第423話:見つけたぬ!
緑の民族長のオイゲンさんは元『アトラスの冒険者』、かつもののわかった人で、どうやら進歩的な考え方のできる人と知れた。
おそらく交易関係の話でも共闘できるな。
やりやすくなった。
「『アトラスの冒険者』の最もいいところは、世を広く知ることができる、その点じゃん?」
「うむ、まさしく!」
オイゲンさんも同意見だ。
「せっかくだからエルマにも、『アトラスの冒険者』のいいところを享受してもらいたくてさ」
「わかります、わかりますぞ!」
「でも『アトラスの冒険者』って、聞いたところによると初期で半分脱落しちゃうそうなんだ。固有能力に恵まれた性格のいい子ばっかり選抜してだよ? 脱落させるのはもったいないことこの上ない。エルマだって初っ端で落伍したんじゃ何のメリットもない」
「だから初めに助力するというのは大いに賛成ですが、しかしレベルアップが早過ぎやしませんかな?」
「そこは人形系レア魔物を狙って倒す、あたしの得意技で何とか」
首をかしげるオイゲンさん。
エルマは澄ました顔をしている。
「人形系レア魔物といっても……ははあ、魔境の上級人形系魔物ですか」
「ピンポーン」
「そんなことができるというのも驚きですが」
オイゲンさんが大きく頷く。
あたしも衝波の攻撃属性のある『アンリミテッド』のパワーカードを得て、初めて可能になったことだ。
「いや、普通は上級人形系魔物を狙って倒すという発想に至らないものです」
「みたいだね。でも経験値もおゼゼも稼ぎやすいから、今後はトレンドになると思うんだ」
「エルマはいい先輩を得たの」
「はい、最高のお姉さまです!」
ハハッ、最高のお姉さまだぞー。
と、不意に赤プレートからヴィルの声が響く。
『御主人、見つけたぬ!』
「よーし、ヴィル偉い! 位置はどの辺かな?」
『御主人のいる場所から真北へ三〇〇ヒロくらい、ちょっと開けたところだぬ!』
「今行く! クララ、お願い!」
「はい、フライ!」
木の上まで浮き、すごいスピードで北へ。
オイゲンさんとエルマパパがビックリしてるけどあとでね。
いた! やはり食獣植物。
「エルマ、片付けちゃって」
「はい、強撃!」
エルマパパが止める間もなく一撃。
唖然としてるけど余裕なんだって。
「エルマお見事」
「ありがとうございます!」
「まだ『スナイプ』は手に入れてないみたいだね。『眠りの花粉』を吐く食獣植物みたいな嫌らしい魔物は遠くから攻撃した方が安全だから、早めに手に入れときなよ」
「はい!」
『スナイプ』入手は、エルマの今のクエストの完了条件だったか?
『スナイプ』は使い方にちょっとクセがあって練習が必要だからな。
「強くなったとは聞いていたが、実際に目にすると……」
娘の成長を認めなよ。
エルマ嬉しそう。
「エルマはパワーカード使いですか」
「重い武器は向いてないんで、あたしが勧めたんだ」
しきりに頷くオイゲンさん。
さて、仕事は終わった。
話しておくべきと見た。
「皆さんにお知らせがあるよ。他言無用に願いまーす。帝国とドーラは戦争になるんだ。一〇日~半月後くらいだと思う」
シーンとなる。
あ、オイゲンさんは聞いてたらしいな。
フェイさんかサイナスさんからの連絡だろう。
「きな臭い、とは思っていたが、そんなに早いですか」
「『アトラスの冒険者』は西域の街道の防備に当たるんだ。あっちの物資がレイノスに入らなくなると一大事だから。でもエルマは未成年なんでカラーズに残すよ。結果としてエルマがカラーズで最大のレベルを持つ戦力になる」
真剣に聞いてるね?
「今、カラーズ~レイノス間で交易してる関係で、輸送隊をレベル上げしてるんだ。レベル三〇以上が一四人、輸送隊員以外のレベル三〇以上二人を合わせて一六人いるよ。カラーズが襲われる可能性は低いんだけれども、有事の際には、黄の民フェイ族長代理の指揮下に入ってください。オイゲンさんが元冒険者だって知ってたらお任せしたんだけど、今更指揮系統変えると混乱するんで」
「いや、フェイ君が出来物だというのは知っておる。彼ならば問題ない」
おーフェイさん評価されてるね。
「フェイさんにはエルマのこと話してあるから、言われた指示によーく従ってね。エルマが冒険者になって日が浅いことも知ってる。決して無茶なことは言われないから。むしろ勝手に動いた時が危険だよ」
「は、はい。お姉さまは……」
「あたしにはあたしに相応しい戦場がありそう」
おそらくあたしの相手は空の敵、飛空艇か。
オイゲンさんが難しい顔をして言う。
「他言無用とのことだが、戦争の話はどこまで広がっているのですかな?」
「カラーズで知ってるのはほぼ族長クラスだけだと思う。しかも差し迫ってることを知ってるのはフェイさんの他、灰の民サイナス族長のみ」
「何よりも混乱が怖い、ということか」
こっくり。
理解が早くて助かるね。
「この戦い、ドーラが負けることはまずないんだけど、混乱に乗じて工作されるとちょっと困るんだよね。帝国艦隊がレイノスに砲弾撃ち込むまで知らぬ存ぜぬして、戦争始まったら統制して、向こうの攻め手を失わせれば損害を少なくして勝てる」
「ふむ、要するに帝国にはレイノス砲撃以外に何か攻め手があるということですな? 精霊使い殿はそれに備えてレベル上げをして回っていると」
「うん、大当たりでーす」
わかってくれてマジ助かる。
「帝国には、海の一族の監視を抜けてドーラにこっそり上陸する手段があるんだ」
「何と! まことですかな?」
「実証されてるから本当。ただ際限なく使えるわけじゃなくて、小舟でそーっと漕ぎ寄せるくらい。つまり最大限にムリすると、数十人規模の潜入工作部隊を組織できることになる」
オイゲンさんがこめかみを抑える。
「数十人規模、となるとやはりカトマスから西の街道、物流が最も危ないと考えられる。だから『アトラスの冒険者』は西へ……」
「当然の戦略だね。でもレイノス東やカラーズが急襲される可能性だってないわけじゃない。油断はしてられない」
「カラーズに回す戦力はない、だから自衛せいということですな? なるほど、よおくわかりましたぞ。パウル、エルマ。今聞いたことは、誰にも話してはならぬ。たとえ家族でもだ」
「「は、はい」」
よし、戦争話はこの辺までか。




