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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第451話:明日はカトマス

「今日こいつ、ギルドに怒鳴り込んできた強欲ババアをからかって追い返したんだぜ?」

「そんなんじゃないってば」


 ダンが面白そうにダンパパに話してるけど。

 あたしの武勇伝みたいに言われるのはちょっと違う気がする。

 何よりマルーさんは役に立つ技術を持ってる人だ。

 大事にしなくちゃいけないとあたしのカンが告げている。


「マルーさんって、実際会ってみて愉快なばっちゃんだなーとは思ったんだけど、聞く人聞く人皆悪口ばっかりなんだ。あんまり参考にならないんだよね。マルーさんの性格なりエピソードなりで知ってることがあれば、教えてもらえると嬉しいんだ」

「さ、それは……」


 善人ダンパパが汗拭いてますね。

 もうすぐ冬ですよ?

 ダンはダンでニヤニヤしてるし。


「金銭に関してうるさく、締まり屋というのは本当です」

「大して贅沢してるわけじゃねえんだ。貯め込んでるんだろうな。ああ、あんたが全部巻き上げたんだったか。これも過去のことだな」

「手前ごときでは相手にならぬ、恐ろしい方ですが……」


 ん、何かあるのか?


「少し酔っておられた際ですが、『人は不平等だ』と仰っていたことがあります。言いようが諦観というか静かな怒りというか、一番印象に残っているあの方の言葉です。ええ、もうどれだけ値切られた時よりもその時の迫力が……」

「『人は不平等だ』……」


 引っかかる言葉だな。

 鑑定士という職業柄、固有能力を持つ者持たざる者という観点で人を見がちということはあるのかもしれない。

 持たない不平等があるから、隙間をおゼゼで埋めようとする?

 でもべつにマルーさんは持たざる者じゃないし、そもそも固有能力なんかおまけみたいなもんだしな?

 あたしとは全然考えてる方向性が違うのかもしれない。 


「ありがとう。マルーさんを理解する上で、とても重要なことのような気がするよ」

「ユーラシアが言うなら当たってるのかもしれねえが」


 ダンがしかめっ面だ。


「ただの強欲ババアだぞ?」

「強欲は強欲なんだろうけど、『ただの』じゃないよ?」

「鑑定能力については優れてるんだろうがよ……」

「能力ばかりじゃなくって、人間が浅くない気がするの」


 疑わしげだね?

 ドーラ一の鑑定士で地中から魔力を吸い出す技術を持っててお金にがめつくて皆に嫌われてるって、どんだけ属性重ねるんだよって言いたい。

 人間が浅いわけない。 


「明日、カトマス行くんだ。アンセリの故郷がどんなところか楽しみ」

「勢いのある村です。最もドーラらしい地と言えます」

「俺もカトマスは好きな場所なんだ。まあでもこすっからいぜ? 油断してるとロクな目に遭わねえ。あんたに言うべきこっちゃないがな」

「うん、期待値が高まるね!」


 あんまりワクワクしてると、眠れなくて睡眠時間が減っちゃうからな。

 五分くらい。


「ごちそうさまっ! 今日はありがとう。とってもおいしかったでーす!」

「いえいえ、また来てください」

「カトマスでの話、あとで聞かせろよ」

「うん、じゃあさようなら」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


「サイナスさん、こんばんはー」


 毎夜の楽しみ、寝る前恒例のヴィル通信だ。

 今日忙しかったけど、後半の出来事はあんまりサイナスさんに関係がないな。


『こんばんは。今日黄の民の小屋造りだったか?』

「予定通りだね。クララに木材とか運んでもらった」

『族長代理は現地にいるのか?』

「三日は向こうで基地作りだって」

『三日だな?』

「フェイさんはそう言ってたよ」


 サイナスさんも、戦争があるから長居はできないと思っているのだろう。

 フェイさんは戦時にカラーズ防衛の指揮を執ることになってるから。


「でも小屋はすぐにでも建ちそうだったよ。形になってくスピードが速いの。米作用地もある程度進めてくるんだろうと思う」

『そうか』


 あっちは問題ないだろ。

 フェイさんの直接指揮だし。


「今日マルーさんに会ったよ」

『え?』

「例の魔宝玉クエスト、マルーさんが依頼主だったんだ」

『『強欲魔女』が? いや、金を持ってる人という考えからすると、意外でもないか』


 何か考えているようだ。


「アタシが昨日から待ってるのに来ないとはどういう了見だって言うから、ピクニック行ったり秘密基地の建設手伝ったり忙しかったって答えたら、何か怒ってたよ」

『ユーラシアの煽りは天然だよな』


 煽りじゃないのになー。

 煽る時は計算で煽るし。


「でも御飯食べてる内に機嫌良くなった。ヴィルが大人しく頭撫でられたもん」

『その理屈がよくわからないんだが』

「ヴィルは好感情のあるところが好きなの。悪感情に晒されると調子悪くなるから逃げようとする」

『ほう?』

「面白いことに、お酒飲んだ時の酩酊状態とか人間の恋愛感情に当てられると、ヴィルも酔っぱらっちゃう」

『ハハハ、おかしいな』


 うんうん、ヴィルはいい子。


「で、明日カトマス行ってくるね」

『魔女の家へ、ということか?』

「さようでござる。あたしカトマス初めてだから楽しみなんだ」

『精霊達も連れていくのか?』

「人多いところみたいだから留守番だね」

『それがいいだろうな』


 カトマスは亜人がいても平気な村のようだから、精霊連れでもどうってことはないと思う。

 でもうちの子達の負担が大きいだろうからな。

 連れてくのはあたしが偵察してからにする。


 サイナスさんが急に思いついたように言う。


『ところで魔女は魔宝玉の代金払えるのか?』

「払えるわけないじゃん。ドーラにあるおゼゼ全部かき集めても足んないぞ?」

『いいのか?』

「あるだけもらうからいいよ。ドーラ屈指の実力者に貸しを作るのは気分がいいねえ」

『君は金そのものより、関係を重視するよな』

「まあね。おゼゼに換算するのが難しいことなんて、たくさんあるよ?」


 いよいよできることが増えていくなあ。


「カラーズは明日、輸送隊が出る日だよね?」

『ああ、今回アレクは休みだが』

「ラッキー! 近い内にその優れた頭脳を借りに行くって言っといて。賃貸料はいくらだって聞いてきたら出世払いって」

『君どれだけ出世する気なんだ』


 これでよし、と。


『明日はよくよく気をつけろよ』

「ありがとう、サイナスさん。おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日はカトマスかー。

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