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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第430話:魔宝玉クエスト最終納品

「サイナスさん、こんばんはー」


 寝る前恒例のヴィル通信だ。


『うん、こんばんは』

「ヨハンさんの息子の冒険者と会えたんだ。ちょうどその場に緑の民エルマもいたから、少し事情を話してきたよ」

『今はあまり状況をかき回すなよ?』

「わかってるとゆーのに」


 開戦が近い。

 落ち着かせて敵に当たらなければいけない時期だ。

 あたしは賢いので、好き好んで波乱要因を持ち込むべきじゃないとゆーのは、理屈としてわかる。

 同時にチャンスがあるなら遠慮すべきじゃないことも知っているけどな。


「ヨハンさんねえ。緑の民から交易拒絶されたの結構堪えてたっぽい」

『オイゲン族長と交流があっただけに?』

「だね。オイゲンさんは交易賛成派だってことを伝えてもらうことにした」

『いいじゃないか。ヨハン氏もやる気になるだろう』


 オイゲンさんはヨハンさんとじっくり話したいと思ってるだろうけど、緑の民族長の立場もあって動けないっぽい。

 交易反対派の叔父叔母に会ってみたいもんだ。

 説得すりゃ一発なのにな。

 戦争前はムリか。


「で、エルマとヨハンさんの息子を通じて、オイゲンさんとヨハンさんに手紙のやり取りしてもらおうと思うんだ」

『ほう、何やら画策してるね』

「でしょ? ま、種蒔きだね。後のための伏線ってやつ。オイゲンさんとヨハンさんの意思の疎通が図れるといいなー」


 話ができてりゃ、きっかけさえあればいっぺんに物事進められる。

 結果が楽しみなやつだ。


「ハヤテはどうだった?」

『緑の民の村に連れていったら、やはり『精霊の森』の精霊だったよ。大喜びしていた。でも灰の民の村も気に入ったらしくて、昼間はこっちへ遊びに来るらしい』

「よかったねえ」

『森よりは刺激があるだろうからね』


 これでハヤテも安心と。

 アレクにも刺激があるだろ。

 いい影響を与え合って欲しいもんだ。


「オイゲンさんはどうだった? 会ってきたんでしょ?」

『すごい頭下げられたぞ。君一体何した?』

「何かするのはこれからなんだけど? あたしのことをよく知らん人はこれだから」


 サイナスさん胡散臭げな顔してるだろうなってのがありありとわかる。

 でも本当に大したことしてないんだってばよ。

 とゆーか今の段階じゃ何にもできないわ。


「輸送隊の初陣どうだった?」

『今日は『どうだった』ばっかりだね。フェイ族長代理が率いているから、まず問題ないよ』

「あ、そーだった」


 まあフェイさんならね。


『輸送隊は明日、レイノスのイシュトバーン氏に招待されてるんだろう?』

「うん。誰が何やらかすか楽しみで仕方ない」

『え? ムリヤリにエンターテインメントに仕立て上げなくても』

「イシュトバーンさんもエンタメ大好きなんだよなー」

『ひょっとして君と性格似てる人なのか』

「失礼だな。あたしはあんなにえっちじゃない」

『無事に終わることを心から祈ってるよ』


 サイナスさんの言い方が投げやりになってきたぞ?


「ちょうど眠くなってきたわ。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日は魔宝玉を納めてからイシュトバーンさんとこか。


          ◇


 ――――――――――八八日目。


 フイィィーンシュパパパッ。

 最近、朝からギルドに来ることが多い。


「おはよう、チャーミングなユーラシアさん。今日は随分大荷物だね?」

「おっはよー、ポロックさん。今日、魔宝玉クエストの納品期限の日なんだ。残り全部持ってきたの」


 妖姫の月、俗に言う一一の月の二七日。

 魔宝玉クエストが終了する今日のこの日を、あたしは一生忘れない。

 なんちゃって。 


 ギルド総合受付のポロックさんが大きく頷く。


「ああ。ドーラが丸ごと買えるだろうって噂の?」

「大げさな噂だなー」


 ギルド内部へ。

 先行させていたヴィルが飛びついてくる。

 よしよし、いい子だね。

 最近ではヴィルが一人でギルドにいても、誰も不審に思わないようだ。

 依頼受付所のおっぱいさんのところへ行く。


「サクラさん、おっはよー」

「すごいお姉さん、おはようぬ!」

「おはようございます、ユーラシアさん、ヴィルちゃん。魔宝玉の納品ですか?」

「うん。今日魔境天気よくないみたいだから、納品もこれで最後だよ」


 どさっと荷物を置く。


「はい、確認いたします。ベルさん、フリスクさん、よろしくお願いします」


 やじ馬冒険者が集まる中、武器・防具屋のベルさんと買い取り屋のフリスクさんが二人がかりでチェックしていく。


「どんなもんだ?」


 ツンツン髪の軽薄そうな男、ダンだ。


「気になる? 『道具屋の目』の固有能力は、食いっぱぐれがなくていいねえ」

「どんな感想だよ」

「あんたもシバさんが『鑑定』持ちだって知った時、似たようなこと言ってたぞ?」

「美少女精霊使い様と同じ感想とは恐れ多いぜ」


 あ、チェック終わったな。


「本日新たに黄金皇珠九二個、一粒万倍珠三個、邪鬼王斑珠一個、降魔炎珠二個、雨紫陽花珠一個、鳳凰双眸珠六個、羽仙泡珠二三個、幽玄浮島珠一個をお預かりいたします。先日までの分と併せまして、黄金皇珠二〇八個、羽仙泡珠六七個、鳳凰双眸珠一九個、邪鬼王斑珠三個、一粒万倍珠四個、降魔炎珠二個、雨紫陽花珠一個、幽玄浮島珠一個を、お預かりいたしております。計三〇五個の高級魔宝玉を依頼者の元に納品いたします」

「「「おおー!」」」


 三〇〇個超えか。

 よく働いたなー。

 やじ馬達が歓声を上げ、拍手してくれる。


「いいもん見たぜ」

「おう、一生自慢できるわ」

「ありがとう。あたしも皆が喜ぶエンターテインメントを提供できて鼻が高いよ」

「アハハ、いいぞ精霊使い!」


 にこやかな顔のおっぱいさんが言う。


「おそらく明後日には、遅くとも三日後には依頼主の元へ納品手続きが終了いたします。その時点をもってクエストの完了となります」


 今日があたしの納品の期限だから、明日運搬開始なのだろう。

 運ぶのには二日かかり、一日予備日を設けているみたいだな。

 二日かかるところってどこだ?


「これ、依頼主の見当ついたって人が、依頼主はあたしに会わせろって必ず言うって話してたんだ。サクラさんの見解はどーだろ?」


 おっぱいさんはちょっと驚いた顔をしたが、ハッキリ言う。


「はい、私もそう思います」


 ふーん、やっぱりか。


「お願いしまーす」

「お願いしますぬ!」

 餌食になった人はあたしのために働いてくれる気がする。

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