表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

434/2453

第434話:苦しみも悲しみも

 フイィィーンシュパパパッ。

 イシュトバーンさん家から帰宅したあと、聖火教アルハーン本部礼拝堂に一人でやって来た。

 うちの子達は留守番だ。

 お昼にたくさん食べちゃったから腹ごなしだな。

 先に整地地区を見てくるか。


「あ、もうこんなに進んでるんだ?」


 礼拝堂のあるところから見ると北に当たる地区を、広く整地しているのだ。

 こんだけ広いとどうにでも使えるな。

 ほとんど木は撤去されてるじゃん。

 聖火教徒の馬力は大したもんだと思う。

 外縁をぐるっと回り、知った顔を探す。


「こんにちはー」

「精霊使いユーラシアじゃないか。どうしたんだ?」


 魔物の見張りに立っているハイプリーストだ。

 名前は確か……。


「ワフロスだ」

「惜しい、もうちょっとで思い出せそうだったのになー」

「いや、まあ名前はいいんだが」

「いいんだ? アバウトなこと言われると名前覚えないぞ?」

「努力はしてくれ」


 アハハと笑い合い、切り開かれた土地を眺める。


「ここは道沿いだから開拓しようってことになったの?」

「というわけではないんだ。礼拝堂に近く、魔物が少ないから早くものになるだろうということだったので」

「ふーん?」


 つまりとっとと使える土地が欲しかったということか。

 戦争まで時間がないもんな。


「大分整地が進んだねえ。スピードにビックリだよ」

「巡礼に来た者まで含めて、男手を全て投入しているからな」

「うはー、巡礼者まで働かせてるんだ? メッチャ必死だな」

「うむ、しかしミスティ様はここをどうするつもりなのか……」

「あれ? まだ聞いてないんだ?」


 ふーむ、ワッフークラスのハイプリーストでも知らないのか。

 とゆーことは、聖火教幹部であっても誰も聞かされてない可能性が高いな。

 全てはミスティさんの胸の内か。


「何? あんた知ってるのか?」

「教えてもらったわけじゃないけど、ほぼ見当はついてる」


 ワッフーが驚く。


「そ、そうか。やはり精霊使いはすごいな」

「ワッフーはミスティさん信じてる?」

「ワッフー? い、いやもちろん俺はミスティ様を信頼しているぞ」

「うん、あんたはそうかもしれないけど、他の信徒はどうかな?」

「……」


 ワッフーが苦渋の表情を見せる。

 やはりかなり不満は出ているか。

 冬越しの支度も進めなければいけないところへ、理由も聞かされないままこの余計な労働だからな。


 しかしミスティさんに対する不信感が高まると困る。

 ドーラの聖火教は結構な勢力だけど、ミスティさん以上の指導者がいない。

 分裂なんかされたら面倒でかなわん。


「ミスティさんがここをどうするか言わない理由もわかるから、あたしからワッフーにも言えない。でも一〇日後くらいには結果が出るよ。ああ、こういうことだったのかって納得すると思う」

「一〇日後? 近い未来じゃないか」

「あたしはウソなんか吐かないとゆーのに。同時にミスティさんの苦しみも悲しみもいっぺんに理解できる。それまで全力で支えて。できればこれ、教団幹部の共通認識にしといて」

「わ、わかった」


 ワッフーの目に決意の色が見える。


「精霊使いはそれを言いに来たのか?」

「いや、ミスティさんに会いに来たんだよ」

「何の用で?」

「んー御機嫌伺い?」


 言えない理由と察したか、ワッフーも追及してこない。

 まーここを整地してる理由ともリンクするよ。


「ミスティ様は礼拝堂にいらっしゃる。案内しようか?」

「いや、いいよ。勝手に行くから。見張り頑張って」

「ああ」

「じゃねー」


 ワッフーと別れ礼拝堂へ。

 整地が進んでいるとはいえ、魔物が現れることはあり得るだろ。

 見張りの数が減るのはよろしくない。


「こんにちはー」

「こんにちは、精霊使いさん」


 お、修道女さん、あたしが来ても驚かないね?


「あたし来るの、飽きられちゃった? エンターテインメントが足りない?」

「いえいえ、そんな」

「うちの子達連れてきた方がインパクトあったかなあ?」

「足りないのはインパクトでもなくてですね。もしかすると精霊使いさんがそろそろお出でになるかもしれない、とのミスティ様の仰せでしたのですよ」


 なるほど、読まれていたか。


「通してもらえる?」

「はい、こちらへどうぞ」


 奥の間へ通される。


「こんにちは、ユーラシアさん」

「こんにちはー」


 ミスティさん痩せたか?

 苦悩の色が濃い。


「私達二人にしてください」

「かしこまりました」


 修道女達が席を外す。

 ふむ、思った通りミスティさんはあたしと話したいことがある。

 修道女長にも席を外させたところを見ると、開戦のことも北の地区整地の理由も話していないからだろう。


「ミスティさん、御飯しっかり食べてる? 大事な時だよ? バリバリ食べないとパワーが出ないよ」

「ユーラシアさん……」


 ミスティさんが苦笑する。


「何か新しい情報ありますか?」

「あたしが聞きたいくらいなんだよ。でもあと一〇日くらいでドンパチ始まると思う」

「一〇日? 思ったよりかなり早い……」


 ミスティさんが考え込む。


「でも北の整地区画、間に合いそうじゃない」

「はい、何とか。急がせてよかったです」

「パラキアスさんはこっち来ないの?」

「一ヶ月ちょっと前が最後ですね。それ以降は……」


 とすると、パラキアスさんにヴィルを初めて会わせた時だな。

 じゃあミスティさんにはほとんど情報入ってない?


「ミスティさんは、帝国との戦争についてどこまで知ってるのかな?」

「確定の情報としては、近々戦争があってそれが避けられないとだけしか……」


 ミスティさんが首を振る。

 しまったな、礼拝堂には連絡入ってると思ってたんだけど。

 パラキアスさんが西域にかかりっきりになってるのかもしれないな。


「戦争はレイノスと帝国艦隊の砲撃戦がまずあるよ。とは別に、帝国には海の一族の監視を抜けてドーラに上陸する技術があるの」

「えっ?」


 驚くミスティさん。

 やはり知らなかったか。

 さもありなん。


「いや、でも際限なくその技術を使えるわけじゃなくて、ちっちゃい舟でそーっと上陸するのが精一杯。ただし数十人規模の工作兵部隊は組織できそうってことなんだ」

「……であれば危ないのは西域街道?」

「うん。で、『アトラスの冒険者』は西域の流通を守るために、ほぼ全員あっちに投入することになる」

「待ってください。となるとレイノス東エリアはどうなります?」


 ようやく本題だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ