第438話:黄金皇珠ゲット!
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
軽くお昼を食べてから魔境に来た。
今日は天気がいい。
「魔境の風が忘れられなくて、吹かれにおいでですか?」
「おっとオニオンさん、意外と詩人だね」
アハハと笑い合う。
「いや、違くて。黄金皇珠三個持ってこいってゆークエストが入ったの。依頼所で」
「ほう?」
オニオンさんの顔が興味深そうだ。
「あたし知らなかったんだけど、商人さんの間では黄金皇珠を飾る験担ぎがあるんだって? なかなか市場に出回らないから欲しいってことだった」
「ああ、なるほど」
納得したようだ。
「本当は別件で来た商人さんだったんだよ。でも何か話してる内に依頼ゲットしたんだ」
「ハハハ。ユーラシアさんお得意の話術ですか?」
「いやー、今日はおっぱいさんの方が上手だったね。あたしが商人さんから直接請けた依頼かと思ったら、何となく依頼所クエストにされちゃってた」
「サクラさん、有能ですから」
まったくだ。
悪い気はしないけど。
ああいうしっかりした美人が依頼受付所にいると、ギルドもありがたいだろうなあ。
「行ってくる!」
「行ってらっしゃいませ」
魔宝玉を求めしユーラシア隊出撃。
◇
「いつもの北進コースでやすか?」
「うん。まず北辺西の人形系パラダイスを目指そうか。黄金皇珠を三つ手に入れたら、東へ行ってみよう。早めに切り上げるつもりで」
「「「了解!」」」
魔境トレーニングエリア北辺も、東寄りは探索が甘いので知らない場所が多いのだ。
ザコを倒しながら北へ、よし、デカダンスだ。
「ドロップは透輝珠だけか。仕方ない」
確率だもんな。
「ウィッカーマンね」
ウィッカーマンは必ず黄金皇珠をドロップする。
ありがたい魔物だ。
「よし、黄金皇珠一個目。もう一つは羽仙泡珠か」
黄金皇珠より高いんだろうけど、売ったことないから相場がわかんないな?
「ユー様、今後高級魔宝玉が手に入ったら、売らずに取っておくのはどうでしょうか?」
「その心は?」
帝国との貿易がさらに細ると、高級魔宝玉が市場に溢れる可能性がある。
需給バランスの関係から引き取り価格が安くなってしまうのでは? とのクララの指摘だ。
「帝国との貿易が活発化しても、高級魔宝玉は需要があるかわからないです」
「国宝クラスのもあるって話だもんな。おゼゼに困ってるわけじゃなし、手元に残しておこうか」
魔境を自由に踏査できるレベルと人形系を倒せる手段、そして魔物のドロップ率レアドロップ率の引き上げ。
この三つの条件が揃ってるのは、現在のところうちのパーティーだけだろう。
うちが自重していれば、相場が壊れることもないってことだ。
自重自体があたしの得意なことではないけれども。
さらに北進。
ザコを蹴散らしつつ、人形系レア魔物てんこ盛りのエリアを目指す。
「さて、着いたぞ、エルドラドだ」
「パラダイスではなかったね?」
どっちでもいーんだよ。
ブロークンドールやクレイジーパペットを倒しながらデカダンスゾーンへ。
「真経験値君三体だ」
豊穣祈念で薙ぎ払い!
「よーし、黄金皇珠二個ゲット! 合計三個だね。このまま東を探索しまーす」
「「「了解!」」」
魔境北辺は西側のエルドラドこそよく来ているが、それ以外は大雑把に見ただけだ。
今日は一番北側の岩壁に近いところを通っていくか。
「何か急に暖かくなったね?」
「地熱でやすね」
北辺は東に行くほど暖かいのかと思ってたけど、そうじゃないんだ。
「うあ、湖だ!」
「ビッグサイズね」
以前来たときはこんな一番北のところ通らなかったから気付かなかったよ。
結構デカい湖なのにな。
「内側からは見通せなかったぜ」
「ちょうど死角になってるからだね」
「クレソンの生えてた場所と、水の出所は同じかもしれませんねえ」
あ、何かデカい魔物いる!
「おそらく亜竜の一種、首長竜です」
「ディスタントね」
湖の真ん中辺りにいるのだ。
クララの『フライ』で飛んでいけば倒せないことはないけど、あそこじゃドロップ品あったとしても回収できないしなあ。
素直に諦める。
「……これ、青ジソです」
「シソ?」
「ミントの仲間の植物ですよ」
ハーブの類か。
ふむふむ、有用だな。
「枯れててもわかるんだ?」
「はい。種は落ちちゃってますかね。あ、取れます取れます!」
クララが嬉しそう。
来年うちの畑で蒔けばいいな。
食卓が潤うのは歓迎なのだ。
「今日はこの辺にしとこうか」
「「「了解!」」」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
「こんにちはー。さっきの黄金皇珠持ってきたよ」
「すごいお姉さん、こんにちはぬ!」
再びギルドに戻ってきて、魔宝玉を納品しておこう。
依頼受付所のおっぱいさんが眼鏡をくいっと上げる。
「はい、ではギルドカードの提出願います」
ギルカは身分証明として便利だなー。
「はい、お返しいたします。黄金皇珠三個、確かに領収いたしました。クエスト完了です。こちら依頼報酬一〇万八〇〇〇ゴールドになります。お受け取りください」
「ありがとう」
「ありがとうぬ!」
さて、買い取り屋さんにも寄ってくか。
「ユーラシアさん」
「はい?」
「魔宝玉クエスト、ありがとうございました。ユーラシアさんでなければ、とてもあんな胸のすく結果にはなりませんでした」
ははあ、おっぱいさん本当に嬉しそうだな?
「一ヶ月も楽しませてもらって、あたしもお礼を言いたいくらいだよ」
「お楽しみはこれからですよ?」
おっぱいさんの目が怪しく光る。
その顔怖いってばよ。
ヴィルがあたしの陰に隠れようとするんだけど。
「明日午前中には先方に全ての魔宝玉が届くと思います。ああ、その時の依頼者の顔を想像すると楽しくて楽しくて」
あっ、こらヴィル、逃げようとすんな。
ぎゅーしてやるから。
「ひょっとすると明日中にも、泡食った依頼者から連絡あるかもしれません。いい気味だと感じながらお待ちください」
「……はーい」
何だってばよ?
どーなってんだってばよ?
冒険者になってから初めてといっていい、名状しがたい根源的な恐怖を感じた。
換金今度でいいや。
転移の玉を起動、ヴィルを連れてそそくさと帰宅する。
『クエストを完了しました。ボーナス経験値が付与されます』
これは依頼所クエストの完了通知だな?
経験値はいらないってばよ。




