第463話:ハゲ爺によく似てる
フイィィーンシュパパパッ。
「お、昨日の可愛い娘ちゃんじゃないか。今日は連れが多いね」
「そーなんだよ、イケてるおっちゃん」
マルーさんを迎えにカトマスに飛んできた。
昨日もここにいたこのおっちゃん、どうやら転送先の番人みたいだな。
ビーコンのある場所は立ち止まってると危ないから、注意を促すためだろうか。
ギルドで言うとポロックさんの役割だ。
「ん? 変わったパーティーだな。亜人か?」
「うちの子達は精霊だよ。一人は悪魔」
「精霊に悪魔? あんた精霊使いユーラシアだったのか!」
「美少女精霊使いユーラシアだよ」
「ハハッ、こりゃすまないね。一本取られたよ」
あたしの名前もかなり知られてきたもんだ
もっと天下に鳴り響け。
マルーさん家へゴー。
「こんにちはー」
「待ってたよ」
「ユーラシアさん!」
「これお土産だよ」
冷凍コブタ肉をニルエに渡す。
お肉はどこへ持っていっても喜ばれるから、大変都合がよろしい。
タダで手に入るしな。
「まあ、ありがとうございます!」
「昨日の今日なのに、すっかりニルエは明るくなったねえ」
「アンタのおかげだよ」
「うん、ニコニコしてると可愛い。これは絶対の法則だよ」
ハハッ、マルーさんも機嫌がいいじゃないか。
「ヴィル、あのニルエが『いい子』だよ」
「わかったぬ!」
ヴィルがふよふよ飛んでニルエに近付く。
「こんにちはぬ!」
「あなたは?」
「悪魔のヴィルだぬ!」
ニルエに説明する。
「ヴィルは幸せの感情が好きな悪魔なんだよ。やっぱり『いい子』の固有能力持ちで、ニルエも同じだよって教えたら会いたいって」
「そうなの。よろしくね、ヴィルちゃん」
「よろしくお願いしますぬ!」
よしよし。
マルーさんが言う。
「あの悪魔は『アトラスの冒険者』のクエストで仲間にしたのかい?」
「うん。二ヶ月くらい前だったかな。可愛がってやったらうちの子になるって」
「へえ、おかしなことがあるんだねい」
本当にひょんなことだった。
今となって考えれば、ヴィルのクエストをあたしに振ってくれたのはありがたいことだったなあ。
「で、アンタん家行けばいいのかい?」
「お願いしまーす。ニルエも来る?」
「よろしいんですか?」
「もちろん」
マルーさんとフレンド登録し、転移の玉でホームへ。
◇
家で凄草の栽培について説明する。
「呆れたもんだね。アンタ、凄草を栽培してるのかい?」
「ここにいる精霊カカシのおかげなんだ」
「ユーちゃんが凄草を見つけ、魔力環境を整えてくれたからだぜ」
案山子が喋ったことにマルーさんとニルエが驚いている。
カカシはあたしがいれば、『精霊の友』じゃない人がいても割と喋るんだよな。
この辺、同じ精霊でも性格の差があって面白い。
「カカシは水分や栄養分だけじゃなくて、土の中の魔力も配分することができるんだ。それでステータスアップ薬草を栽培することができるの」
「寄り代タイプの精霊だったか」
頷くマルーさん。
「ステータスアップ薬草の生育は魔力環境が厳密なんだけど、特に凄草は魔力濃度が高いところじゃないと育たないんだって。今はここの黒妖石にあたし達が直接魔力を送り込んでるんだけど」
「なるほど、魔力の吸い出しと蓄積を自動化したいということだねい?」
「クエストの都合で家に戻ってこられないと、凄草枯れちゃうし」
マルーさんが考え込む。
「なら近場から取ったんじゃ、畑の魔力濃度が薄くなっちまうね。離れたところから魔力を吸って、この畑に送らないといけない」
「比較的魔力が豊富な南の空き地で吸って、『スライムスキン』張ってこっちの黒妖石と繋げばいいと考えてたんだ。ばっちゃんどう思う?」
「ほう、誰かに教えてもらったのかい?」
「いや、自分で考えたんだよ」
「地中から魔力を吸うのも『スライムスキン』を使うんだよ」
「そーなの?」
すごいな『スライムスキン』。
魔道具関係に応用が利くなら、いずれ今以上にメッチャ使われる素材になるんじゃないの?
価格が高騰するかもしれないな。
スライム牧場は将来有望と見た。
「折り畳み方に魔力の流れを一方通行にするコツがあるんだ」
「ちょっと待って! あたしの弟分連れてくる」
クララの『フライ』で灰の民の村へ、アレクを連れて即行で戻る。
「お待たせ!」
「……とんでもないスピードの飛行魔法だね」
飛行魔法はレベル依存だからね。
「この子はデス爺の孫のアレクだよ。賢いの」
「こんにちは」
「ハゲ爺の? ふん」
アレクをジロジロ見るマルーさん。
「ドーラに悪名高き『強欲魔女』のマルーさんと、その孫娘のニルエだよ」
「本人の前で『悪名高き』とか『強欲魔女』とかお言いでないよ!」
アレクが聞いてくる。
「あれ? ひょっとしてマルーさんって愉快な人?」
「かなり」
「あつかましいところはハゲ爺によく似てるよ!」
アレクはデス爺に似てるって言われたら喜ぶだけなのになあ。
あ、ヴィルはニルエに遊んでもらってるのか。
「ニルエ、退屈だったかな? 南へ行くと海があるんだよ。うちの子達と魚取ってきてくれる?」
「魚ですか?」
「カトマスにはまだ入ってないけど、レイノスと塔の村では魚フライが食のトレンドなんだ。おいしいよ」
「わかりました。行ってきます!」
精霊は喋んないけど、ヴィルがいるから平気だろ。
ニルエは精霊親和性が高いわけではなさそう。
でも当たりが柔らかいから、うちの子達も不快には感じないと思う。
「魚なんてどうやって取るんだい?」
「雷魔法を海に撃ち込むと、魚が感電して浮いてくるんだよ。それを『フライ』で回収するの。お昼は魚フライ食べよ?」
「ハハッ、楽しみだね」
さて、『スライムスキン』の畳み方を教わるぞ。
えいえいおー!
――――――――――三〇分後。
「む、難しいんだけど?」
「魔道の基礎理論が必要なんだ。アンタには難しいのかもしれんねえ」
あたしは決して不器用ではない。
が、理屈がサッパリなせいかコツがわからん。
マルーさんがニヤニヤしてやがる。
「こっちのボウズは筋がいいね」
「要するに魔力が波打つように流れてくるから、逆流しないように押し止めるイメージだよ」
「そうだねい」
何なん?
人間の身体の中で魔力は脈打つように流れるから、波打つって感じもわからなくはない。
でも魔力の流れを折り方一つで押し止めるってどーゆーこと?
とゆーかあたしは器用なんだってば。




