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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第464話:敬老精神に反する

 あたしは『スライムスキン』を放り出した。

 降参だ。


「ダメだ。あたしにはムリとわかった」


 理屈のわからんことをちまちまとやる作業は、どー考えてもあたしに向いてない。

 乙女の花咲く期間は短いのだ。

 『スライムスキン』折りなどに貴重な時間を費やしてはいけない。


「おや、早々と諦めたね?」

「うん、ユー姉には不可能な繊細な作業だと思う」

「アレクを連れてきたあたしの判断は正解だった。あたし偉い」


 苦笑する二人。

 何かマルーさんとアレクは性格似てる気がするな。

 マルーさんの説明をふんふんと聞いているアレク。

 あとでクララにも教えてやってよ。


「で、これにこれ塗って防腐加工するだろ……」

「……なるほど、表面を溶かして黒妖石にくっつけると」

「……魔力供給量に合わせて……」


 二人でどんどん話を進めている。

 もーあたしには完全にわからん。

 あ、黒妖石に『スライムスキン』の足くっつけてる。

 大地の魔力を吸う部分ってことだな?


「さあ、でき上がりだよ。どこに設置するんだい?」

「任せて。あたしが持ってくよ」

「おお、力持ちだね」


 パワー要員としか働けない自分がちょっと悲しい。

 南の敷地外へ。


「これを埋めればいいの? 当然ひらひらがくっついてるほうが下なんだよね?」

「そうだね。足が大きく広がるように」


 なるほど、じゃあ広く掘るべきなんだな?

 がーっと穴を大きく掘って黒妖石を半分くらい埋め、『スライムスキン』の足を広げて土を被せて戻す。

 こんなもんだろ。


「……こんなパワフルな穴掘りを見たのは初めてだよ」

「そお? うちは畑仕事もやるから、シャベルの結構いいやつがあるんだよね」

「シャベルの良し悪しは関係ないけれどもねい」


 何をため息吐いてるのだ。

 素直に感心しろ。


「これで畑側の黒妖石と『スライムスキン』と結べば完成だよ」

「おお、ばっちゃんありがとう! じゃ、早速……」

「ユー姉待った。今繋げると畑側の黒妖石から魔力が逆流するよ。吸い取り側の黒妖石に魔力が溜まってから連結しよう」

「おおう、なるほどの理屈だな」

「ボウズはよく理解してるじゃないか」

「アレク、あとでクララにも説明しといてくれる?」


 あ、海行ってた連中が帰ってきた。

 よーし、大漁のようだな。


「楽しかった?」

「楽しかったです!」

「楽しいぬ!」

「よーし、御飯にしよ!」


          ◇


「この調味料は何だい?」

「これは醤油だよ。黒の民が作ってるんだ」

「ただ塩辛いだけじゃなくて、旨みがあるねい」

「おいしいよね。いずれドーラ全土に広める予定だよ」

「魚フライは醤油でもおいしい」

「でしょ?」


 クララが魚フライを揚げてる間にあたしが野菜スープを作り、皆でそれを食している。

 塔の村は魚フライを塩コショウだけで食べているし、レイノスはまよねえずが主流だ。

 醤油はまよねえずよりもうんと保存が簡単だから、こういう食べ方も広まるといいな。


「魚フライ、とてもおいしいです!」


 ニルエが感激している。

 まだカトマスには魚がないからな。


「カトマスは魚の水揚げ場所からちょっと距離あるんだよね。でもその内魚も入るようになると思うよ」


 転移の技術が一般的になればいいんだが、事故も多くなりそうだしな。

 そもそも材料の黒妖石の数をたくさん確保できない。


「ヴィルちゃんは何も食べないんですか?」

「わっちはお腹一杯だぬ!」

「皆が満足してるといい感情をたくさん得られて、ヴィルも満腹なんだよ」

「可愛いですねえ」


 よしよし、ヴィルの頭を撫でてやる。


「このスープも随分と味が濃厚だね」

「これはコブタマンの骨でダシ取ってるんだ。時々スープを作ってストックしてあるの」

「ああ、『氷晶石』の冷蔵庫ってやつにかい?」

「うん。冷蔵庫の自動化の重要性は今は低いんだけど、将来どこかで食堂をオープンするなら考えないとな、っていう」

「手を広げ過ぎじゃないかい?」


 考えてるだけだよ。

 まだ広げてないってば。


「ばっちゃん、こういうものもあるんだけど」

「ほう、『精霊石』かい?」


 ぎゃー重い!

 一昨日ダンのデーモンクエストに同行した時に手に入れた、『精霊石』こと『ファントマイト』。

 周辺から魔力を集める特性があるというレア素材だ。


「『精霊石』があるなら、わざわざ地中から魔力を集めなくてもよかったじゃないか」

「やっぱ『精霊石』で集めた魔力も利用できるよね?」

「そりゃそうさ」

「うーん、『精霊石』が簡単に手に入るならばっちゃんの言う通りなんだけど」


 どうやら『精霊石』は地中だけじゃなくて空中の魔力も集められるようだ。

 ひっじょーに有用なのだが、メチャメチャレアみたいだしな。

 こいつは素材としてアルアさんとこの工房に持ってかなきゃいけないやつだし。


「地中の魔力集めに関しては黒妖石と『スライムスキン』で完全に互換が利くから、『精霊石』の出番はないさね」

「だよねえ」

「えっ、何これ重っ? 見かけよりずっと重っ!」

「腰いわせたるぞ、的な重さが凶悪だよねえ」


 アレクじゃちょっと揺らすのが精一杯だ。

 『精霊石』が重いってことは、あんまり知られてないみたい。 


「魔力を蓄える用途に用いる黒妖石は、純粋なものでなくてもいいんだ。例えば砂でも小石でも、粘土で固めて焼いて一塊にすれば使える。もちろん純粋なものに比べて容量は落ちるが」

「「へー」」


 ためになるなあ。

 小石でもいいから黒妖石は集めとくべきだな。

 アトム聞いてる?


「ごちそうさまでした」

「じゃあ帰るとするかねい」

「ばっちゃんありがとう。これ手間賃と材料費だよ。もらっといて」


 透輝珠を渡す。


「アンタには借りがあるからいいのに」

「ばっちゃんにタダ働きさせる気はないんだよ。あたしの敬老精神に反するから」

「アンタのやってることには、最初から敬老精神なんて微塵も感じられないんだよ!」

「エンタメが前面に出過ぎなのは置いといて」

「その辺が不敬なんだよ!」


 マルーさんのツッコミはなかなか心地よい。


「もらっといてよ。でないと今後何かあった時頼みづらいし」

「そうかい?」


 ニルエが珠を受け取るが、マルーさんがため息を吐く。


「しかし……」


 何か問題ある?


「魔宝玉は少々トラウマなんだがね」

「知らんがな」


 これは普及品だから、普通に売っておゼゼにできるってばよ。

 笑いの中で解散。

 またカトマスへは遊びに行くからね。

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