第418話:ずっとコンティニュー
「これでカラーズでやるべきことは終わったかな」
「ハハハ。御苦労さん」
輸送隊員達のレベル上げが終わり、うちの子達及びサイナスさんアレクと灰の民の村へ帰る途中だ。
クララが聞く。
「アレクさん、本が来てるんですよね?」
「クララはしっかり覚えてるなー」
クララは嬉しそうだけど、あたしの頭からはすっかり抜けてたわ。
「アレク、どんな本買ってきてくれたの?」
「色々だよ。図鑑が多いかな。昆虫、鳥、魚とかの。あとはカル帝国の歴史、引退した『アトラスの冒険者』の手記、辞書」
魔宝玉クエストが終わっても、魔境探索は続けたいと思っている。
特に季節が変わってからだな。
春先から初夏にかけてはまだ発見してないものも多く見つかりそうだから、図鑑はありがたい。
引退した『アトラスの冒険者』の手記も面白そう。
『アトラスの冒険者』関係の本ってほとんどないみたいだから。
でも辞書って何?
「さすがにアレクはクララの好みをよく知ってると思うけど、最後の辞書だけはよくわからんな」
「辞書はユー姉用だよ」
「何であたしに辞書が必要なんだ」
「じゃあユー姉は『ゴリ押し』と『力尽く』と『パワープレイ』の違いわかる?」
「『ゴリ押し』は十八番で『力尽く』は得意技で『パワープレイ』は常套手段」
聞くまでもないだろーが。
サイナスさんが笑いを噛み殺してるけれども。
こらアトム、ヤベえみたいな顔すんな。
「枕にするのにちょうどいい大きさだよ」
「あっ、ありがとう!」
心地良い睡眠は大事。
字を見てれば眠くなるし、睡眠導入にいいかもしれない。
こらダンテ、ふーって顔すんな。
「ハヤテはどうしてやす?」
「普通にしてるよ。村に住むようになるんじゃないかな」
「やっぱどこから来たかはわからないんだ?」
「ランダム転移したんでしょ? ちょっと見当がつかないね。でもハヤテの話を聞く限り、気候や植生が近い気がする。ドーラのどこかだと思うよ」
異世界から飛んできたとかだとどうにもお手上げだけど、ドーラ内だったらいずれわかるかもしれないな。
「村の図書室に魔物の図鑑あったじゃない?」
「ああ、『魔物図説一覧』だね」
「あれでハヤテが何の魔物に遭ったか、調べてよ。珍しい魔物だったら大体の場所わかるかも」
「今日のユー姉は冴えてるね」
「あたしはいつ何時でも冴えてるわ」
知ってる魔物だといいけどな。
「そういやダンテ、あんたってどこから来たの?」
多分ドーラ西域のどこかみたいな話だったが。
「詳しくはアイドントノーね。どこかの転送魔法陣からギルドにゴーね」
「じゃ、『アトラスの冒険者』のホームだったってことだよね?」
「メイビーソーね」
確かに西域をホームにしてる『アトラスの冒険者』は多そう。
その内のどこかだな。
人に歴史ありとはよく言ったもんだ。
人じゃなくて精霊だけど。
「あんた達は楽しい?」
「すごく楽しいですよ。毎日がとても充実しています」
「冒険する夢が実現したでやすよ」
「ミーもね。ソロではとてもムリだったね」
アレクがおもむろに聞く。
「ユー姉はいつ『洗脳』の固有能力を獲得したの?」
「そんなんじゃないやい」
あたしが楽しいことはうちの子達も楽しいのだ。
これ、あたしが『精霊使い』の固有能力持ちだということと関係しているのだろうか?
灰の村が見えてくる。
「ユーラシアはこれからどうするんだ」
「まずイシュトバーンさんに連絡かな。輸送隊員がお邪魔する時、フェイさんも行くことを伝えとかないと」
とうちゃーく。
サイナスさん家で本を受け取った。
クララがホクホク顔だ。
「じゃ、帰るね」
「ムリするんじゃないぞ」
転移の玉を起動し帰宅する。
◇
「アトムとダンテは何か欲しいものないの?」
帰宅後、うちの子達に聞いてみる。
クララに本の御褒美があったので、アトムやダンテにも報いてあげたい。
「あっしはパワーカードでやすねえ」
出たぞ、このカードマニアが。
「じゃあ今度アルアさんのところ行ったら、アトムの考えで三枚交換しよう。『ベヘモス香』とシバさんにもらったレア素材で、新しいのがリストに入ってるはずだし」
「本当でやすか!」
おーおー、大喜びだね。
「ダンテはどうする? 何がいい?」
ダンテはあんまり物欲のない子だ。
小食だしなー。
「ミーは、今のライフがずっとコンティニューするといいね」
おお、ロマンチストだね。
でも……。
「……約束はできないかな。あたし自身が一ヶ月後に生きていられるかどうかわからない」
あまり驚かないね。
うちの子達もある程度覚悟してたか?
「……イッツ、肥溜めガールの?」
「マーシャの予言もあるけど」
『アトラスの冒険者』になる前夜に見たリアルな夢。
帝国戦で命を落とすことになると、自称女神が言っていた。
マーシャの予言では大変な戦い、空の敵に注意とのことだった。
あたしのカンがこれこそ帝国の秘密兵器だと囁く。
しかもかなりヤバいやつだ。
リリーの説によると魔法の効かない巨大飛空艇とのこと。
上空からポコポコ爆弾落とされたら、確かにレイノスはピンチだろう。
高レベルの『フライ』を持つあたし達のパーティーしか相手にできそうにないが、近距離からの銃撃や弩の集中攻撃を躱せるか?
「あたしが死んじゃうとダンテが泣いちゃうみたいだから、ちょっと頑張るか」
うちの子達のいい表情を見た。
よしよし。
「さて、イシュトバーンさんに連絡しとかないとなー」
赤プレートに話しかける。
「ヴィル、聞こえる?」
『聞こえるぬ! 感度バッチリだぬ!』
「イシュトバーンさんと連絡取りたいんだ。飛んでくれる?」
『わかったぬ! ちょっと待つぬ』
しばらくの後、イシュトバーンさんに繋がる。
『おう、精霊使いか。ナイスタイミングだ。今すぐこっち来られねえか?』
「え、何事?」
『別嬪さんがあんたに連絡取れないかって、泣きついて来てるんだ』
セレシアさんが?
ははーん。
「……ひょっとして、もう売るものなくなっちゃったとか?」
『察しがいいな』
マジかよ。
思ったよりずっと売れ行きがいいな。
ありがたいことではあるが、今商品切らしたんじゃカラーズから持ってくるのにかなりの時間がかかっちゃう。
欠品が続くと店の評判にも関わるな。
「わかった。行くよ」
『昼飯の用意しとくぜ』
「すぐ行く! 特急で行く!」
昼御飯が浮いたぞー!




