第426話:アトムの裁量で交換
――――――――――八七日目。
フイィィーンシュパパパッ。
うちの子達とともにパワーカード工房にやって来た。
「アルアさーん、こんにちはー」
「いらっしゃい。よく来たね。今日は悪魔っ子もお供かい?」
「そーなの」
「こんにちはぬ!」
「いい子だねえ」
「いい子ぬよ?」
ヴィルがアルアさんに頭を撫でられる。
可愛がられて気持ちよさそう。
ここの工房は落ち着くなあ。
岸壁に掘られたもので、ドワーフにはよくあるタイプの家だそーだ。
帝国の山の集落も同じタイプだが、ここは明り取りが備えられているため明るい。
「素材の換金でいいかい?」
「お願いしまーす」
交換ポイントは一〇三三になった。
ふむ。
「何か交換していくかい?」
「うん。今日は趣向を変えて、アトムの裁量で三枚交換するってことにしたんだ」
「ほお?」
アルアさんの顔のしわが心持ち深くなる。
興味深そうだな。
ここの工房に来る時いつもついて来るアトムは、パワーカードが大好きなんだよ。
「交換レート表だよ」
ここのところ換金だけだったので、交換レート表をもらうのも久しぶりだ。
見てると楽しいんだけど、つい必要のないカードまで欲しくなっちゃうからよろしくない。
一種の罠だと思ってる。
さて今回新しく交換対象となったのは以下の三枚。
『マスターソード』【斬撃】【殴打】【刺突】【炎】【氷】【雷】【風】【土】
『マジックオーソリティ』魔法力+四〇%、攻撃力-一五%
『吸血鬼の牙』攻撃力+二〇%、物理攻撃で与えたダメージの一部をヒットポイントとして吸収
新規のレア素材を持ってきたから交換可能になったのだろう。
いずれも限定一枚で、『マスターソード』『マジックオーソリティ』は交換に一五〇ポイント、『吸血鬼の牙』は二〇〇ポイント必要だ。
『マスターソード』は何とビックリ、八つも攻撃属性がついている。
攻撃力はあっても属性を持たないカードと相性がいいだろう。
弱点属性の異なる魔物同士が一度に出現するエリアなんかでは、特に有効と思われる。
『マジックオーソリティ』は、攻撃力が激上がりする『益荒男』に似たタイプのカードだ。
こっちは魔法力が激上がりするが攻撃力は下がる。
後衛の専門魔法職にとって攻撃力なんかなくていいので、『益荒男』より使いやすいな。
下がるパラメーター量も少ないし。
「はーい、今回の問題作『吸血鬼の牙』でーす。ヤバくない?」
「ヤバいですね」
「ヤバいな」
「ヤバいね」
「ヤバいぬ!」
今日はヴィル入りなので完璧だ。
何がヤバいって、『物理攻撃で与えたダメージの一部をヒットポイントとして吸収』っていう、文面から滲み出るヤバさ。
「これって、通常攻撃もバトルスキルも関係なくヒットポイント吸い取るってことだよねえ?」
「全体攻撃であれば、全ての魔物に対して効果を発揮するでしょうし」
アトムは盾役だからヒットポイントを失いやすい。
それを補充するのにちょうどいいカードだ。
もっとも盾役アトムは行動を防御に充てることも多いから、ヒットポイント自動回復付きのカードの方が有効なのかな?
検討は必要だな。
「さあ、アトム選んで」
「へい。『吸血鬼の牙』と『マジックオーソリティ』で」
ほう、二枚か。
意外だな。
以前確か『必殺山嵐』に興味があるって言ってたけど、それはスルーのようだ。
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサーでやす」
「アルアさん、『吸血鬼の牙』『マジックオーソリティ』一枚ずつもらう」
「はいよ」
二枚のカードを受け取り、交換ポイントは六八三になった。
「姐御、カード編成もあっしにやらせておくんなせえ」
「よーし、任せたよ」
あたし……『あやかし鏡』『スナイプ』『アンリミテッド』『暴虐海王』『スコルピオ』『風林火山』『ハードボード』
クララ……『逃げ足サンダル』『誰も寝てはならぬ』『三光輪』『スカロップ』『シンプルガード』『スペルサポーター』『ボトムアッパー』
アトム……『ドラゴンキラー』『ルアー』『誰も寝てはならぬ』『ハードボード』『武神の守護』『シンプルガード』『吸血鬼の牙』
ダンテ……『誰も寝てはならぬ』『癒し穂』『三光輪』『るんるん』『マジシャンシール』『光の幕』『マジックオーソリティ』
予備……『寒桜』×四『誰も寝てはならぬ』『アンチスライム』『サイドワインダー』×二『三光輪』×二『前向きギャンブラー』『オールレジスト』『ヒット&乱』『刷り込みの白』『ナックル』×二『ニードル』『スラッシュ』×二『アンデッドバスター』『風月』『鷹の目』『スナイプ』『シールド』×二『ファイブスター』『ボトムアッパー』『ポンコツトーイ』『厄除け人形』『火の杖』『エルフのマント』『ファラオの呪い』『プチエンジェル』
なるほど、あたしの運の高さからクリティカルは食らわないと見て、『シンプルガード』をより防御力の高い『ハードボード』に。
その『シンプルガード』をアトムが装備して、巨人族のクリティカル攻撃に備える。
さらに『ファラオの呪い』の無慈悲な状態異常付与より『吸血鬼の牙』のヒットポイント吸収を選ぶ。
ダンテに『マジシャンシール』『光の幕』『マジックオーソリティ』をつけて防御力と魔法力を上げる。
ダンテに『光の幕』を譲った関係で沈黙の状態異常に対して無防備になるクララに、沈黙無効付きの『スペルサポーター』を回す、か。
「いいじゃんいいじゃん。前々からダンテの守りが薄いような気はしてたんだよね」
「そうでやすね。『プチエンジェル』がイマイチ働いてなかったんで、わかりやすく効果を出してみやしたぜ」
うんうん。
『プチエンジェル』付属の蘇生魔法『天使の鐘』が外れるのは、惜しい気がしないでもない。
が、蘇生薬の類を持ってりゃすむ話でもある。
「『誰も寝てはならぬ』は外しにくいねえ。最大ヒットポイント増強効果がバカになんない」
「凄草を毎日食べることで、最大ヒットポイントが増えてくると、いらなくなるかもしれやせんが」
確かに。
アトムのカード愛がわかって嬉しいよ。
「残り一枚の交換はどうする?」
「あとの楽しみで」
いいだろう。
アトム偉い。
「アルアさん、ありがとう。さようなら」
「さようならぬ!」
「気をつけて行くんだよ」
アルアさん家の外の転移石碑からギルドへ。
今交換できるカードでは、完成形に近い編成かもしれない。




