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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第458話:問題は識字率

 ヘリオスさんも息子ジンのことはよく知っておきたいだろうからな。

 あたしの知ってる限り、塔の村のことは教えてあげよっと。


「だから塔の村は冒険者が増えてるの。冒険者同士の競争はあるかもしれないけど、ジンは塔の村の冒険者の中では古株になるんだ」

「ハハッ、駆け出し冒険者なのに古株ですか」


 そんなこと言ったらあたしも『アトラスの冒険者』になってまだ三ヶ月だな。

 世間的には駆け出しどころか見習いレベルだわ。

 なのに有名な美少女冒険者ユーラシアでございって顔してるわ。

 人生どう転がってくかわからんとゆーか、可愛いと人生うまい方向に導かれるもんだとゆーか。


「塔の村の状況が安定してるから、少々トラブル起きてもジンはどうってことないと思うよ」

「ふむ。安全に稼げる場所が増えれば、冒険者という職業も再評価されそうですが」

「うーん、塔のダンジョンみたいなの『永久鉱山』って言うんだけど、ドーラにはあそこにしかないんだよねえ」


 他の仕事をやってくれる冒険者がいなくなるのも困る。

 今だって冒険者が塔の村に集まり過ぎちゃうんじゃないかって、あたしは密かに心配しているのだ。


 でも従来の冒険者なんてものは仕事がなかなか入らなくって、盗賊予備軍みたいなものになりがち。

 やはり依頼やクエストを取りまとめて冒険者に振り分ける、ドリフターズギルドみたいな組織が各地にあることが望ましい。

 ただメンバーの庭に転送魔法陣を設置しまくる『アトラスの冒険者』だって、大概頭おかしいしな?

 独立後のドーラの課題だ。


「ヘリオスさんのことも教えてよ。紙と印刷物を専門としてるって話は聞いたんだけど」

「ハハハ、私のやってることなど大したことではないのです。ドーラ日報とレイノスタイムズ両新聞社に紙を卸していますな」

「ふーん。どこで生産してる紙なの?」

「西の自由開拓民集落ですよ」


 これ以上話す気はないようだ。

 どうやら企業秘密みたいだな。

 新聞用の紙は質は良くないけど、メッチャ安いはずだ。

 西域のどこで作ってるんだろ?

 輸送賃大してかかってないはずだから、カトマスに近いところか。


「本当は書物をもっと流通させたいのですよ」

「本を?」


 ハハッ、クララが嬉しそうな顔してら。

 いや、あたしだって本には興味あるんだぞ?

 えっ、ユー様書くことも読むこともないですよねって顔するな。

 知識を本という形に残しておくことや知識を伝達することが、あたしの理想とする世界を実現するために必要だと考えているんだよ。


「しかし書物には質の良い紙が必要ですし、上質の紙は実に高価だ。また本を著すだけの力量のある人も不足している」

「本って高いよねえ。カラーズ~レイノス間の交易が動き始めたんで、この前輸送隊の子に本買ってきてって頼んだけど。五〇〇〇ゴールド渡して買えたの六、七冊だったよ」


 ヘリオスさんが意外そうだ。


「ほう、精霊使い殿は読書家で?」

「いや、あたしは積ん読専門で枕にしか使ってないんだけど、うちのこの子クララがすごく本好きなんだ」

「なるほど」


 精霊も本を読むのかって顔だね?


「精霊に販路を広げる方向もありですかな?」


 予想外の感想だわ。

 商人だなあ。


「いやー、人とともに暮らす精霊しか読み書きできないから」

「となるとやはり問題は……」

「識字率だねえ」


 字を読めない人が本なんか買うわけない。

 ドーラの識字率は高くないはず。

 どのくらいなんだろ?


「レイノスは均すと比較的高いですね。中町の住人は皆読み書きできますから」

「新聞を購読する人も多いもんねえ」

「逆にレイノスでないと新聞は成り立たないと言えますな。西域は村長レベルじゃないと読み書きはムリじゃないでしょうか。カラーズはどうなんです?」

「灰の民は全員読み書きできるけど、他はどうだか?」


 黒の民は大丈夫そうだけど。


「ドーラ全体だと二、三割になりますか」


 二、三割か。

 そんなもんかもしれないな。

 しかもレイノスを除くとこの数字はガクンと下がるはず。


「……識字率上げよう」

「えっ? ど、どうやって」

「カラーズ灰の民の族長が学校やりたいって言ってたんだ。多分何か考え持ってると思う。あとは質が高くて安い紙を……」


 緑の民が紙作ってるって話だけど、質がわからんな?

 緑の民もいずれ交易に加わるだろうし、調べとかないと。

 学校をもし作れたとしても、働かずに学校来るなんてムリか。

 じゃあ働いてない子供から……いや雨の日ならば……。


「うーん、ちょっと考えがまとまらない」


 教育機関で読み書き教えるって考えが馴染まない気がする。

 灰の民の村みたいに、食に困らなくて勉強熱心な村ばかりじゃないしな。

 そもそも帝国との戦争があるから、あたしも当面関われない。


「……精霊使い殿は何故、本や識字率に熱心なのです?」

「そりゃあ『精霊使いユーラシアのサーガ』が出版された時、売れ行きがよくないと面白くないから」


 ヘリオスさんも秘書さんも笑い過ぎだろ。

 レイノス西門に無事到着。


「いやいや、ありがとうございました」

「こっちこそ色々話せて楽しかったよ」

「お礼に当店出版の本を進呈したいのですが」

「えっ、いいの?」


 クララの顔がパアっと明るくなる。


「当店までお越しいただけますかな?」

「お店はどの辺かな?」


 レイノスの地図を取り出す。

 セレシアさんの服屋の近くじゃないか。

 ここ西門からは遠い。


「おいおい、また騒ぎ起こすのはやめてくれよ」

「またってゆーな」


 警備兵さんに釘刺されてしまった。


「以前に何かあったのですかな?」

「精霊様騒動っていう……」

「あっ、あれはユーラシア殿でしたか」

「確信犯ですよ」

「確信犯ゆーな」


 警備兵さん達が笑う。

 内幕知ってる人がいるとやりにくいな。


「どっちにしても精霊連れじゃ入りにくいな」


 どーすべ?


「……イシュトバーンさんの家知ってるよね?」

「もちろん」

「ヴィル、イシュトバーンさんと連絡取ってくれる?」

「わかったぬ!」


 ヴィルが転移する。

 警備員さん達が興奮したように言う。


「あれが精霊使いの悪魔だったのか!」

「話には聞いていたが、あんなに小さい子だとは」

「ここに用がある時、あの子寄越すことがあるかも知れないからよろしくね」

「おお、楽しみだ」


 レイノス西門に用があるかはわからんけど。

 ヴィルから連絡が入る。

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