第428話:名残惜しい
ラルフ君パーティーとエルマを交えた内緒話を続ける。
悪巧みとゆーものは楽しいものだ。
いや、決して悪くはないけれども。
「でもエルマとオイゲンさんが、交易反対派のいないところで会うってのは、実は難しいんだ。誰が敵で誰が味方かもよくわかんないし。ヨハンさんにオイゲンさん宛ての手紙を書いてもらって、エルマを経由して渡してもらうのが現実的かな。オイゲンさんの返事をエルマからラルフ君に渡してもらえば連絡が取れる」
「「はい」」
『アトラスの冒険者』関係で、エルマはオイゲンさんの後輩になる。
その辺を理由にすれば、同じ緑の民ということもあってエルマがオイゲンさんとしょっちゅう会っていても、さほど違和感はあるまい。
「じゃ、ラルフ君はヨハンさんに伝えておいてね。エルマはラルフ君から手紙を受け取ったら、『誰もいないところで開封してください。わたしが仲介できます』とだけ言ってオイゲンさんに渡すんだ。いいね?」
「「はい」」
内緒話モード解除。
「ああ、陰謀は楽しいねえ」
「楽しいぬ!」
悪魔が陰謀楽しいって言うのはそれっぽくて面白いなあ。
ヴィルだとギャップがあってなおさらだ。
ぎゅっとしたろ。
「あたしは帰るね」
「師匠はこれから魔境ですか?」
おっ、ラルフ君もビビらずに『魔境』と言えるようになったね。
「魔宝玉クエストの締め切りが明日だからさ。もうちょっと頑張ろうかと思って。ラストスパートだね」
「お姉さま、素敵です!」
ハッハッハッ、何が素敵かわからんけど、こぼれる魅力がエルマをアタックしちゃったかな?
おっぱいさんに期待されてることもある。
依頼者が誰かも気になるが、イシュトバーンさんによると絶対あたしに会わせろって言ってくるらしい。
あたしの人生には楽しみが多いなあ。
「じゃあヴィルは通常任務に戻っててね」
「わかったぬ!」
「また会おう!」
「「「「「さようなら!」」」」」
転移の玉を起動し一旦帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
憩いの場にして心の故郷、魔境だ。
「魔宝玉クエストは今月一杯でしたか?」
「うん。でも搬送の都合上、納品の締め切りは明日って言われてるんだ」
「明日? 変ですね」
あ、やっぱり変なんだ?
オニオンさんが首をかしげる。
「ワタクシ、この依頼を出したのはレイノスの誰かであろうと考えていたのです。けれども搬送の都合で締め切りが繰り上がるのならば、もっと遠くでないと辻褄が合わないんですよ。はてさて?」
ふむふむ、わかってる人は皆同じ見解だな。
「イシュトバーンさんも同じこと言ってたんだ。締め切りが変だって。で、依頼者の見当ついたみたい」
「ほう、誰なんですか?」
「今知らないほうが面白いからって、教えてくれなかったんだよ。とにかく一切合切剥ぎ取れって。依頼者はあたしに会わせろって必ず言ってくるって」
「ははあ、楽しいイベントが残ってるわけですね?」
「やっぱそーゆーことなのかなあ? まいったなー」
べつにまいってないけれども。
正体がわかんないから何とも言えないが、あたしのカンは楽しいことだと告げている。
「ま、とにかくガンガン稼いでくるよ」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊出撃。
◇
「今日は真っ直ぐ北でやすか?」
「うん。今日は心ゆくまで真経験値君、並びにほぼ経験値君と戯れようじゃないか」
いざ北進!
「……しまった。またやらかした」
何をってワイバーンの卵を拾ってしまったのだ。
どーしていつも行きに拾うのか。
重いし持ちづらいんだよなーこれ。
ベースキャンプ出撃直後にワイバーン倒すのは鬼門だな。
「明日イシュトバーンさん宅に持っていくんですよね?」
「お土産だけど、帰りに拾いたかった。卵持ってると気にしなきゃいけないから、微妙にストレスかかるんだよな」
「ネバーマインドね」
「そうだぜ姐御。もう一個拾ったら一旦帰って置いてくればいいぜ」
「あっ、アトムがフラグ立てた! ほらほらワイバーン出てきたし。もーこんなん絶対卵落とすに決まってるわ!」
案の定でした。
「しょうがない。帰って置いてこよう」
「「「了解!」」」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん……あれ?」
再び魔境に戻ってきた。
混乱するオニオンさん。
「いや、ワイバーンの卵二個拾っちゃったんだ。重いから一度家に置いてきたの」
「ハハッ、大変ですね」
「行ってくる!」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊再出撃。
◇
「行きはワイバーン無視ね」
「「「了解!」」」
ストックしてある分含めてワイバーンの卵は三個か。
いいお土産になるなあ。
メッチャおいしいことは確かだし。
「ふう、ようやくドラゴン帯か。ここまで来れば安心だ。ワイバーンに遭遇しなくてすむ」
魔境であたし達の最も恐れる魔物がワイバーンになっているのは何故だ?
すげえ納得いかんけれども。
「サイクロプスね」
「雑魚は往ねっ!」
よしよし『巨人樫の幹』だ。
もう海の王国に持っていく分の数は足りてるけど、高価なレア素材には変わりない。
中央部でイビルドラゴンを蹴散らし、さらに北へ進む。
「パーラダーイス!」
魔境北辺の人形系レア魔物エリアに到達。
「ここも今日で最後かな」
「残念でやすねえ」
名残惜しいが、明日はイシュトバーンさん家に顔出して、輸送隊の諸君とともに食事会だ。
魔境に来る時間はない。
魔宝玉クエストが終われば人形系レアに拘る必要もなくなる。
「今後は人形系魔物を気にせず、もっと広い範囲で魔境探索をしましょう」
「魔宝玉クエスト後もエンタメが残ってると考えようか。よし、今日は思う様、デカダンスとウィッカーマンを狩るぞ。いいかな?」
「「「了解!」」」
最初に比べればかなり効率も良くなったもんだ。
「デカダンスがスリーね」
豊穣祈念からの薙ぎ払い!
「黄金皇珠一個透輝珠三個か」
レア一個というのは不満残るが、まあ確率だからこういうこともある。
ウィッカーマンを倒して、と。
「やたっ! 黄金皇珠と鳳凰双眸珠だ!」
今度はスーパーレアが出たぞ。
よしよし。
「今日はギリギリまで稼ごう。夜はギルドで食べていこうね」
「「「了解!」」」




