第474話:天才冒険者デミアン
パワーカード工房外の転移石碑からギルドにやって来た。
「ポロックさん、こんにちはー」
「やあ、ユーラシアさん。今日もチャーミングだね」
「御主人!」
先行させていたヴィルが飛びついてきた。
よしよし、あんたはいつもいい子だね。
今日はポロックさんに遊んでもらってたか。
チラッとポロックさんを見たが、落ち着いている。
特別あたしに話したいこともないようだ。
ギルドで戦争への対応ないし準備は着々と進んでいると見た。
次々うちの子達も転移してくる。
「今日は転移石碑から?」
「そうそう。アルアさん家の近くにあるやつ」
「ああ、アルアさんのお弟子さんが来ているよ」
あ、ゼンさんだな。
使いって、ギルドへだったのか。
武器・防具屋さんにパワーカードを納めるためだろう。
「多分あたしの用だ。行ってくるね」
「行ってくるぬ!」
ギルド内部、お店ゾーンへ。
「ゼンさん、ベルさん!」
やはりゼンさんは武器・防具屋だったか。
「ユーラシアさん、パワーカードちょうど納品されたところです。御確認ください」
「はーい」
「やっぱりユーさんの注文だったのかい。だと思ったぜ」
「ごめんね。数が数だったから、作るの大変だったでしょ?」
「ハハッ、たまに忙しいのは歓迎だぜ」
いいねえ。
職人らしいセリフじゃないか。
「いつも忙しいといいけどねえ」
「おっ、ユーさんそれは商人らしいセリフだな」
アハハと笑い、受け取ったカードを確認する。
「……七二、七三、七四、七五と。はーい、とりあえず枚数は間違いないでーす」
「え? もっとキッチリ確認してくれよ。種類は合ってるかい?」
「そんなこと言ったって、あたしだって何注文したか、細かいところは覚えてないんだもん」
「ユーさんらしいぜ」
皆で笑う。
前衛用一二人分と、後衛魔法職用が三人分あればとりあえずオーケーなのだ。
「このカードは交易の輸送隊に装備させるって話だったかい?」
「ゼンさんも少し事情を聞いてたか。全員のレベルは上げて、棍を持ってるんだけどね。やっぱしっかりガッチリ戦える装備も必要なんだよ」
「ふうん、危ない道なのかい?」
「輸送隊の通るカラーズ~レイノス間の道? 普段は危ないことないんだけど、魔物が絶対出ないとは言い切れないな」
「ああ、そうか」
「ちょっと前に盗賊が出たんだよ。冒険者崩れっぽかったんだけど、結構バカになんない強さでさあ。付け焼刃じゃ戦いの立ち回りまでは難しいだろうけど、せめて武装くらいはね」
武装さえさせとけば、フェイさんの指示で戦闘訓練くらいはするだろ。
ベルさん何か言いたそうだね?
あたしも言い訳っぽい口調だったか。
ベルさんはギルドの正職員だから、戦争の話は聞いてるはず。
輸送隊員のレベリングの真の目的も想像できるだろうけど。
「じゃ、あたし帰るね。カードありがとう」
「お買い上げありがとうございました」
「あ、ゼンさんはどうやって帰るの?」
「師匠に転移の玉を借りてるぜ」
転移の玉って登録者本人じゃないと使えないんじゃなかったっけ?
ベルさんから説明が入る。
「灰の民デスさんの作った転移の玉は『アトラスの冒険者』のものと違い、使用者の認証がないので誰でも使えるんですよ」
「へー、そうなんだ」
知らなかった。
じゃ、多分エルの持ってる転移の玉も同じ仕様だろうな。
『アトラスの冒険者』クビになったら、あたしもデス爺に転移の玉作ってもらお。
「新たなる知識を得てまた賢くなってしまった。ベルさんもありがとう」
「いえいえ」
「ユーさん、またな」
ゼンさんベルさんと別れる。
さて、バエちゃんとこでスクロール買ってから、フェイさんとこ行くか。
でもボチボチお昼だな。
何か食べてからにするべえ。
「おい、ユーラシア」
「あっ、ダン。ナイスタイミング!」
「俺にたかろうとすんな」
「たかろうとするぬ!」
ちっ、読まれたか。
このツンツン銀髪男め。
ヴィルも今のはなかなか面白かったよ。
「ダンはムダにカンがいいよねえ」
「あんたほどじゃねえ」
「失礼だな。あたしのはムダじゃない。ゆりかごから墓場まで鋭いカンを駆使して、世界の平和に貢献してるわ」
「ようヴィル。元気か?」
「元気だぬ!」
急に話変えんな。
あたしが空振ったみたいで気分が悪いだろ。
ま、いいや。
お昼食べてこ。
「デミアンが来てるんだ。あんたに用があるらしい。奢ってくれるぜ」
「デミアンって誰だっけ?」
「おいおい、美少女精霊使いに特有の記憶喪失か?」
「いや、聞いたことない名前なんだけど?」
ダンがウソだろ? みたいな顔するけどウソだ。
どこかで名前だけは聞いたことがある気がする。
確か上級冒険者の人だったな。
見たことくらいはあるのかもしれんけど、喋ったことはないはず。
「まあとにかく食堂行こうぜ」
「行くけどちょっと待って。アイテム換金してく。結構あるから重いんだ」
◇
食堂にデミアンなる冒険者はいた。
「えーと、ここへ来て新キャラ?」
「新キャラ扱い、悪くない」
「悪くないぬ!」
「マジで知らねえのかよ?」
いや、ダンはそう言うけど、未知との遭遇だって。
本当に見たことない人だ。
戦争間際になって唐突に新キャラを登場させるとか、あたしの自伝『精霊使いユーラシアのサーガ』の構成はおかしい気がする。
「こんなん一度でも会ってたら覚えてるって」
「こんなん扱い、悪くない」
「悪くないぬ!」
「ごめん、面白いけどちょっとヴィル黙っててくれる?」
「はいだぬ!」
「悪くないだろう。ヴィルはいい子だな」
「いい子ぬよ?」
「あれっ? ヴィルのことは知ってるんだ?」
「ヴィルを知らねえやつはギルドにいないと思うぜ」
「ヴィルは有名人。じゃなくて有名悪魔?」
結構ヴィルはギルドに遊びに来てるのかな?
あたしはまだ『アトラスの冒険者』になって三ヶ月くらいだ。
あたし自身がギルドに入り浸ってるわけでもなし、タイミングの問題とかで会ったことない人もいるとは思ってたけど、何なのこれ?
こんな特徴的な人を見たことなかったってのは衝撃的だよ。
いや、かなり高レベルの冒険者だってことはわかるけど。
「初めまして。美少女精霊使いユーラシアだよ」
「よろしく。天才冒険者のデミアンだ」
「互いにすげえ自己紹介だな。傑作だぜ」
解説のダン先生が笑いながらのたまう。
あんたはネタを拾えりゃいいんだろ。




