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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第431話:反骨の相

 ギルドの依頼受付所で手持ちの高級魔宝玉を全て納め終えた。

 あたしにとっての魔宝玉クエストはこれで終わりか。

 何だか寂しい気がするなあ。

 いや、でもおっぱいさんから黒い感情がチラチラ漏れてるし、まだ一波乱あるよーな気もする。


 ダンが聞いてくる。


「魔宝玉クエストでよ。依頼主の見当ついた人ってのはクソジジイのことか?」

「うん、スケベジジイのこと。でもイシュトバーンさん、知らないほうが面白いからって、誰だかは教えてくれなかったんだよ」

「遅くとも三日後には依頼主の元へ納品手続きが終了ってので、俺もわかったぜ」

「えっ?」


 やっぱり日付けがポイントなのか?

 商売に関係ある人だとわかるんだろうか?


「ダンもあたしが今依頼者を知っとくべきではないと思う?」

「いや、あんたとその依頼者の絡みならどっちでも面白くなるだろ。傍で見てる分にはな。でもあんたにとっては楽しみが残るのがいいんじゃねえか?」

「ふーん? じゃ、大人しく待ってよ」


 まあ二、三日のことだろうしな。


「あんた今からどうすんだ?」

「カラーズとレイノスとの間の交易が本格化してきてさ。その輸送隊の面々がイシュトバーンさんに招待されてるの。あたしも顔出さないと」

「いろんなことやってるな」

「ダンは?」

「魔境だぜ」


 ふてぶてしい顔だね。

 『オーランファーム』従業員達による冬越しの準備も、一応の目処が立ったのかな?


「さて、一度帰ろうかな」

「おう、じゃあな。ヴィルもまたな」

「バイバイぬ!」

「おっと、アイテム換金してくんだった」

「締まらねえな。やはりオチは俺じゃねえと務まらねえのか?」

「オチ担当の自覚が芽生えてきたね。あたしも精進するよ」


 アハハと笑い合う。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 まだちょっと時間が早いと思ったけど、イシュトバーンさん家へやって来た。


「こんにちはー」

「精霊使い殿、お待ちしておりました」

「……あれ、今日は物々しい感じがするね?」


 イシュトバーンさん家の警備員さん達が完全武装なのだ。

 何ゆえ?


「このスタイルで客人を迎えよとのことで」

「ははあ、イシュトバーンさんの悪ふざけだね?」


 警備員さんが苦笑しながら頷く。

 要するにいきなりビビらせてみるって魂胆だろう。

 帝国との戦争になるんだからこれくらい慣れておけっていう、イシュトバーンさんの親切心も少しは入ってるんじゃないかな。


「でも面白そう」

「ハハハッ、中へどうぞ」


 屋敷へ案内される。


「来たか、精霊使いよ」

「どうしたの、この臨戦態勢?」

「こういう扱いされた時にどういう対応するか、興味ねえか?」

「すごくある」


 あたしとイシュトバーンさんがニヤニヤしていると、うちの子達の『この二人同類だ』っていう視線に晒される。

 しかし刺さらないその視線。


「じゃ、あたし達は屋敷の中で迎えようか」

「おう、隠れていようぜ。ピリピリ緊張してここへ来るやつらを見て大笑いしてやろうぜ」


 イシュトバーンさんのお付きの女性達の『この二人趣味悪い』っていう視線に晒される。

 しかし跳ね返す面の皮。


「これワイバーンの卵だよ」

「三つもか。ありがとうな。おう、厨房に持っていってくれ」


 お付きの女性達達が卵を運ぶ。

 重くてごめんよ。


「一個はまよねえずにするんだぜ」

「今日は魚フライがメイン?」

「カラーズの連中なら、まだ食ったことねえだろう? ワイバーンの卵のまよねえずで食うなら最高だぜ」

「わーい、楽しみだよ!」


 企みつつ待つことしばし。

 門の辺りが騒がしくなる。

 来たか。

 家具の隅に隠れてみた。


「やはりフェイさんは堂々としてるねえ」

「先頭のデカいモヒカンか? お、もっとデカいやつもいるじゃねえか」

「一番デカい眼帯君が輸送隊の隊長だよ」

「あの手足が同時に出てる、すらっとしたお団子女子は?」

「あの子が副隊長。副隊長がいるから輸送隊を回せてるようなもん」

「ほお?」


 インウェンすげえ緊張してるな。

 もういいだろう。


「いらっしゃーい! 我が屋敷へようこそ!」

「おいこら、あんたの屋敷じゃねえ」

「でもお付きのお姉さん達は、あたしが主人のほうが都合良さそうだよ?」


 頷きかけて慌てて首を振る二人。


「全く油断がならねえ」


 よしよし、砕けた雰囲気になったね。


「黄の民族長代理フェイ・チャンと申す。本日はイシュトバーン殿のお招きに与り、感謝に堪えぬ所存だ」

「立派な挨拶痛み入る。しかし堅苦しいのはなしでいこうぜ?」


 イシュトバーンさんの愛嬌のある丸い目がフェイさんを見つめる。


「「「あはははははっ!」」」


 あたしとフェイさん、イシュトバーンさんの三人で笑い合う。


「イシュトバーン殿とはこういう方でしたか」

「いや、あんたもなかなかじゃねえか。カラーズにも人物はいるな。精霊使いが評価するだけはある」

「でしょ?」


 イシュトバーンさんが隊員を見回し、眼帯男に目を止める。

 あれ、どーした?

 見たことない酷薄さを感じさせる鋭い視線だね。


「あんたが輸送隊の隊長か」

「へ、へェい」

「反骨の相がある。よくこんなのを隊長にしてるな?」


 一瞬にして空気が凍る。

 これが『タイガーバイヤー』と呼ばれた男の真骨頂か。

 『反骨の相』って信用できないって意味かな?


「ズシェンがやんちゃなのは重々承知しておりますが、俺の器量が勝ればいいことゆえ」

「聞いたか、眼帯よ。あんた絶対にフェイ君とユーラシアには逆らうんじゃねえぞ? 勝てねえ喧嘩は売るだけ損だ」

「へえ、ユーラシアの姐さんにもさァんざん言われておりやしてェ」

「ほう」


 えっちな目をこっちに向けんな。

 すぐに鋭い目がえっちになるのな?

 おかしな早業だこと。


「精霊使いよ。あんた案外親切じゃねえか」

「眼帯君にもいいとこあるんだってば。路頭に迷うと可哀そうだから」


 特に黄の民の隊員の間には、まだ眼帯男をフェイさんのライバルと見る向きがあったかもしれない。

 しかし実力者であるイシュトバーンさんがフェイさんを格上と認め、あたしが眼帯男を可哀そう扱いしたことで、見る目は変化していくだろう。

 まさかフェイさんは、そこまで計算してついて来たわけではないんだろうが。


 ただイシュトバーンさんは輸送隊がうまく運営できるよう、眼帯男の首根っこを押さえとく意図があったみたいだな。

 イシュトバーンさんなりのサービスだろう。

 ありがたい。

 『反骨の相』というのは、『三国志演義』で諸葛亮が魏延を指して言った人相学上の特徴ですね。

 裏切りやすい人だそうで。

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