心配しなくていいって」
「「わかりました!」」
「じゃ、バエちゃん、あとお願い」
「はい。では二人ともこちらへ来てくださいね」
ステータスパネルで能力の確認だ。
兄ゼファーはもちろんのこと、妹のエオリアも何かの固有能力持ちだぞ?
どんなやつだろ?
他人の固有能力を知るのはちょっとワクワクする。




