第45話:戦術方針を考える
アルアさんのパワーカード工房へ行く。
素材を換金し、得たポイントで『サイドワインダー』のカードをもらった。
装備していると攻撃力が上がるだけでなく、全体攻撃バトルスキル『薙ぎ払い』を使える逸品だ。
残りの交換ポイントは一四九か。
もう一枚は交換が可能だか?
ダンテからもらった中に今までない素材があったので、新たなパワーカードが引き換え対象になったかも。
しかし今日はこれ以上の交換はしない。
ギルドでの情報や何らかの所見を得たあとにしよう。
かなりの収入になったので、チュートリアルルームでスキルを買う手もあるなあ。
一旦ホームに戻ってから苔洞窟に飛ぶ。
『薙ぎ払い』でどれくらいのダメージを取れるかのテストだ。
通常攻撃の四分の三くらいのダメージが全体に入る感じだな。
「『薙ぎ払い』は使えるねえ」
「バッチリでやすね」
「『サイドワインダー』自体に攻撃力増強効果があるしな。もう一枚攻撃力アップのカードを交換して装備してさ。『薙ぎ払い』撃ったらもっとダメージが入るよね」
「おお、いいでやすね」
まだ交換対象ではないが、攻撃力が上がるのに加えて射程の伸びるカードがあったはずだ。
あれを手に入れると肉狩りが捗りそうだな。
うん、『薙ぎ払い』の確認できたし、ある程度戦術の見通しも立ったからいいだろう。
周辺の素材とアイテムを回収して家に戻った。
◇
「おにくおにくおにく~おにく~を~たべ~ると~、おなかおなかおなか~おなか~が~ふく~れる~う」
チュートリアルルームに御飯を食べにやって来た。
今日もバエちゃん絶好調だな。
新しい仲間ダンテがイケメンとわかった瞬間からテンション高かったけど。
「バエちゃん、アトムに酒飲ませないでね」
「えっ? どうして?」
「ベロベロになるから」
「姐御、それは殺生でやすぜ!」
「あんた、この前の醜態忘れたの?」
「いやいや、忘れてやしやせん。反省を込めて、どうか一つ」
「……二杯までよ?」
「恩に着やす!」
オレンジのイケメンはデリシャスを連呼してる。
そんなに鍋が気に入ったか。
でも案外小食だな?
「ソル君どうなってるかわかる?」
「三つ目のクエストが、何かの素材を三〇個持ってこいというものよ。レアなのじゃないから、時間はかかりそうだけど問題なく片付くと思う」
「三つ目が終わるとギルドに行けるようになるんだっけ?」
「多分ね」
「よしよし順調だな」
「ユーちゃんこそどうなのよ?」
こっちに水を向けてくる。
「やんなきゃいけないことが山積みでさ。新しいクエストもあるんだけど小休止してる」
「次はどんなクエストなの?」
「『ほこら守りの村の怪』、って転送魔法陣が言ってた」
「怪? ホラー?」
「いや、わかんない。行き先を確認しただけだから」
内容がわかれば対策できるのだが、名前がいかにも不穏だ。
転移した途端、否応なくイベントに巻き込まれる展開だってあり得る。
準備は万端にしてから行きたい。
「怪かあ。アンデッドやゴーストだと火に弱いのよ」
じゃあ『ファイアーボール』をクララに覚えさせるってのもありだな。
「バエちゃん、スキルの価格表見せてくれる?」
「ええ、いいわよ」
『ファイアーボール』は一〇〇〇ゴールド、一番安い魔法の一つだ。
あれ、『ヒール』は五〇〇〇ゴールドか。
割と高い気がする。
「『ヒール』って高いんだ?」
「うん、回復魔法はどのパーティーでも必須だからよく売れるの」
ぼってるのかよ。
需要のあるものが高いのは当然かもしれないが。
「お主も悪よのお」
「代官様のお仕込みで」
「「あははははっ!」」
価格表を見ていると、『薙ぎ払い』が三〇〇〇ゴールドとある。
『薙ぎ払い』って買えるんだ?
この前一〇〇〇ゴールドの魔法に気が行っちゃってたから、他のあまり見てなかったよ。
まあパワーカード『サイドワインダー』は攻撃力上昇効果もあるから、交換しなきゃよかったとは思わんけど。
次の『五月雨連撃』も同じく三〇〇〇ゴールドか。
全体攻撃バトルスキルとあるが、『薙ぎ払い』と何が違うんだろ?
「『五月雨連撃』は『薙ぎ払い』より与えるダメージは大きいけど、使用するのにマジックポイントを必要とするのよ」
ふーん、細かい違いがあるんだな。
「買えそーなのは火・氷・雷・風・土の基本攻撃魔法と『薙ぎ払い』、『五月雨連撃』、『MPパンプアップ』、『セルフプロデュース』、『経穴砕き』か……」
『MPパンプアップ』はマジックポイント回復のバトルスキル。
『セルフプロデュース』は使用者の攻撃力と魔法力を一時的に高める魔法。
『経穴砕き』は敵単体に一ダメージを与え、魔法防御をかなり下げるバトルスキル。
どれも使えそうだとは思うけど、長期戦で補助的な魔法が必要なほどの魔物に遭わないからな。
『薙ぎ払い』と『五月雨連撃』以外はピンとこない。
「スキルコレクターみたいな人もいるけどあんまり。やっぱり戦闘に長けているのは自分の強みを知ってる人よね。ユーちゃん達はパーティーバランスがすごくいいし、そもそも装備するパワーカードで全然戦い方変わっちゃうんだから、急いでスキルを買わなくていいと思うの」
「そーだね。今は買うの保留にしとく」
不意にダンテが声をかけてくる。
「ボス、レディー、アトムがボトル抱えてるけど……」
「あっ、こらアトム!」
「あ~姐御ぉ、大丈夫ですぜぇ、まだ二本目……」
「二本じゃなくて二杯までっ! あーもー」
ダンテが指差す。
「ボス、クララもバタンキューね」
「えっ!」
クララまでひっくり返っている。
どーしてこうなった?
「あっ、酒臭い。誰がクララに飲ませたの?」
「ソリー、興味シンシンだったので、ミーが勧めたね。バット、ワンカップだけね」
しょーがないなー。
まあクララも飲みたい時くらいあるだろ。
ただしアトム、てめーはダメだ。
「バエちゃん、ありがと。帰るわ。一夜干しは早めに食べてね」
「うん、ありがとう。また来てね」
「魚を獲れるようになったからね、魚で何かしたいな」
「魚? またドッカーンして獲るの?」
極大魔法はヤバいわ。
シャレでもドカンとか言えんわ。
魚を獲るなら、大人しくダンテの雷魔法だわ。
「じゃねー、またね」
「またね、待ってるね」
アトムをダンテに背負わせ、あたしはクララを抱えて転移の玉を起動した。




