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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第421話:魔物が出た!

「サイナスさん、こんばんはー」


 イシュトバーンさんの家から帰宅して、ギルドでピンクマンに呪術グッズの注文が行く旨を話し、その後一時間ほど軽く魔境へ行って、帰って夕御飯を食べたあとの、ヴィル経由の寝る前通信だ。

 ふう、まあまあよく働いている。

 お天道様は感心な勤労精神をよく見ていると相場が決まっているのだ。

 だから何か寄越せ。


『うん、今日は御苦労さん』

「ノルマが終わった気がするよ。ようやく肩の荷が下りた感じだね」

『えっ? ユーラシアは楽しんでやってるだろう? 輸送隊員の話を聞く分には、君が一番ノリノリだったみたいじゃないか』

「それはそれとして」


 笑い。

 あたしがノリノリだったか否かは瑣末なことだ。

 大事なのは輸送隊員のレベリングが完了し、帝国軍が攻め込んできた時の抵抗勢力ができたこと。


「あれからフェイさんが輸送隊とともに招待されたいってことを、イシュトバーンさんに連絡したんだよ。そしたら一大事」

『また何かやらかしたのか?』


 あたしのせいではないとゆーのに

 『また』って何だ。


「レイノスのセレシアさんの店がバカ売れでさ。商品足んなくなるって言うんで、イシュトバーンさんに泣きついてて」

『ほう? しかし氏に泣きついてもどうにもならないだろう?』

「まーね。でもちょうどそこへあたしが連絡入れたから。午後に青の民の村から在庫を運んで一件落着」

『よかったな』

「普段の心がけがいいから、物事がうまい具合にいくんだ」


 セレシアさんの心がけじゃないわ。

 あたしだわ。


「セレシアさんとこの店、ちょっと危険な売れ方なんだよね。いっぺんに流行っていっぺんに廃れたんじゃ困るから、セーブするよう言い聞かせてきた」

『しかし他に商品がないんだろう?』

「いや、黒の呪術グッズを、セレシアさんデザインで売ることにした」

『なるほど、外注で商品ラインナップを増やすのか』

「そゆこと。外注第一弾だね」


 外注はうまいやり方だと思う。

 他色の村も潤うといいなあ。

 どんどん外注出して欲しい。


「明日明後日は特に予定ないんだ。のんびり魔境行こうかと思って」

『どうして『のんびり』と『魔境』がくっつくのかなあ?』

「相性ピッタリに違いないよ」

『君が力説するほど信じられなくなるのはどうしてだろう?』

「人徳のせいかな? それともカリスマ?」


 アハハと笑い合う。


『アレクの買ってきた本はどうだい?』

「隣でクララが読んでるよ」

『辞書は?』

「枕にするには固かったわ」

『大事にしとけよ。いつか使うかもしれない』

「固い枕が好みになる日が来るかなあ?」

『ハハハ、おやすみ』

「おやすみなさい。ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日は魔境か?

 魔宝玉クエストの締め切りが近いのだ。


          ◇


 ――――――――――八六日目。


「やったぜ、カカシ!」

「ついにやったなあ!」


 今日は凄草株分けの日。

 ようやく凄草が四八株に達した。

 六日に一度株分けのパターンなので、これで四人が毎日一株食べてもなくならないことになる。


「今日で普通のステータスアップ薬草も最後か。感慨深いなー」


 何だかんだでかなり食べてるから、きっと強くなってるんだろうな。

 実感は湧かないけれども。

 最後の今日は、クララが月草・体力草・魔力草の入ったスープを作っている。


「昨日ショウガもらったんだよ」

「おう、育てるのかい? 春に植えてくれればいいぜ」

「水がたっぷり必要って聞いたんだけど?」

「水もいるんだが、水だらけだと腐っちまうんだ。まあ栽培管理はオイラに任せときな」

「カカシかっくいー!」

「ハハッ、植える時まで凍らないように気をつけておいてくれよ」

「わかった!」


 ドーラでも冬はたまーに氷が張るくらい寒くなることあるからな。

 あっ、それより『氷晶石』の側に置かないようにしないと。

 家の中からクララの声だ。


「ユー様、朝御飯ですよ」

「うん、今行く!」


 食べることは元気の印であり証であるのだ。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 ギルドへアイテムの売却に来た。


「おはよう、ユーラシアさん。今日もチャーミングだね」

「おっはよー、ポロックさん」

「エルマさんがお待ちですよ」

「エルマが?」


 何だろ?

 昨日輸送隊員のレベリングを手伝わせちゃったことが、緑の民の村で不都合なことだっただろうか?

 ギルド内部へ。


「御主人!」「お姉さま!」


 先行させたヴィルとエルマが飛びついてくる。

 よしよし、いい子達だね。


「どうしたの?」

「実は緑の民の村で魔物が現れまして、父が襲われたんです」

「おっと、これは予想外だった」


 たまにこういうことがある。

 カラーズの隣接地域は魔物の住むエリアだから。


「お父さん大丈夫だった?」

「はい、浅傷です」

「何が何体出たかわかる?」

「父の話を聞く限り、おそらく食獣植物一体だと思います」


 食獣植物か。

 アルハーン平原に出現する魔物では弱いやつ。

 アルアさんところにも出るから、エルマも普通に倒してるはず。

 もっとも今のエルマが倒せない魔物なんてそうそういはしないのだが。


「村で結構な騒ぎになっておりまして、見習い冒険者であるわたしに頼りになる冒険者を呼んでこい、できればお姉さまをと……」

「えーと、エルマの村での扱いは見習い冒険者なの? 職人見習いでなくて?」

「どうなんでしょう? 冒険者やると言って、職人のところに入り浸ってる?」

「まあ人生一筋縄ではいかないよねえ」


 食獣植物の退治なんてエルマにとっては目瞑ってたって楽勝ではある。

 ただ一般論で言えば、一人で戦うならレベルが一〇近くあって装備がしっかりしていなければ厳しい相手だ。

 眠らされることもあるので、倒しに出向くなら二人以上を推奨したい。

 見習いが倒せなどという話は出ないのだろう。


「うん、あたしが行くのが一番問題なさそーだね」

「御足労かけて申し訳ないです」

「いいんだよ。可愛い妹分のためだからね」

「お姉さま……」


 目ウルウルのエルマ。

 愛いやつめ。

 魔物退治の名目なら、体裁を整えるためにフルメンバーで行くべきだな。

 けど、うちの子達置いてきちゃったわ。


「ちょっと待ってね。換金してからうちの子達と一緒に行こう。ヴィル、通常任務に戻っててくれる? 展開によってはあとで呼ぶかもしれない」

「わかったぬ!」


 よしよしいい子。

 ぎゅっとしてリリース。

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