第427話:緑と縁と
パワーカード工房で新たなるカードを得たあと、ギルドにやって来た。
「こんにちはー、ポロックさん」
「いらっしゃい。チャーミングなユーラシアさん。今日はどこかの転移石碑から来たのかい?」
「アルアさんとこの工房からだよ」
「ああ、なるほど」
ふむ、特に慌てた様子は見られない。
戦争があるぞショックも一段落だと思われる。
いいことだな。
焦ったってどうにもならんし。
うちの子達が全員揃ったところでギルド内部へ。
「お姉さま!」
買い取り屋にエルマがいた。
「ギルドにいたのか。あたし達今、アルアさんとこ行ってたんだよ」
「そうでしたか。あのう、昨日のことですけれども、族長様がお姉さまにお礼を差し上げねばと申していたのですが」
「いらないいらない。大体食獣植物倒したのエルマじゃん」
あたし働いてないわ。
こんなんでお礼もらったら気持ち悪いわ。
あっ、でもヴィルは働いたな。
ぎゅっとしたろ。
「ええと、ではわたしはどうすればよろしいでしょうか?」
「オイゲンさんに気にするなって言っといてくれる?」
「はい、わかりました!」
あたしも不用品買い取ってもらお。
何だかんだで買い取り屋さんは一番世話になっている。
「師匠、おはようございます」
「おーラルフ君達じゃないか。おっはよー」
「先日の我が家と緑の民族長家の件ですが」
「ちょうどよかった。昨日緑の民オイゲン族長の話聞けたんだよ。情報のすり合わせしよう。エルマもおいで」
「はい」
皆で食堂へ。
テーブルをくっつけて大きくする。
「大将、ミントティー九個!」
注文入れて皆に向き直る。
「えーと、ラルフ君パーティーとエルマは面識あるんだっけ?」
「顔と名前くらいは」
「鮮やかな緑髪が格好いいなあと思っていました」
ふむふむ、存在を知ってる、くらいの認識か。
まだエルマが冒険者になって一〇日くらいだもんな。
やっぱ緑の民エルマにとっては、鮮やかな緑髪が格好いいという感覚なのな?
オイゲンさんも奇麗な緑髪だったし、族長一族の髪色イカすっていう価値観があるのかもしれない。
あ、ヴィルがクララのとこ行った。
「ラルフ君は、カラーズ~レイノス間の交易を仕切ってもらってる商人ヨハン・フィルフョーさんの息子ね」
「フィルフョー? では族長様の御親戚ですか?」
「そう。オイゲン族長のお父さんと、ラルフ君のお爺さんお婆さんが従兄弟同士になるのかな、確か」
「わかりました」
「エルマは一三歳の緑の民で、『大器晩成』っていうやたらとスキル覚える固有能力持ちの子」
「レア能力ですね? よろしく」
「皆様、よろしくお願いいたします」
握手を交わす。
それでだ。
「昨日、魔物退治の名目で緑の民の村に呼ばれて、オイゲン族長と話すことができたんだ。エルマもその場にいた。オイゲンさんはヨハンさんと面識あるようだったけど?」
「はい。時々ふらっと遊びに来た、少し年齢は離れていたがいい兄貴分だったと、父が申しておりました」
「ヨハンさんの御両親が二人とも緑の族長候補だったんだって? 駆け落ちしていなくなっちゃったから、残った族長候補の権威付けのためにも二人を悪者にせざるを得なかったと聞いたよ」
「父も詳しいことは知らないです。父自身は緑の民の村にいたことがなく、祖父母からの伝え聞きのみなんですよ。村を出てきて苦労もしたが、愛し合っていたので後悔はない。村に迷惑をかけたのが心残りだ、と祖父母が言っていたとのことです」
「素敵なロマンスですねえ」
まったくだ。
でもオイゲンさんの物言いとニュアンスが違うな?
「ヨハンさんの御両親、つまり二代前の族長の長男家と次男家の跡目候補が緑の民の村を去って、今の族長家である三男家は喜んだっぽいんだよ。族長が意図せず転がり込んできたから。迷惑なんて全然思ってなくて」
「ははあ? いや、でも混乱させたのでなかったのならよかったです。父も同様に考えると思います」
「ただ村に出戻られると揉めるでしょ? 特にヨハンさんは長男家と次男家のハイブリッドだから」
「えっ? いや血筋上はそうかもしれませんが、父は商人であって今の緑の民の村と繋がりありませんし……」
戸惑うラルフ君。
「あたしも同意見だけど、現在の族長家長老達はヨハンさん警戒の考え方だとは知ってて。だから関わりを持ちたくなくて、ヨハンさんの伝手で交易なんてとんでもないと考えてる。ここまではオーケー?」
「了解しました」
「一方で族長のオイゲンさん自身は交易したい派なんだよ。だからあたしと接触したがった」
エルマがコクコク頷く。
「交易反対派の族長家長老ってゆーのは、オイゲンさんから見ると叔父叔母に当たる人達ね。オイゲンさんも頭が上がらんって言ってた」
「よかったです……いえ、父はオイゲン族長の気を損じたか、道を違えたかと少々思い煩っておりましたので」
ヨハンさんは緑の民が交易に参加しないことを、族長オイゲンさんの態度の硬化と受け取っていたか。
切ない話だなあ。
うまいタイミングを見つけて和解させ、貸し押しつけたろ。
「ヨハンさんにいずれ緑の民も交易仲間に入る、心配いらないって言っといてね。こっちはどうにかするから」
「そうです! 昨日お姉さまは詐欺師も舌を巻くような方法を考え出されて、族長様を引かせるほど感心させておいででしたから!」
「普通だってば」
エルマ、それは褒めてないぞ。
見ろ、ラルフ君パーティーもどん引きじゃないか。
「で、ちょっといいかな?」
内緒話モード発動。
「いずれにせよ、今緑の民が交易を積極的に進めることはないんだ」
「何故です?」
「戦争前に緊急じゃない議論で民を割るわけにいかないから」
ラルフ君パーティーとエルマが頷く。
「……戦争が長引いたりすると、緑の民の村からも物資をレイノスに売ってくれないか、という議論も起きそうですが」
「好都合だね。人道支援だ協力しろってふうに持ってけば、簡単に交易参加させることができそう」
ま、戦争は長引かないに越したことはないから。
「この話の続きは戦後になるけど、今からでもヨハンさんとオイゲンさんの意思の交換はなされていた方がいい。エルマ、あんたが仲介するんだよ。あたしが緑の民の村に入り浸ってたんじゃ目立つから」
「はい、わかりました」
引き締まった表情になる。




