第476話:美少女精霊使いを頼りたまえ
フイィィーンシュパパパッ。
デミアンに昼食をたっぷり奢らせてから、チュートリアルルームにやって来た。
「ユーちゃん、いらっしゃい」
「お肉、お土産だよー」
「やったあ!」
身体をクネクネさせて喜ぶバエちゃん。
「デミアンって冒険者知ってる? 黄色い人」
「うん、悪くない人よね。よくスキルスクロールを買ってくれるの」
「チュートリアルルームにも来るんだ?」
『ジーニアス』の固有能力って、スキルはあんまり覚えないのかな?
いや、ソロで冒険者やってるから、様々なオプションが必要なのかもしれないな。
最低限回復魔法は必要だろうし。
「新人の教育係を任されて困ってたから」
「あっ、はいはい」
内情知ってるっぽいな。
「デミアンに仕事回したの、バエちゃんなん?」
「だってユーちゃん忙しそうだったし。次いで優秀な冒険者ってデミアンさんだから、指名でお願いしたの」
「デミアン今まで冒険者として困った経験がないから、アドバイスできないって。今初めて困ってるんだけど?」
「まあ。じゃあデミアンさんも成長できるわね」
「おおう、そーゆー考え方もあったか」
バエちゃんはポジティブだな。
好感持てるわ。
「デミアンの持ち固有能力からすると、序盤から苦労知らずだったってのはおそらく本当だな」
「でも高レベル者なんだから、新人の手助けくらいできるでしょう?」
「どーかな? デミアンは入ったばかりの新人に何ができるのかってことすら多分わかってないぞ? 新人さんがリタイヤしちゃったらダメじゃん。教育係指名したのバエちゃんなら責任問題だ。給料下げられちゃうぞ?」
「……本当だ。どうしよう?」
「だからあたしが来た!」
「頼りになるう!」
ハッハッハッ。
この美少女精霊使いを頼りたまえ。
「で、新人さんはどんな子なの?」
「まだわからないの。チュートリアルルームにも来たことないし」
「これからの段階なんだ?」
何だ。
デミアンも実際に会ってみて指導に悩んでるんじゃないのか。
「『地図の石板』はもう送ってあるから、きっと今日中に来ると思うの」
「段取り悪いなー。一度ここに来させてテストモンスターとの試闘を見て、明らかにサポートが必要だったら冒険者を手配する。でなければ、難しかったら先輩の助けがあるからいらっしゃい、ってふうにすればいいじゃん」
「遅くないかしら?」
「新人さんと先輩の相性の良し悪しもあるでしょ。絶対に新人さんがどんな人か確認してからのがいいって」
テストケースだから色々やってみようよ。
さて、スキルスクロールを買っていかなければ。
「『プチウインド』のスクロール二つちょうだい」
アレクは『プチウインド』を使えるから、他の後衛の子に覚えさせよう。
「はい。二〇〇〇ゴールドになります」
「じゃ、あとでまた様子見に来るよ。一時間後くらいになるけど」
「わかった。もし新人が先に来たら待たせとくね」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
「こんにちはー」
「あっ、姐さん!」
クララの『フライ』でカラーズ緩衝地帯へ飛ぶと、黄の民の面々がワラワラと集まってくる。
美少女精霊使い大人気の巻。
「皆、元気? フェイさんいるかな?」
「テントの中におりますよ」
「失礼するね」
テントの中へ。
フェイさん一人か。
「よく来たなユーラシア。何か用があったか?」
「パワーカード七五枚、フェイさんと輸送隊一四名に五枚ずつプレゼントだよ」
驚くフェイさん。
「間違って本格的な戦闘になっちゃう場面があると、ちょっと棍だけでは心許ないからさ」
「……よいのか? 高価なのだろう?」
「いいんだ。最近お金持ちになったから」
帝国軍潜入工作兵は西域に投入されるだろうとは思う。
しかしカラーズも備えだけはしておかないとな。
「では遠慮なく。明日にでも輸送隊全員を招集して配ろう」
「お願いしまーす。それからこれ」
『プチウインド』のスキルスクルール二本を渡す。
「これは?」
「開くと魔法を覚えられる巻物。アレク以外に二人、属性魔法の能力持ちの子いたでしょ? 『火魔法』と『雷魔法』だったからさ、迂闊に使うと火事になっちゃうんだよ。これは威力小さ目だけど、マジックポイントなしで使える風系の攻撃魔法なんだ。渡して覚えさせてあげてくれる?」
「うむ、何から何まですまんな」
「フェイさんにもらった棍はそのまま装備させといてね」
「要するに脅しが利くからということか?」
「眼帯君みたいな人が棍持ってるのと持ってないのとでは、威圧感が全然違うもんねえ」
使い勝手がよくても怖く見えないところはパワーカードの欠点だ。
「いい話があるよ。大地の魔力を吸い集めて魔力として用いる技術、教えてもらったんだ」
「ほう! ということは?」
「塩に応用するのはちょっと先になるかもしれないけど、まず転移石碑を設置しようと思うんだ。この緩衝地帯から米栽培の現場、とゆーかフェイさんが基地作ってた辺りまでだな」
「おお、実に助かるな!」
フェイさんもノッてきたね。
「いずれあの辺に各色合同で集落作ることできたらさ。どんどん掃討戦跡地の開発を進められると思うんだよねえ」
「移民を募ってもいいな」
「あっ、そうだね!」
使える土地があるだけで夢広がるなあ。
人口が増えればものも売れるし、知らない技術を持ってる人もいるかもしれない。
戦争が終わったら本当に移民が来るのかな?
パラキアスさんやデス爺は来ると考えて、掃討戦跡地を確保したかったみたいだけど。
「来年早々には転移石碑を何とかしたい。戦後になるね。戦争長引くと困るなー」
「早めに決着するといいが」
フェイさんが声を低くする。
「サイナス族長から開戦間近と聞いた」
「帝国の艦隊がドーラに到着するのが三日後だって」
「ふむ」
フェイさんが腕を組む。
「即開戦とは限らないけど」
「待ってくれるほど気前がいいとは思えぬな」
無骨な笑い。
「サイナス族長に頼まれていた作物輸送用の台車だが、明日には数が揃う。明後日の輸送隊出立には間に合うと伝えてくれるか」
「わかった、ありがとう」
よし、用終わり!
「じゃ、あたし帰るね」
「うむ、忙しいところすまんな」
「あたしは全然大丈夫だよ。またね」
カラーズにすごく活気が出てきている。
戦後も生き残って、開発に関わりたいもんだけどなあ。
転移の玉を起動し帰宅する。




