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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第436話:商人ヘリオス

 ――――――――――八九日目。


 フイィィーンシュパパパッ。

 朝からチュートリアルルームにやって来た。

 

「ようこそ、ユーちゃん」

「おっはよー。バエちゃんその頭飾り使ってくれてるんだ?」

「うん。カツラよりも頭が蒸れないってことに気がついたの」


 おおう、実用的な理由だったとは。


「バエちゃんって朝早いよね?」

「えっ? 決められた勤務時間通りよ」

「勤務時間が決められているんだ? 何時から何時までなん?」

「朝八時から夕方五時までよ。ドリフターズギルドも同じだと思うけど」

「そーいやギルドの職員は夕方五時までだな」


 朝何時からかは知らなかったけど。

 職員のいる時間くらい説明があってもよさそうなもんなのに、正式に聞いた覚えがないわ。

 何でだ?

 アバウトなドーラ時間だからか?


「期限一ヶ月で高級魔宝玉をできるだけ納めろってクエスト、昨日でようやく区切りがついたんだ」

「御苦労様。頑張ったわねえ」

「ライフワークみたいになっちゃってたんだよ。だからなくなると何やっていいかわかんなくてさ」

「ええ? じゃあ新人さんの教育、ユーちゃん希望にすればよかった」

「あたしこの前、エルマの面倒見たじゃん」


 笑い合う。

 すぐ戦争あるし、今あたしが新人さんに関わってる時間はないかもな。


「エルマさんはどう?」

「極めて順調だよ。レベルも五〇を超えて、もうちょっとでドラゴン倒せそうなくらい強くなったんだ」

「順調を超えている!」

「アハハ。ただ本人はパワーカード制作工房に入り浸ってるから、多分兼業になるね。冒険者はボチボチって感じだと思う」

「ユーちゃんが目論んだ通りねえ」


 エルマはここへは来ないか。

 あれだけスキル覚えると、チュートリアルルームには用がないもんな。


「あたしはスキル買いに来たんだった。どーもここ来ると、本来の用事を忘れちゃう」

「何のスキル?」

「『プチサンダー』のスクロール一本ちょうだい」

「『プチサンダー』?」


 バエちゃんが首をかしげる。


「後学のために、ユーちゃんがどうして『プチサンダー』を必要とするのか、教えてくれない?」

「バエちゃんの口から『後学のために』なんて、頭良さそーな言葉が出てきたぞ?」

「スキルスクロールが売れると歩合でお金をもらえるの。ナンバーワン冒険者のユーちゃんの買った理由が、セールストークに使えるかもしれないじゃない?」

「極めてバエちゃんらしい理由だったわ」


 二人して笑う。


「ごめん、あんまり参考にならないと思うけど、今まで魚取りに『サンダーボルト』を海に撃ち込んで感電させるっていうのやってたの。でもレベルに連れて威力も上がり過ぎちゃったから、『サンダーボルト』じゃたくさん取れ過ぎちゃうんだよ。もう少し威力の小さい雷魔法が欲しくなってさ」

「なるほど。雷魔法は魚取りに使えるって宣伝してみる!」


 いや、ドーラで魚はフライ以外では食べられてないしな?

 サバイバル系の冒険者なら売れるかもしれないけど、『アトラスの冒険者』にはどうだろう?

 興味はあるから、そーゆー宣伝文句で売れるかやってみて欲しいな。

 結果を知りたい。


「はい『プチサンダー』のスキルスクロール。一〇〇〇ゴールドです」


 支払い後に聞く。


「今日、御飯食べに来ていい?」

「あっ、じゃあカレーにするね」

「だったら今からお肉持ってくるよ。お肉ゴロゴロのかれえにしよう!」

「わあい、楽しみぃ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちは、ユーラシアさん。今日もチャーミングだね」

「こんにちはー、ポロックさん」


 バエちゃんとこに冷凍肉を届け、ギルドに様子を見にきた。

 海岸も行ってきたけど、やっぱり新しい『地図の石板』はなかったわ。

 クエスト完了のアナウンスもなかったしな。

 まだまだギルド・セットのクエストは続くらしい。


「魔宝玉クエストが終わっちゃって、喪失感が激しいんだよね。あたしの心を埋めてくれるものがあるかと思って、ギルドに来ちゃったよ」

「ハハハ。まだ新しい石板クエストは出てないのかい? 依頼受付所でユーラシアさんに相応しいクエストがあるかもしれないし、今までの転送先で違った知見があるかもしれない。『初心者の館』の研究者達と話すのも、今のユーラシアさんだと別の観点から面白いかもしれないよ?」


 ……なるほど、違う角度でエンタメってことか。

 伊達にポロックさんは角帽被ってないな。


「ありがとう、ポロックさん。まだまだ楽しいことはありそうだねえ」

「幸運を祈っておりますよ」


 ギルド内部へ。

 おっぱいさんのところ行ってみるか。

 あれ、冒険者っぽくない人とヴィルが一緒?

 愉快なことの予感がする。


「こんにちはー。何事かな?」

「御主人!」


 ヴィルが飛びついてくる。

 あんたは可愛いのう。

 ぎゅっとしてやる。


「ユーラシアさん。こちらの方なんですが……」


 濃い青髪の大柄な壮年男性だ。

 戦闘の心得はおそらくない。

 従者を一人連れている。

 レイノスの人かな?

 あの青髪の感じ……似てるな。


「やあ、あなたが精霊使い殿ですか。私はレイノスの商人ヘリオス・トニックと申すものです。高名なユーラシア殿とお近付きになれるとは、望外の喜びにございます。先日のフィッシュフライフェスはユーラシア殿の仕込みだそうで、まことに鮮やかな手並みでございました」

「アハハ。褒めてくれてありがとう。ユーラシア・ライムだよ。よろしく」


 握手。

 ふむ、我が強いきらいはあるが、真っ当な商人と見た。

 貸しを押しつけておいて損はないな。

 こらクララ、またユー様悪いこと考えてるみたいな目で見るな。

 おっぱいさんが説明してくれる。


「ヘリオス様は息子さんをお探しだそうで……」

「息子さんか。行方不明なんだ?」

「さよう。一ヶ月半ほど前でしたかな、冒険者になると飛び出していきまして。すぐ行き詰まって戻るものと思っていたところ、どうしてどうして、まだ戻ってこんのです」

「『アトラスの冒険者』に該当者はなく、ギルドに出入りしている者にも特徴から当てはまりそうな人はいないのです」

「ふーん。ちなみにヘリオスさんは、息子さんが見つかったらどうしたいのかな?」


 苦渋に満ちた顔になる青髪の商人。

 どう答えるだろうか?

 場合によっては協力するのにやぶさかでないのだが。

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