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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第424話:御飯時だから

 さて、帝国戦について緑の民に話しておくことはこれでいい。

 しかし緑の民族長オイゲンさんと交易反対派の監視なしに話せる機会が、次いつ訪れるかわかったもんじゃない。

 聞くべきことは聞いておかねば。


「で、オイゲンさん。不躾で申し訳ないんだけど、ヨハン・フィルフョーさんとことの確執って何が問題なの? ヨハンさん優秀な商人だし、今んとこ彼を通さないとレイノスとの交易がうまくいかないんだけど」


 こういうのは正面から直球と決まっている。

 事情を話してくれるオイゲンさん。


「先々代緑の民族長家には三人の息子がいたのです。ただこの先々代族長というのが大変長生きで、跡を継がせることがないまま三人の息子が亡くなってしまった」

「あれま、御愁傷様です」

「いよいよ先々代が隠居するという時、長男家の一人娘と次男家の一人息子が跡目を争った。ところがその二人が駆け落ちして村を出てしまったんです」

「おおう、ドラマチック。その二人がヨハンさんの御両親?」

「さようですな。思いがけず族長の座が転がり込んできた三男家、つまりわしの父にとってみれば、実力で勝ち取ったわけでもない跡目は嘲笑の的であったろう。何より二人が帰ってくれば争いの元だ。二人を恥知らずとして吊るし上げ、タブーとしたのはむしろ必然の成り行きと言えましょう」


 むーん?

 これ緑の民の村を飛び出してきたヨハンさん家は、詳しくは知らない事情かもしれないな。


「でもオイゲンさん自身は、ヨハンさんに隔意がないみたいだけど?」

「ヨハンとは冒険者時代にしょっちゅう会っていたのでな」

「そーだったんだ?」


 ヨハンさんがラルフ君の『アトラスの冒険者』を後押ししたというのは、オイゲンさんの活動を知っていたからという含みがあったのか。

 またヨハンさんとオイゲンさんに接触があったなら、オイゲンさんはヨハンさんの商売の実力をかなり知ってるはず。

 ふむふむ、なるほど。


「わしの叔父叔母三人がまだ健在での。まあわしも若い頃村を顧みず、ほっつき歩いていた引け目もあって、叔父叔母には頭が上がらんのです」

「ほっつき歩いてたって。『アトラスの冒険者』はすごくいい経験だと思うけどなあ」

「思うぬよ?」

「その三男家の長老格であるオイゲンさんの叔父叔母三人というのが、強力な交易反対派という理解でいいのかな?」


 とゆーか、長男家次男家のハイブリッドであるヨハンさん家に対する反対派なのだろう。


「はい、間違いないですな」

「それだけだったらどうにでもなりそうだけれども」

「えっ? ど、どうやって?」

「緑の民全体に交易のメリットを流布しといて、何十年も前のネタで今の利益捨てるのっておかしくね? ヨハンさんみたいな金持ちが、今更貧乏村の族長に拘るわけないじゃんって、真正面から論破してもいいし」


 鼻白むオイゲンさん。


「もうちょっと穏便に行くなら、代理人を立てて交易始めちゃう。うまく回り始めて経済的に緑の民が潤ったところで、その人がヨハンさんの代理人だってバラせばいい。叔父叔母三人が発狂して交易を止めようとしたってもう遅いでしょ? 今更何言ってんだ、バカかオメーらですんじゃう」

「そ、それが穏便な方法ですか?」

「皆にいい顔することができないなら、族長としてどっち向くべきか決めればいいんだよ。レイノスとの交易規模が大きくなるのはカラーズ全体の利益になるから、他色の民も皆で応援するよ」


 皆黙るなよ。

 あたしがすげえ悪女みたいじゃないか。

 ふつーのやり方だわ。


「どっちにしても、戦争前に揉め事持ち込んで内部分裂はあり得ん。話を進めるのは戦後になるけど」

「さ、さようですな」

「ゆっくり考えてくださいな」


 まー緩衝地帯への出店は再開すればいいんじゃないかな?

 交易の話が自動的に耳に入って、オレ達も参加しようぜってことになると思うから。


「帰ろうか」


 ヴィルは通常任務に戻して……。


「あっ、お姉さま。ヴィルちゃんをぎゅーしていいですか?」

「いいよ」

「いいぬよ?」

「ぎゅー」

「ふおおおおおおおおお?」


 ハハッ、よかったね。


          ◇


 クララの『フライ』で緑の民の皆の前に降り立つ。


「魔物は退治したので安心してください!」


 退治したのはエルマだけどね。


「おおおお、ありがとうよ!」

「もう安心だねえ!」


 皆さんも喜んでくれてるし。


「じゃ、あたし達は帰るね」

「精霊使い殿のキレと凄味はよくわかりました。また相談に乗ってくだされ」

「喜んで。フェイさんやサイナスさんと腹を割って話してみるのもいいよ。きっと力になってくれるから」


 頭を下げるオイゲンさん。

 いや、逆に今は戦争のことがあるから、各族長と連絡を取りやすいタイミングとも言える。


「パウルさん、エルマ、さようなら」

「お姉さま、ありがとうございました!」「さようなら」


 転移の玉を起動し帰宅する。


『クエストを完了しました。ボーナス経験値が付与されます』


 あ、クエストだったのか。

 これもギルド・セットの括りだろう。

 何個目だったかな?


          ◇


 夕食時、うちの子達と話す。


「まだかなりの威力があるねえ」

「そうでやすね。あっしもちっと驚きでやす」


 『マジックボム』放置実験のことだ。

 もう三日経つのだが、最初の七割くらいの威力を保っている。


「トラップとして使えると思うんだよね」

「マジックサーチされるとバレてしまうね」

「まーね」


 ダンテの指摘はもっとも。

 確かに魔力を放っているものだから、わかる人にはわかっちゃう。

 だけど警戒させることや足を止めることはできそう。


「使い方次第ではないですか?」

「愉快な使い方を考えろってこと? ウシの糞とウマの糞とヤギの糞のミックス溜まりを、ちょうどジャンプで越えたところに、『マジックボム』仕掛けておくとか?」

「ちょっと人間の所業を逸脱してませんか?」


 ひどいことを言う。

 たまーにクララはキツいんだよな。


「じゃあ例えば精霊の所業だとどうする?」

「上に何か仕掛けておいて、遠隔で崩し落とすことはできそうでやすぜ」

「上からウシの糞とウマの糞とヤギの糞を落とすの? メッチャひどくない?」

「いや、糞から離れて」

「うん」

「フーン」

「あっ、ダンテが何か言った!」

「ボスも『うん』ってセイしたね!」

「御飯時だからやめましょう」


 クララ正論です。

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