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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第420話:早めのてこ入れ

 フイィィーンシュパパパッ。


「お待たせー。荷物持ってきたよ」


 青の民に梱包してもらった服を持って、イシュトバーンさん家に戻ってきた。

 セレシアさんの喜ぶまいことか。


「ユーラシアさん、ありがとう!」

「別嬪さんの笑顔はいいもんだな。おう、お前らこれ、店まで運んでやれ」

「ありがとう! 助かるよ!」


 『フライ』で運ぶとまた新聞記者呼ばれそうだしな。

 じゃ、ヴィルを含めたうちの子達はイシュトバーンさん家で待っててもらうか。

 いや、運ぶの全部任せちゃってもいいな。


「ワタシもこれでおいとまいたします。本当にありがとうございました」

「ちょい待ち」


 ウキウキで帰ろうとするセレシアさんを捕まえる。

 荷物は先に運んどいてくださいね。

 お願いしまーす。


「セレシアさんとこの店、そして青の民の村の生産状況。今の体制はかなり問題があるよ」

「いつまでも同じもんが売れるとは限らねえ。必ず波はあるんだぜ」


 あ、イシュトバーンさんもヤバいと思ってたんだな。

 青の民の服屋が失敗すると被害が大きい。

 他のカラーズの面々のメンタルにも響きそうだ。

 セレシアさんによーく言い聞かせないと。

 屋敷へ戻る。


「定番物以外は商品切らしてもいいから、大増産するのはやめて」

「オレも同意見だ。人件費と材料費でいずれパンクするぜ」

「で、でも商機を失ってしまうのでは?」


 確かにそのリスクはあるのだが。


「足りないくらいだと皆が欲しがるけど、ありふれてる余ってるというのは、ファッションにとって大きなマイナスだよ?」

「といっても……」


 躊躇するセレシアさん。

 あんだけ売れる様子を見てるからか、ここでセーブしろというのを受け入れがたいようだ。

 気持ちはよーくわかるけれども。


 イシュトバーンさんがニヤニヤしながら言う。

 何だよ、気味悪いな。


「別嬪さんよ。精霊使いはあんたが困ってる原因がわかってたくらいだ。何か解決策も持ってるに違いないぜ? まず拝聴しようじゃねえか」


 またイシュトバーンさんはこんなところでエンターテインメントを重視しようとするんだから。

 あたしがいつでも切り札を持ってると思うな。

 いや、しかしここは切り札を使うべき場面か。


「は、はい……」

「あれ投入しよう。黒の民の呪術グッズ」

「はん?」


 予想外だったか、イシュトバーンさんがポカンとしている。


「カラーズ黒の民は、安く呪術グッズ作れるんだよ。でもセンスが壊滅的だから、デザインをセレシアさんに担当させて売れないかってこと」

「もう少し詳しく」

「具体的には精霊様モチーフの、本当に運のパラメーターが上昇するペンダントを五〇〇ゴールドで売る」

「ほお!」


 イシュトバーンさんが感心する。


「五〇〇ゴールドは確かに高えが、パラメーター上昇が本当なら破格だな」

「でしょ? 黒の民は四〇〇ゴールドで作ってくれるから、差し引き一〇〇ゴールドの儲け。でも儲けの一割は精霊様のモデル料としてもらうよ」

「しっかりしてんな」


 実際には輸送費がかかるから、もう少し儲けは減るが。


「本当は来年の三月、精霊の月に突っ込もうと思ってたアイデアなんだ。でもこうなったからには、今店の商品を拡充しとかないと、お客さんに見限られちゃう」

「そ、そうですわね」


 セレシアさんがぎこちなく頷く。


「セレシアさんのファッションはトータルコーディネートを目指すんでしょ? 黒の民の呪術グッズ、白の民の革、赤の民のガラス、黄の民の木工、使えるものは全部使うんだよ」

「全部自前でやってりゃ儲けは確かに大きくなるが、損する時もデカいぜ。外注をうまく用いて生産調整するのは有効な手段だ。同時に恩も売れる」

「冒険者需要が一服して、黒の呪術グッズ工房が今比較的暇なんだ。チャンスだぞ」

「あんた、もう工房の状況まで調べてたのかよ?」


 呆れるなよ。

 基本だってばよ。


「わかりました。外注で商品を充実させましょう!」

「早速デザイン決めてよ。クララのスケッチする?」

「ええ、では」

「オレにも描かせろ」

「え? イシュトバーンさんも描くの?」


 オチが見える気がする。


 ――――――――――三〇分後。


「何でクララをこんなえっちに描くの! 客層考えてよ!」

「ハッハッハッ。満足したぜ」


 思った通りだ。

 イシュトバーンさんが描くと、自然とえっちな絵になるらしい。

 謎だな?

 描き手の本性が滲み出るからか?


「こんなところでどうでしょう?」

「うん、可愛い」


 セレシアさんの描いたデフォルメクララ。

 こんなんでいいんだよ。

 黒の民の連中はムダに細部に凝ろうとするしな。


「色と大きさは……」


 薄いブルーとピンクの二種、いいじゃんいいじゃん。

 うんうん、ちっちゃめが可愛いね。


「三日後には青の民の輸送隊の人来るんでしょ? それまでに細かいところまで決めといてよ。発注数とかも。あ、この絵もらえる? 大体こんな感じで注文入るぞーって工房に言っとけば、すぐ製作にかかれると思うから」

「わかりました。お願いします」

「ヴィル」

「何だぬ?」

「ピンクマン探してくれる? ギルドかカラーズだと思うんだ」

「わかったぬ!」


 ヴィルが転移で飛んだあと、イシュトバーンさんが聞いてくる。


「ところで精霊使いよ。今日はあんた何でオレに連絡取ろうと思ったんだ?」

「おおう、忘れてた。イシュトバーンさん三日後にカラーズ輸送隊のメンバーを招待してくれるじゃん? カラーズ黄の民の族長代理が輸送隊の元締めみたいなことやってるんだけど、その人もここへ来たいって」

「どんなやつだ?」

「カラーズで一番できる男だよ」

「ほう、あんたができる男って言うくらいか。楽しみだな。ぜひ呼んでくれ」


 ホクホク顔のイシュトバーンさん。

 ほんと愉快なことが好きだよなー。

 あたしも他人のこと言えないけど。


「三日後はあんたも来るんだな?」

「うちの子達ともどもお邪魔するよ」


 輸送隊とイシュトバーンさんの両方に深く関わってるのは、ラルフ君パパヨハンさんを除くとあたししかいないし。

 赤プレートから声がする。


『御主人、ピンクマンはギルドにいるぬよ?』

「わかった。あたしもすぐにギルド行くから」

『待ってるぬ!』


 よーし、大体いいだろう。


「あたし達は帰るね。さよならー」

「またな」

「ユーラシアさん、ありがとう。今日は助かったわ。さようなら」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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