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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第46話:初心者の館

 ――――――――――一六日目。


「あー頭いてえ。ガンガンする」

「自業自得! 酒は飲んでも飲まれるな、復唱!」

「酒は飲んでも飲まれるな」

「よし、ギルド行くよー」


 今日は雨。

 アトムはまた二日酔いのようだが、この間よりはマシらしい。

 レベルが上がってるからかもしれませんとクララは言うが、そーゆーもんなの?

 レベル万能説が浮上。


 クララはケロッとしている。

 何でもお酒とゆーものに興味があり、一度飲んでみたかったらしい。

 変なところで勉強家だな。

 昨晩はすみませんでしたと恐縮してたが、たまにはいいんだよ、クララ。


 フイィィーンシュパパパッ。

 転送魔法陣からギルドに着いた。


「やあ、いらっしゃい、チャーミングなユーラシアさん」

「ポロックさん、これ作ったのでどーぞ。食べてよ」


 津波後の大量の魚で作った一夜干しを手渡す。


「すまないねえ。おとっつあんがこんな身体じゃなかったら……」

「もう、それは言わない約束でしょ」


 アハハと笑い合う。

 ポロックさんは真面目そうだけどノリがいいなあ。


「魚とは珍しいね。ユーラシアさんの家は海が近いのかい?」

「うん。ドーラ人は海が近くても魚を食べない人が多いけど、うちはどーゆーわけか昔から食べてて。一夜干しの作り方も知ってるの」

「そうだったのか。真面目な話、うちの娘が身体弱くてね。食が細いんだけど魚は好物なんだよ。でもなかなか手に入らないだろう?」

「何だ、いくつか持っていってよ」


 ゴソッと手渡す。


「こんなにいいのかい?」

「いいのいいの。今日は『初心者の館』訪ねてみようと思って、ポロックさんの助言に従って差し入れ持ってくるつもりではあったんだよ。でもペペさんから買った魔法を海に撃ち込んだら、予想外に魚たくさん獲れちゃって」

「ハハッ、おかしなことになってるね。ありがとう。『初心者の館』の面々も絶対喜ぶよ」

「だといいな。失礼しまーす」

「ああ、ごゆっくり」


 地下への階段を降りたところで、バッタリ女の子二人組に出会う。

 アーチャーのアンと魔法使いのセリカだ。

 会えたのはラッキーだけど……。


「あれ、こんなところで何してたの?」

「うむ、研究者の話も参考になるかと、拝聴しに来ていたんだ」

「我もです。知らないことは多いものです」

「あんた達くらい冒険者の知見あってもそうなんだ? あたしも真剣に聞かないとな。ところでこれあげる」

「あっ、魚の一夜干し? 珍しいものをありがとう」

「昨日たくさん魚獲れちゃってさ」

「ユーラシアさんのホームは海が近いんですね」

「早めに食べてね。あっ、そーだ。一昨日ソル君に会えたから、あんた達のこと話しといたよ」

「「えっ!」」


 テンション上がってるのか泡食ってるのかわからんな?


「ス、スキルハッカー様は何かおっしゃっておりましたか?」


 あたしはキメ顔を作って言い放つ。


「『お二人に会うこと、楽しみにしてます』って」

「「きゃーっ!」」


 おーおー、モテモテだぞソル君。

 ソル君とアンセリがパーティーを組めれば、双方にとって大きなメリットになるだろう。


「今、ソル君は三つ目のクエストに入ってる。だからそれをクリアすればギルドに来るよ。難しいクエストじゃないんだけど、アイテムの数を揃えなきゃいけないらしくて、ちょっと時間かかるかもって話だった」

「採取系のクエストなら手伝えるのに……」

「彼はあんた達に会うために、試練を乗り越えてくるのだ。信じて待て」

「「はい!」」


  アンセリの二人が足取りも軽やかに去ってゆく。

 やー、いいことしたな。

 前途は洋々だろう。


 さてと、ここが『初心者の館』か。

 ぐるっと見回すと、ホールを中心に部屋が一五ほど配置されている。

 空き部屋の札が掛かっているところもあるな。

 それ以外は研究者がいるということか。


「ここに入ってくのは、気後れするなあ。ほら、あたしはシャイだから」

「ユー様、シャイの意味を間違って覚えていませんか?」


 メッチャ失礼だな。

 あたしの偏見かもしれんけど、研究者って偏屈ってイメージがあるじゃん?

 アンセリをようやく追い返したのにまた来やがったか、なんて思われると、話を聞く以前の問題なんだが。


 いや、こっちには必殺一夜干しがある。

 ええい、ままよ!

 一番階段に近い部屋をノックする。


「こんにちはー。誰かいますかー?」

「お客さんかい? 入って」

「お邪魔しまーす」


 灰白色のトーガを着た、ヒゲのおっさんだ。

 うん、研究者っぽい。

 嫌がられてもいない。


「やあ、一日に二組も訪問客があるのは珍しい。しかも精霊連れとはこれはまた。お嬢さんは『アトラスの冒険者』なのかい?」

「うん。わけもわからず『地図の石板』を手に入れて、まあ面白そうなんで」

「ハハハ、最初は皆そんなもんだよな。境遇を楽しめるものほど長続きする。さ、立ち話もなんだ。椅子にかけてくれ給え」


 席を勧められ、ハーブティーを出してくれた。


「一昨日大量に魚が獲れちゃって、これ、作ってみたんだ。食べてくださいな」

「これは結構なものを。ところで大量にってのはどういうことだい?」


 そーゆーところに興味持つのが研究者っぽいな。

 大魔法を試し撃ちしてえらい目に遭ったことを簡単に話した。


「ああ、ペペちゃんの魔法か。あの子も当代一の魔道士だからね、ある意味」


 『ある意味』のイントネーションが若干不穏な感じがしたぞ?

 でもきっと気のせいだろう。

 あえてスルーする。


「もうその魔法を海に撃っちゃいけないよ」

「さすがに懲りちゃったよ」

「海には海のルールがあるからね。ナワバリを侵されたと感じる者がいるかもしれない」

「あ、海の王国との関係だったか」


 ドーラ近海を領域とする魚人の一族とは、海の扱いについてややこしい取り決めがあるって聞いたことがあるな。

 だからドーラはレイノス以外に港を作れないのだと。


「わかった、気をつけまーす」


 ヒゲおじさんは満足そうに笑みを浮かべる。


「おっちゃんは何を研究してるのかな?」

「私かい? 武器と属性の研究をしているよ。ああ、お嬢さんは精霊使いだったね。ということはパワーカードの使い手?」

「全員パワーカード使いだよ」

「では、私のこれから話すことは重要だと思うよ」


 ほう、役立つことかな?

 いきなり当たりを引いたっぽい。

 心して聞こうじゃないか。

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