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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第455話:捩じり上げる

 カトマスがやかましい村だとゆーことはわかった。

 でもさすがに住民の居住区は静かだな。

 お店も落ち着いている。


「砂糖が欲しいな。カトマスなら安く買えると聞いたんだけど?」

「この村以外の相場は知りませんが、砂糖なら私のいつも行くお店で売ってますよ」


 商人が仕入れるような大量販売の店に行ったってしょうがない。

 ニルエ行きつけの小売店にゴー。


「どらどら? ヤベーな。あたしの知ってる砂糖の半額以下だよ」

「そうなんですか?」

「あっ、粒コショウも安い!」

「コショウは南部で作っていると聞きますね。季節季節になると、いろんな野菜や果物も入荷するんですよ」

「カトマスはメッチャ暮らしやすいところだねえ」


 西域って本当にいろんなもの作ってるんだな。

 ……しかし様々な西域の産物が入るが、カトマス自体の特産品はない様子。

 物品を西へ東へと流してるだけか?

 商人の活躍する地だから、生産にまで期待するのはムリかもしれないな。

 流通に特化した村でいいのか。


「あれ? あんたニルエかい? 見違えたねえ」


 お店の主人に声をかけられる。

 うむ、見違えたってのはわかる。

 会ったばかりの時のニルエは、生気の感じられないガラス玉みたいな目をしてたもんな。


「こんにちは」

「今日はお友達と一緒なのかい? 珍しいねえ」

「そうそう、友達友達」

「えっ、友達?」


 ニルエは恥ずかしそうだ。

 何故に?

 あたしは恥ずかしい友達じゃないわ。


 お店の主人が声を潜めて話しかけてくる。


「……ここだけの話だが、ニルエはあの金の亡者の孫だろ? カトマスじゃ昔から孤立しててねえ」

「おおう、マルーのばっちゃんの孫ってだけで人生ハードモードなのか」

「うちは贔屓にしてもらってるから、ニルエが悪い娘じゃないって知ってるけど、村じゃ色眼鏡で見られることも多いんだ」

「マジかよ。でもこれからは大丈夫だと思うよ。ニルエ随分変わったでしょ?」

「ああ、こんなに生き生きとしたこの子は初めてだ。あんた、これからも仲良くしてやっておくれよ」

「もちろん。あ、砂糖大袋でちょうだい。あと粒コショウも一ビン」

「あいよ、毎度あり!」


 買い物を終えて帰路へ。


「やーいい買い物した。カトマスいいところだ!」

「あの、ユーラシアさん。ありがとうございました」

「何なの? こっちこそ案内してもらってありがたいよ。またよろしくね」


 俯くニルエ。

 上ずったような声で話しだす。


「私、昨日まで本当に人生に希望が持てなくて……」

「でもニルエは優しい子だよ。マルーさんのケープと編み帽子、あれ、あんたが作ったんでしょ?」


 マルーさん家にあった道具と材料で気付いた。

 寒くなるこの時期、マルーさんの身体を気遣って編み上げたに違いない。

 ニルエは優しい。


「今のお店の主人も言ってたでしょ? ニルエの良さをわかってる人もいるんだよ」

「そうでしょうか?」

「間違いないね」


 まだ自信が持てないのかな?

 まー仕方ないか。

 昨日と比べて固有能力を一つ得たってだけの違いでしかないもんな。


「マルーさんはドーラ一の鑑定士だから、固有能力目線になるんだろうな。ただ世の中能力持ちのが少ないんだぞ?」

「でも、もし結婚して子供を産んだ時、その子の可能性を摘んでしまうと考えると……」


 固有能力の素因を持たないことが子供にも受け継がれるとなると、深刻に考える者もいるだろう。

 でも呪いと捉えるほど悲観的なもんじゃないんだが。


 固有能力の素因にもカラクリがあるんじゃないかって気はしてる。

 何故なら素因すら持たないニルエにいきなり『いい子』が発現したというのは、どー考えても理屈に反するから。

 素因に満たない固有能力の種みたいなものがあって、マルーさんにすら感知することができないと考えるとどうだろうか?

 ふつーなら固有能力の種は到底発現にまで至らないけど、たまたま超絶美少女のパワーに触れて表面に現れたと。


「もういいじゃん。昔のことは忘れれば。今ニルエは立派な固有能力持ちだし。それより元気が大事だよ?」

「はい!」


 うーん守ってあげたいタイプ。

 とにかく笑いなよ。

 とっても魅力的だからね。


「……ん」


 またか。

 荷物抱えてるんだからいい加減にしろよ。

 ふっと伸ばしてきた手を捩じり上げる。


「あ痛てててて!」

「さっきから何なんだよもー、スリ三人目だぞ!」

「か、勘弁してくれ! 痛い痛い!」

「あたしに指図すんな! 勘弁するかどうかはあたしが決める!」

「な、何すりゃいいんだ!」

「面白い話して?」

「え?」

「逃げようたってムダだぞ?」

「ひ……」


 くすんだ赤毛のソバカス男にキメ顔を見せておく。

 何故か誰もが怖いと言う、ただの美少女の笑顔だ。

 個人的には全く納得いってないんだが、物事有効に使えるものは利用しなきゃいかんから。


「どーしてあたしを狙ったの?」


 いかに治安の悪い村だとはいえ、ちょっと歩いてるだけで次から次へとひったくろうとするやつが現れるっておっかしいだろ。

 しかもあたしを狙うって不自然だろ!


「そ、そりゃあ娘二人で歩いてる。キョロキョロしていかにもお上りさん。隙だらけならターゲットになって当然だぜ」

「前二つは合ってるかもしれないけど、あたしが隙だらけってどんな節穴だ!」


 あたしに隙なんかないわ!

 役に立たない目はくり抜いてしまえ!


「のんびり大股で歩いてたじゃねえか」

「単なるあたしのクセで隙じゃねーよ!」


 ダメだこいつ。

 ってゆーか今まであたしをターゲットにしたやつら、全員同じ判断なのか?

 カトマスはスリの技量が低いと思わざるを得ない。

 いや、高くても困るけれども。


「大体あたしよりこっちの子のほうが、どう見たって隙大きいでしょ!」


 ニルエを指差す。

 あたしばっかり狙われるってどーゆーことだ?

 魅力的だからか?


「そっちの子はどう見たっていい子だからな。気が引けるというか……」

「おおう」


 なるほど大いに納得。

 あれ、ひょっとして『いい子』の固有能力って汎用性高い?

 そーいやヴィルが虐められることって、ほぼないな?


「行っていいよ」

「え?」


 信じられないようなものを見る目だ。


「あたしの気付かない視点だったよ。ありがとう」

「一体何なんだ? 礼を言われるようなことじゃねえが……まあ、見逃してもらったし、これやるよ」

「何これ?」


 筒状の入れ物だ。

 中身は縮れた葉っぱ?

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