第454話:元気美少女の勝利!
ふんふーん、マルーさんの孫娘ニルエとカトマス巡りだ。
同じ賑わってるんでもレイノスは取り澄ました感じがするし、カラーズ緩衝地帯はまだぎこちない。
カトマスは人間臭いのが好きだなー。
「ニルエは年齢いくつなの?」
「一七です」
「じゃああたしの二つ上だね」
お姉さんだった。
あたしとおっぱいがいい勝負だから、同い年くらいだと思ってた。
「カトマスはすごく大きい村なんだねえ」
カラーズ全部ひっくるめたのと同じくらいの人口があるんじゃないだろうか?
アンセリは村って言ってたけど、あたしの感覚だとこれは町だな。
すごく活気があるし。
「いえ、カトマスの人口なんて、レイノスの五分の一もないと思いますよ。レイノスや西域からの旅人や行商人が多いんです。ほら、宿屋がたくさんあるでしょう?」
「あ、本当だ」
門の近くだからかな?
携帯食や薬などの消耗品、靴やカバンなどの店、お土産物屋が軒を連ねている。
食堂や茶屋も多いな。
こんなに人の出入りの多い村も、ドーラではここだけだろうな。
さすがレイノスと西域の結節点だけのことはある。
ものが集まるってのが素晴らしい。
「ん……」
「ユーラシアさん、どうされました?」
「いや、何でもない」
またスリか。
油断のならない村だってのは本当だな。
伸ばしてきた手をぺしっと払う。
悔しそうな顔したってダメだぞ。
あたしを狙おうとする時点で、まるでなっちゃいないんだから。
「あれは大道芸かな?」
「ここはちょっとした広場になっていて、時々催し物が行われるんですよ。今日は……『チャレンジ腕相撲』と書いてありますねえ」
「腕相撲のイベントか。地味じゃない?」
でも結構大勢人が集まっているな。
えーと何々?
参加費二〇ゴールド、二〇人勝ち抜きで杳珠をもらえる?
「あっ、やるやる! あたしもやる!」
「えっ? ユーラシアさんお強いと思いますけど、疲れちゃいますよ?」
「そーかなー? 何だかイケそーな気がする」
地味なイベントだと思ったが、自分が参加できるとなれば話は別だ。
思いっきり盛り上げてくれる。
ついでに小遣い稼いで帰ろ。
赤と緑の派手な服を着た、調子のいい興行主が声をかけてくる。
「おっ、お嬢ちゃん参加するかい?」
「うん、やってみる!」
「新たなチャレンジャー、元気少女の登場だ!」
「えー元気美少女にして?」
こらオーディエンスよ。
笑うところじゃない。
納得するところだ。
「おっとこれは失敬、元気美少女が現在四人勝ち抜きのウシ男トムに挑むぞ!」
「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」
おおう、思ったより注目されて面白い。
あたしが可愛いからだな?
ニルエがハラハラした目で見てるけど、あたしのステータス値からすると全然問題ないぞ?
レッツファイッ!
バターン!
「お見事! 元気美少女の勝利! さあどうだ、チャレンジャーはいないか?」
「「「「おう!」」」」
おーおー、たかが美少女と侮ってくれるじゃないか。
されど美少女なんだぞ?
バターン! バターン! バターン! バターン! バターン! バターン! バターン! バターン! バターン!
ハハッ、楽勝だ!
盛り上がる盛り上がる。
実に気分がいいなあ。
「何とこれは驚いた! 元気美少女破竹の一〇連勝だ! しかし疲れたか? 手首を振っているぞ。さあ次のチャレンジャーはいないか?」
手首振ってるのはポーズだけどね?
レッツファイッ! バターン! バターン! ググッバターン! ググッバターン! グググッバターン!
「元気美少女驚異の一五連勝! だが明らかに決着をつけるのに時間がかかっているぞ! 次なるチャレンジャーはいないか?」
あたしだって盛り上げ方くらいわかっているのだ。
首と腕を回す。
レッツファイッ! グググッバターン! ググググッバターン! グググググッバターン! ググググググッバターン!
「元気美少女、前人未到の一九連勝だ! しかし限界か? 限界なのか? 最後のチャレンジャーは謎のマスクマン!」
「頑張れ元気美少女!」
「ありがとー!」
今までの挑戦者とはレベルが違う。
ははーん、賞品取られないようにするための仕込みだな?
でも首振ってら。
あたしのレベルがわかる人なんだろ。
屈伸して身体を大きく回し、ぐいっと捻る。
レッツファイッ! ググググググッ!
「おおっと互角! 名勝負になった!」
「嬢ちゃん頑張れ!」
「元気美少女、オレがついてるぜ!」
「負けんな娘っ子!」
皆あたしの応援だよ。
ノリがいいなあ。
じゃあそろそろ……。
バターン。
「何ということだ! 元気美少女の勝利! 二〇連勝で杳珠を獲得! おめでとう!」
「皆さん、応援ありがとう!」
「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」
「「「「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」」」」
いいシーンになってあたしは満足だ。
ニルエは驚いたか感動したか声も出ないぞ。
興行主から杳珠を受け取る。
「まいったぜ。だがおめでとう!」
「ありがとう。ものは相談だけど、この杳珠一〇〇〇ゴールドで買わない?」
「え、いいのかい?」
杳珠の売値はそんなもん。
ただし小売りで買うともっとずっと高いらしい。
一〇〇〇ゴールドで売れるならあたしは損しないし、興行主も嬉しいだろ。
「しかし驚いたぜ。あんた何者だい?」
「あたしは精霊使いユーラシアだよ」
「え? あのドラゴンスレイヤーの?」
「そうそう」
興行主が声を張り上げる。
「何と元気美少女の正体は、彗星のごとく現れたスーパー冒険者、精霊使いユーラシアだったぁ! 拍手!」
「「「「「「「「おーパチパチパチパチ!」」」」」」」」
「『チャレンジ腕相撲』はまだまだ続くぜ! さあチャレンジはリセット、最初のチャレンジャー二人は参加費無料だよ!」
「えっ? じゃあもう一回チャレンジしていい?」
「丁重にお断りするぜ!」
観客大笑い。
アハハ、残念。
「あー楽しかった」
「ユーラシアさん、すごいですねえ! こんなにコーフンしたの初めてですよ!」
「楽しんでもらえて嬉しいよ。エンターテイナー冥利に尽きるね」
笑いながら村の奥へ。
人通りが少なくなってくる。
「ここいらは普通の家が多いんだね」
「カトマス人の居住区です。食料とか衣服とかの生活必需品や日用品のお店はこの辺りですよ」
他所から来た人は、奥までは用がないということみたいだな。
小さな小売店が多い。




