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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第440話:空飛ぶ大型軍艦完成

「サイナスさん、こんばんはー」


 マジですっかり恒例となった、寝る前のヴィル通信だ。

 もうこれがないと眠れる気がしない、なんてことはないけど。

 あたしは健康優良美少女だから。


『ああ、こんばんは』

「今日はカラーズや戦争に関係すること何もなかったなー」

『のんびりする日もいいんじゃないか? ユーラシアは働き過ぎだろ』

「そーかも」


 戦争という嵐の前の静けさ的なところがある。

 でも動いてないとつまらんしな。


「新しいレイノスの商人さんと知り合いになったんだよ」

『何だ、また誑し込んだのか?』

「もーいくらあたしが魅力的だからって」


 アハハと笑い合う。


「サイナスさんは知ってたっけ? 塔の村の初期からデス爺に連れられて冒険者やってる赤の民の女の子がいてさ。掃討戦にも参加してたんだけど」

『ほう? 覚えがないな』

「あっ、族長カグツチさんの娘だわ」


 最初からそう言えばよかったわ。

 無意識にエンタメを求めて遠回りしてしまった。


『で、カグツチ族長の娘さんがどうした?』

「レイカって名前ね。そのレイカとパーティー組んでる子のお父さんが、今日知り合った商人なんだ」

『ああ、そういう繋がりか。何を扱ってる商人なんだ?』

「聞かなかったな。でも良さそうな感じの人だったから、またいつか会っておこうと思ってる」

『ふうん。ユーラシアにとっては何ができるかよりも、どういう人かが重要なんだな?』

「意識してはいなかったけど」


 何ができるかももちろん重要だよ。

 でも信用できるかのほうが大事なのだ。


「『アトラスの冒険者』関係で、エルと同じ世界の人がいるんだ。今日その人と夕御飯一緒に食べてた」

『ほう?』

「かれえっていう、結構衝撃的な食べ物。スパイシーなシチューでメッチャおいしいの」

『かれえか。どこかで聞いたことがあるが、どこだったか……』


 サイナスさんがかれえを聞いたことあるって言ってるのも、結構衝撃的なんだが。

 いったいどこで?

 考えられるとすると、あたしみたいにチュートリアルルームの職員と仲良くなった『アトラスの冒険者』か。

 あるいは向こうの世界の人で、こっちの世界と積極的な交流を持とうとした人がいたのかもしれないな。


「ドーラで米を一般的な食べ物にする時の切り札にしようかと思ってるんだ」

『え? また何か仕掛けるつもりなのか?』

「必要とあれば。せっかく黄の民が米を作ってくれるのに、売れなかったら気分悪いもん」

『米か。今日フェイ族長代理が来て、明日クー川近くの下見に行くから付き合ってくれと言ってきたな』

「あれ、フェイさんは随分と行動が早いな」


 米の栽培には水を張った特殊な畑が必要なのだ。

 冬の内に目星をつけとかないと、来年の試験栽培に間に合わないってことか。


「試験栽培の規模も大きくするのかな?」

『うむ、自由開拓民集落で種籾も購入してきたと言っていたぞ』

「フェイさんが輸送隊について来たのは、種籾を手に入れるっていう目論見もあったんだな」


 以前ヨハンさんが、レイノス東の自由開拓民集落で米を生産していると言っていたのを覚えていたんだろう。

 できる男だね、まったく。


『米だけじゃなくて、塩の生産にも目鼻をつけたいのかもしれない』

「そーだね」


 ん? クララ何?


「クララがさ、村の図書室に米や塩の生産についての本があるはずだって」

『塩についての本は知ってるが、米の本もあったのか』

「アレクなら知ってるだろうから、連れていくといいよ」

『ああ、わかった』


 ……何か楽しそうだな?


「やっぱりあたしも行く。面白そうだから」

『ハハハ、待ってるよ』

「当然午前中からだよね?」

『朝八時に灰の民の村に集合だ』


 思ったより早いな。

 といっても灰の民の村からクー川まで、早足でも三時間以上かかるからそんなもんか。


「黄の民は何人くらいで来るのかな?」

『三人と言っていた』

「昼御飯用にお肉狩って持ってくよ。灰の村から真東に行く感じ?」

『ああ』

「クララの『フライ』で追いかけるから先に行ってて。焼く時用の金属のクシがあるといいんだけど」

『了解だ。持っていこう』

「ピクニックだね。楽しみだなあ!」

『ピクニック気分なのは君だけだぞ?』

「アレクも楽しいと思うよ。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日はピクニック!


          ◇


 ――――――――――九〇日目。


「薙ぎ払い!」


 今日は掃討戦跡地のピクニック。

 本の世界でコブタ肉の調達だ。

 ちょうどうちのストックのお肉がなくなったってこともあるけどな。

 四トン、お土産分まで含めてこんなもんだろ。


 エントランスまで戻って、本の世界のマスターである人形に話しかける。


「ねえ、アリス。戦争のことで新しい見聞、何かある?」

「あるわ。カル帝国は八艦からなる艦隊を組織し、首都メルエルの外港タムポートに集結させている。補給物資もほぼ積み終わり、出航間近よ」

「わかっちゃいたけど緊張感あるねえ」


 いよいよか。

 ドーラには港がレイノスにしかないのに、八艦からなる艦隊って多くね?

 どうするつもりだろ?

 威圧するつもりだろうけど。 


「秘密兵器については何かわからない?」

「あなたの言う秘密兵器かはわからないけれども、秘匿されていた情報がかなり露わになりつつあるわ。空を飛ぶことのできる大型軍艦が完成、帝国本土からドーラまで飛び続けることができ、魔道結界により外部からの魔法攻撃を無効にするという特徴がある」

「うわーやっぱ来たか。そいつのメインの攻撃は高々度からの爆撃だよね?」

「ええ。あと普通の軍艦並みの砲撃銃撃は可能」


 リリーの言っていた飛空艇だ。

 実用化されていたか。

 しかし性能は大体予想通り。


「空飛ぶ大型軍艦は一艦だけかな?」

「完成しているのは一艦のみよ。試作機で、実戦投入した成果いかんでは量産化の計画もあるわ。ただこれ、燃料満タンにしても帝国本土~ドーラ間を往復することはできないの。今積んでいる燃料分だと、ドーラに行くのさえ不十分よ」


 ふむ、どこかへ訓練飛行すると考えるのが妥当だな。

 そしてどこへと考えるならやはり……。


「大分わかってきたな。ありがとうアリス。愛してるよ」

「まっ!」


 人形が赤くなるの、どういう仕組みなんだろうなあ。

 転移の玉を起動し帰宅する。

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