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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第437話:毎度あり!

 渋面を作ったレイノス商人が、言葉を選びながら言う。


「……正しき道を進んでいればよい。悪しき道へ踏み込んでいるなら性根を叩き直したい。いずれも生きていればだが……」

「何が何でも連れ戻したい、というんじゃないんだ?」

「我が子とはいえ成人年齢である一五歳を越えています。自分の将来を自分で決める権利はあると思います」


 ふむ、意思を尊重してくれるならば。


「息子さんってジン? ヘリオスさんより少し背の低い、青髪の白魔法使える子?」

「「えっ?」」


 ヘリオスさんとおっぱいさんが驚く。

 

「さ、さようです! 御存じなのですか?」

「よく知ってるよ。ここではなくて西の果ての塔の村だけど、今や立派な中級冒険者として活躍してる」

「さようでしたか……」


 安堵したようだ。

 塔の村は遠いもんなあ。

 あっちの個々の冒険者の情報までレイノスには伝わらないだろうし。


「ジンと話したい?」

「えっ? いや、可能ならば話したいですが……」

「ヴィル、ジンに繋いでくれる?」

「わかったぬ!」


 消え失せるヴィルに驚きを隠せないヘリオスさん。


「今のは……」

「うちの連絡係を務めている悪魔ヴィルだよ。とってもいい子なんだ」

「は、はあ……」


 まあそれだけの説明じゃ何のことやらわからんだろうけど。

 ヴィルはジンとも面識があるんだってばよ。


『御主人、聞こえるかぬ?』

「うん、よく聞こえるよ。ジンはいた?」

『いたぬ。代わるぬ』

「ジン、少し時間いいかな?」

『はい、今から塔に入るところだったんですよ』

「ハハッ、ツイてたなー」

『ユーラシアさん、何かありましたか?』

「手短に話すね? 『アトラスの冒険者』のギルドに、あんたのお父さんが来てるんだよ。ジンを探しに。代わっていい?」

『えっ?』


 しばしの沈黙。

 悩むほどのことらしい。

 目利きとか経験とか人脈とかを求めて家を飛び出してきたと、ジンは以前言っていた。

 詳しいことは知らんけど。


『……お願いします』


 赤プレートをヘリオスさんに渡す。


「ジンか。無事だったか」

『父さん……』


 感慨もあるだろう。

 葛藤もあるだろう。

 ある程度身を立てることに成功した息子と、その息子を見直すべきが思い定めようとする父親のハートフルなドラマがあるのだ。

 ……ユー様ムリヤリ盛り上げようとしなくてもいいですよ、って顔をクララがしている。

 付き合いが長いだけあって、クララはあたしのことをよく理解してるなあ。


「お前がいるなら『アトラスの冒険者』のギルドだろうと思ってな。たまたま精霊使い殿がいて、お前の居場所を御存じだったのだ」

『うん、ユーラシアさんには礼を言っておいておくれよ』

「元気でやっているんだな?」

『もちろん。僕はまだ、帰るわけにはいかないよ』

「半人前の分際で何を言うか。一人前になって初めて実家の門を潜れると思え」


 ヘリオスさんの目が潤んでいるのがわかる。

 ああ、似た者父子なんだな。

 赤プレートを返される。


「もういいのかな?」

「ハハッ。生きてることが知れれば十分です」

「ヴィル、ありがとう。こっちに戻っておいで」

『了解だぬ!』


 これでよし、と。


「ジンと初めて会った時、素材やアイテムの目利き、ある程度の武芸と腕っ節、知らない世界の見聞、人脈を広げること、これらが人生に必要なことだと思ったから冒険者になるんだって言ってたよ」

「どうせ思いつきで冒険者などと言ってるんだろうと、私はジンの意見をロクに聞こうとしなかったですな。反省せねばなりません」

「ヘリオスさんとジンはよく似てると思う。ジンはもう少し穏やかな子かと思ってたけど、頑固なところもあるんだなーって」

「ふむ、そう思われますか」

 

 ヘリオスさん嬉しそうだ。

 あ、ヴィル帰ってきた。

 よしよし、いい子。


「ヴィルちゃん、ありがとうな」

「どういたしましてぬ!」


 ヘリオスさんがヴィルの頭を撫でる。


「ヴィルちゃんは可愛いですね。悪魔とはもっとこう、おどろおどろしいものかと」

「ヴィルは特別だね。普通の悪魔は悪感情を欲しがるんだって。だから人間を陥れたり嫌な目に遭わせようとしたりするんだけど、ヴィルは好感情が欲しい子なんだ。人を不快にしたりしないの」

「そうですか。いい子ですねえ」

「いい子ぬよ?」


 よほどいい感情なのだろう。

 ジンと連絡を取れたこともあるから。

 ヴィルがうっとりと頭を撫でられている。


「さて、謝礼をせねばなりませんが」

「あたしはいらないよ。ギルドの規定ではどうなの?」


 おっぱいさんが答える。


「正式に依頼を請けたのではありませんので、当方も必要ありません」

「だってよ?」

「いや、それではあまりにも……」


 ヘリオスさんが申し訳なさそうな顔になる。


「じゃあたまにはここで依頼出してよ。何かアイテム持ってこいみたいなのは、ギルドの専売特許だよ?」

「ハハハ、でも黄金皇珠を持ってこいみたいな依頼は困るでしょう?」

「天気が良ければ持ってこられるよ」

「え?」


 ビックリするなってばよ。

 魔宝玉はうちのパーティーの十八番だぞ?


「ユーラシアさんは特に高級魔宝玉に関しては得意なんですよ。黄金皇珠ですと二〇〇個以上納めていただいた実績があります」

「二〇〇個? えっ、二〇〇個?」


 大事なことだから二回言ったのかな?

 呆然とするなってばよ。


「いや失敬。では依頼させてもらってよろしいですか? 聞き知っておられるかもしれませんが、商人の間では黄金皇珠を飾っておくと金に困らないという験担ぎがありましてな。ただ出物が少ない上に重要な輸出品ですから、なかなか市場に出回らないのです。黄金皇珠一個、四万ゴールドでいかがでしょう?」

「ギルドの仲介手数料が一割ですので、ユーラシアさんの取り分は三万六〇〇〇ゴールドになります。よろしいですか?」


 おお、あたしへの直接依頼かと思ったら、おっぱいさんすかさず依頼所案件にしたね?

 嫌いじゃないぞ、そーゆーの。


「いいよ。一時間もかからないと思うから、ヘリオスさんここで待っててくれる?」

「や、申し訳ない。さすがに今日は金を持ち合わせておりません。三日後、ここへ取りに参りましょう」

「じゃ、締め切りは三日後の朝で。一個だけでいい?」

「では親しい取引先の分も含めて三つお願いできますか?」

「毎度あり! 早速行ってくるよ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

 魔宝玉クエスト再び!

 とゆーわけではないけど。

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