第467話:楽の仕方
武器防具屋ベルさんに聞いてみる
「ちなみに店頭に置いてある以外のパワーカードって売れることあるのかな?」
アルアさんとこの工房でコモンの素材のみで作ることのできるカードは、全てギルドの武器・防具屋で販売対象となっている。
実際に売っているカードでなくても取り寄せられるのだ。
「『ドラゴンキラー』は一枚売れましたよ」
「へー、『ドラゴンキラー』か。やるなあ」
『ドラゴンキラー』は【対竜】という攻撃属性と攻撃が遠隔化する特性のあるカードだ。
ふつーに考えれば目指せドラゴンのパワーカードだが?
「ひょっとして買ったのラルフ君?」
「御名答です」
「マジか。ちょっとまだドラゴンに挑むのは早いと思うけどな」
ラルフ君のパーティーは全員レベル五〇超えてる。
ドラゴン倒すのがムリとは思わんけど、かなり苦戦すると思うぞ?
全員のレベルがもう一〇くらい上がるのを待ってから、チャレンジするといいと思う。
「いや、ワイバーン対策だと言ってましたけどね」
「ワイバーンでも大したもんだよ。卵おいしいし」
「卵おいしいの、関係なくないですか?」
再びの笑い。
ヴィルの機嫌が良さそう。
よしよし、ぎゅっとしたろ。
「で、何のカードをお買い上げになりますか?」
「大量になるんだ。メモしてくれる?」
輸送隊一四人及びフェイさんの分だ。
サフランの分はピンクマンが何とかするだろ。
えーと『ナックル』三枚、『ニードル』三枚、『スラッシュ』三枚、『ライトスタッフ』三枚、『スナイプ』一二枚、『サイドワインダー』三枚、『シールド』五枚、『光の幕』二枚、『シンプルガード』五枚、『ハードボード』八枚、『武神の守護』一〇枚、『サイコシャッター』一二枚、 『ホワイトベーシック』三枚、『マジシャンシール』三枚。
「計七五枚ですか……足りない分は取り寄せになります。少々お時間いただくかもしれませんが」
大量にパワーカードを購入する理由については何も聞いてこない。
どう見てもうちのパーティーが必要とするカードじゃないしな。
ベルさんもギルドの正職員なので、戦争に関係のあることと察してくれているのだろう。
「今さっきアルアさんに確認とって来たんだ。助手二人が育ってるから大丈夫だってさ」
「ああ、そうでしたか。では明後日以降お渡しで」
「先に払っておくね。おいくら?」
「一一万四〇〇〇ゴールドになります」
足りたけどかなりサイフが寂しくなった。
預けてあるお金を下ろせばいいんだが、魔宝玉も欲しいし魔境行くかな?
後ろから声をかけられる。
「師匠」
「ああ、ラルフ君達か。どうしたの、顔が強張ってるよ。可愛い娘ちゃんに話しかけるからって、緊張しなくてもいいんだよ?」
笑い。
まあ開戦間際だし、緊張するのはわかるけど。
「ムオリス君は『フライ』、練習してる?」
「はい、バッチリです」
うんうん、よしよし。
食堂で内緒話モード発動。
「何かあった?」
「いえ、特別には。ただ自分らにはどうにも責任が重く……」
「『フライ』による監視にかかってると言われるとどうしても……」
「かかってないからリラックスしなよ」
「「「「え?」」」」
呆然とする四人。
ドーラ人皆の戦争だ。
誰かの責任が大きくなり過ぎるのはよろしくない。
ラルフ君パーティーの担当は、レイノス東の海岸地域の監視だが……。
「ラルフ君達の監視と攻撃だけで片付けば一番楽ではある。でも自分らばっかり働くのは損だわ。あたしが新聞記者に囲まれた時、ラルフ君らに任せてとんずらしたこと覚えてる? 他の人を働かせることも考えるといいよ」
「ぐ、具体的には?」
「レイノス東で戦えるのは、ラルフ君達の他にレイノス東門の警備兵、ラルフ君家の警備員、聖火教の聖騎士とハイプリースト、輸送隊を中心とするカラーズの面々だね」
全員頷く。
「ラルフ君パーティーの監視防衛線が破られました、さてどうする?」
「ええと……レイノス守備隊と当家の警備員へ連絡ですか?」
「そうそう。あとは三つの自由開拓民集落の人達へ避難指示とその引率、ギルドと聖火教礼拝堂とカラーズに連絡ね」
「なるほど……」
納得するラルフ君達。
「聖火教の聖騎士とハイプリーストはそれなりに強いけど、人数が少ないんだよね。もし攻め込まれた時はカラーズに逃げ込めって伝えてあるから、早期に連絡できるかは意外と大事だよ」
「ということは、自分らの役割としては連絡がかなり重要?」
「戦闘より連絡のがずっと重要だな。レベル的にラルフ君達はレイノス東で最強ではあるけど、戦える人は他にもいる。でも連絡係を担えるのは飛行魔法を使えるムオリス君しかいないんだ。と考えると、立ち回りもおのずと決まってくるでしょ?」
考えてるね?
「……むしろ引き気味に戦闘するといいくらいですか?」
「うん、いいねえ。これ見よがしに引けば、向こうさんも伏兵を疑って出足鈍くなるかもしれないよ? 逆に自分達だけで決着つけようとしてムリしちゃいけない。連絡係を務められなくなったらかなりヤバい」
「ははあ、では上陸を許したら……」
「上陸したところから足取りを追えるなら、こっちに都合のいい戦場だって設定できるでしょ? 地の利はこっちにあるんだぞ?」
「さすが師匠」
ハッハッハッ、もっと尊敬していいよ。
「カラーズの輸送隊はレベル三〇くらいまでにはしておくという話でしたが、現状は正しいでしょうか?」
「現状の確認も必要だねえ。輸送隊一四人とエルマその他でレベル三〇以上が一七、八人いるよ。聖火教徒が合流すればさらに強化されるから、向こうが落ちる心配はまずないと思って」
考えなさい。
頭を使うのはタダだから。
「……水際で叩くのが理想ではあるけれども、難しいと思われる時は内に引き込めばいい。地の利もあるし、敵の兵站も引き伸ばせる。カラーズや聖火教徒と挟み撃ちできる可能性も考えられる……」
「その通りだよ。大分ラルフ君も楽の仕方がわかってきたね」
「楽の仕方というと、どうも据わりの悪い心地がしますけれども」
「味方の力を信じて任せるんだよ」
「師匠……」
ちょっといい雰囲気っぽくなってきた。
「ってゆーと同じことでも据わりがいいでしょ?」
「師匠お!」
アハハ、まあまあ。
あたしだってエンタメが欲しいから。
内緒話モード解除。




