第457話:ヘリオスと黄金皇珠
フイィィーンシュパパパッ。
カトマスから帰宅後、ギルドにやって来た。
「やあユーラシアさん。今日もチャーミングだね」
「こんにちはー、ポロックさん」
いつものやり取りだ。
『チャーミング』はあたし専用の修飾語に認定してもいいんじゃないかな?
「午前中にカトマス行ってきたんだよ」
「カトマス? と言うとマルーさんの?」
「そうそう、ばっちゃん家。『魔女の館』って呼ばれてんの。メッチャウケる」
苦笑するポロックさん。
「昨日はユーラシアさんがマルーさんを上手にあしらったって、結構ギルドでは話題になってたんだよ」
「ええ? そんなんじゃないんだけどなー。話しやすいばっちゃんだとは思った」
「マルーさんが話しやすいかい?」
巷で言われているほど強欲な人には思えなかった。
鑑定で結構な料金を請求するのは本当だろうけど、自分の技術に自信を持ってて金額分の価値があると考えてるからじゃないかな?
逆に言えばマルーさんの技術はおゼゼで買えるのだ。
「じゃねー」
ギルド内部へ。
今日はヘリオスさんがあたしの納めた黄金皇珠を取りに来る日だ。
もう納品はすませているのであたしがいる必要はないんだが、人脈は大事にしておきたいからな。
うまいこと会えれば挨拶くらいしておきたい。
依頼受付所のおっぱいさんに呼ばれる。
「魔宝玉クエストの報酬として、一五〇〇万ゴールドをお預かりしておりますが、どういたしましょう?」
「あ、忘れてた」
受け取っても置いておくとこないな。
持て余してしまうわ。
どーすべ?
「このままギルドでお預かりしておきましょうか?」
「いいの? 預かり賃いる?」
「必要ありませんよ。お預かりしたお金は、貸しつけで運用させていただきます。僅かですが、利子代わりに特典もあります」
へー、預金のシステムがあるとは。
ありがたいなあ。
「ギルドって金融の商売もしてたんだねえ」
「ええ。上級冒険者の方は一般にたくさんお金をお持ちですので、そうした案内をさせていただいております」
あたしはおゼゼカツカツのこと多かったもんな。
お金を持ってる人は持ってる人で管理が面倒なものなんだなあ。
「じゃ、あたしも預かってもらいたいな」
「はい、では口座をお作りいたしますね。ギルドカードを御提出ください」
おおう、ここでもギルドカードか。
便利だなー。
「一つ注意点として、五〇万ゴールド以上を一度にお引き出しの場合、お金を用意させていただくのに一日かかりますので御留意ください」
「うん、わかった。じゃあ三〇万ゴールドだけ下ろして、残りは口座に預けていきまーす」
「はい、では三〇万ゴールドお渡しいたします。残りお預かり金額一四七〇万ゴールドになります」
「ありがとう!」
やー身軽になった気がする。
さて、あとは不用品を換金してくるかな。
「御主人!」
ヴィルが飛びついてくる。
どこにいたんだ?
おっぱいさんと話してる時、警戒して寄ってこなかったみたいだな。
今日のおっぱいさんは機嫌良かったから、全然大丈夫だったぞ?
よしよし、でもいい子。
「今日ね、ヴィルと同じ『いい子』の固有能力持った子に会ったよ」
「いい子だったかぬ?」
「とてもね。明日ヴィルにも会わせてあげようか?」
「楽しみだぬ!」
買い取り屋さんで換金していると、見覚えのある青髪の壮年男性がギルド内へ来る。
「ヘリオスさん、こんにちはー」
「やあ、精霊使い殿。三日ぶりですな」
快活に挨拶を返してくれるヘリオスさん。
代金と引き換えにおっぱいさんから黄金皇珠三個を受け取っている。
「ほほう、見事な黄金皇珠ですな」
「また必要なら依頼出してよ。いくらでも取ってくるから」
「ハハハ、いくらでもというのが恐ろしいですな」
ヴィルが寄っていくくらい和やかな雰囲気だ。
しかしうまいことヘリオスさんに会えたのはラッキーだ。
「今からレイノスへ帰るのかな?」
「ええ、そうです」
「あたしもレイノスまでお供させてよ」
「いや、精霊使い殿に護衛していただけるとは贅沢ですな。しかし何故です?」
「ヘリオスさんと話したいってこともあるんだけど、さっきカトマス行ったら、ほんの一時間くらいの間に三人もスリが出たんだよ。治安が悪くなってるのかなーと思って」
ま、治安のことは口実だけどな。
ヘリオスさんが首を捻る。
「……言われてみると、帝国から輸入物資が入らなくなって不満を口にする者もいますな」
この反応は素だ。
ヘリオスさんは上級市民相手にも商売してるのかな?
そして帝国との戦争が起きることはまだ知らないようだ。
「行こうか。サクラさんさよなら」
「バイバイぬ!」
ギルドを後にし、レイノスへ。
◇
「ジンも『アトラスの冒険者』のことはもちろん知ってたんだ。でもこっちは即戦力を求めてるようだ、ってことで塔の村を目指したって言ってたよ」
「ははあ、そういう経緯でしたか」
ヘリオスさんと秘書さんを、ヴィルを含めたうちの子達とレイノスまで送る。
まあクララの『フライ』なら数秒なんだけど、話したいこともあるから。
「街道の途中の自由開拓民集落でハオランっていう拳士の子と知り合って、塔の村まで行ったんだって」
「そのハオランというのは?」
「クリティカル頻発の固有能力持ちで、ジンとは同い年くらいかなあ? 出身はカラーズ黄の民で、親御さんとともに西域の自由開拓民になったみたい」
ハオランは多分アトムと同じ『獣性』の固有能力持ちだと思われる。
「で、塔の村で、既に冒険者として実績のあった火魔法使いのレイカのパーティーで活躍してるよ。レイカはあたしの友達でカラーズ赤の民出身、アルハーン平原掃討戦にはソロで参加してたくらい実力のある子なんだ」
「ははあ、よく理解できました」
ヘリオスさんが頷く。
「塔の村のダンジョンはちょっと変わってて、魔物倒したり素材採取しても復活するんだ。だからあそこの冒険者は素材や魔物肉を売ってお金を得ている」
「ある程度の強さがあれば、生計を立てやすいわけですな?」
「そゆこと。下層階の魔物は強くないから、ダンジョンの仕様さえ理解していれば初心者でも経験を積みやすいの」
聞きようによっては、塔のダンジョンの冒険者は恵まれた理想的環境にいるように思えるよなー。
実際には魔物の出る現場で働く歩合制鉱山労働者だけれども。




