第414話:ズルいです
――――――――――八五日目。
今日は朝から輸送隊員レベル上げの日だなー。
この前会った感じだと、パニック起こして騒ぎ出しそうな人はいなかった。
魔境でも安全にレベリングできそう。
何故魔境と安全が結びつくのかって?
細かいことでぎゃあぎゃあ言うやつはモテないぞ?
赤プレートを取り出して話しかける。
「ヴィル、聞こえる?」
『聞こえるぬ! 感度良好ぬ!』
「エルマがどこにいるか教えてくれる? ギルドかアルアさんのとこか、どっちかだと思うんだ」
『わかったぬ。ちょっと待つぬ』
ヴィルは実にいい子だ。
確実にお使いを果たしてくれるもんな。
一休み一休み。
『ギルドにいるぬ。ピンクマンと一緒ぬ』
「ありがとう。今からそっち行くから、ヴィルもギルドにいてね」
『わかったぬ!』
よーし、ギルドに出発だ。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「やあ、いらっしゃいユーラシアさん。今日もチャーミングだね」
「おっはよー、ポロックさん」
角帽のギルド総合受付が柔和な目を向けてくる。
「最近朝からギルドに来ることが多いねえ。働き過ぎじゃないかな?」
「えっ、お肌の艶がピンチかな? おっぱいさんに相談すべき?」
笑いながらギルド内部へ。
買い取り屋さんでアイテムを売る。
「毎度! ここのところユーラシアさんのおかげで、ギルドの収入がかなり上がってるんですよ」
買い取り屋フリスクさんもニコニコ顔だ。
「いいことだねえ」
「ええ、魔宝玉の単価は高いですから」
例えば透輝珠の買い取り価格は一五〇〇ゴールドだが、売るとこに売ったならその倍くらいになるらしい。
差益が大きいなら儲かるな。
「魔宝玉がずっと眺めていたくなるほど奇麗なのはわかるけどさ。そんなに需要のあるものなのかな?」
「単なる装飾品としても、マジックアイテムのコアや触媒としても引っ張りだこですよ。現在ドーラと帝国間の貿易は細ってますが、それでも帝国はドーラの魔宝玉を輸入せざるを得ないのです」
「外貨獲得に有効だなあ」
あたしからすると奇麗ではあるけどただの石っていう感覚なんだが、魔道具関係の需要があるようだ。
杖の先に魔宝玉をセットしてるやつを見たことあるな。
カル帝国の人口はドーラの一〇〇倍はあるらしい。
輸出できるんなら魔宝玉をいっくら取ってきても供給過多になることはなさそう。
安心材料が増えた。
魔宝玉クエスト。
相場の五割増しでたくさん納めたとしても、倍の値段で売れば依頼者も儲かるんじゃん。
お尻の毛の心配いらなくない?
「いやあ、さすがに世界の秘宝レベルの魔宝玉ともなりますと、簡単に売れるもんじゃありませんよ」
「ふむふむ、もっともなことだね」
やはりお尻の毛を……いやいや。
「そろそろ魔宝玉クエストも期限が来ちゃうじゃん? 寂寥感があるとゆーか心に秋風が吹くとゆーか」
「もうすぐ冬ですけどね。私も目の保養をさせてもらいましたよ」
「また誰か似たようなクエスト出してくれないかな?」
「ハハッ、一人犠牲者が出ると警戒してしまうと思いますよ」
やっぱり破産しちゃうのかー。
……依頼者があたしの欲しいものを持ってればチャラにしてやってもいいけどな。
「ありがとう。またよろしく」
「いえいえ、こちらこそ」
食堂へ、いたいた。
「御主人!」
ヴィルが飛びついてくる。
よしよし、可愛いやつめ。
「お姉さま!」「ユーラシア」
エルマとピンクマンだ。
この二人は普通に喋れるんだなあ。
ピンクマンはエルマをロリ扱いしてないんだろうか?
「お待たせ、行こうか。サフランに声かけときたいんだ。ピンクマンのホームに飛んでってことでいいかな? 一番近いし」
カラーズ緩衝地帯に行くなら、フレンドでエルマのホームに飛ぶ手もある。
ただ緑の民は今のところ交易に参加していない。
エルマの立場的に、あたし達やピンクマンと緑の民の村を練り歩くのはよろしくないだろう。
「構わんぞ」
「黒の民はさー、あたし達が時々押しかけて嫌な気しないのかな? デリケートなとこがわかんないんだよね」
「ユーラシアの口から……いや、何でもない。黒の民が閉鎖的なのは認めるが、ユーラシアが来るようになって面白いイベントはあるし、村の活気も出てきた。ほとんど全員が歓迎しているぞ」
「よかった。ところで『ユーラシアの口から』何? 『デリート』? 『デリケート』? 『バリケード』?」
観念したように言うピンクマン。
「……ユーラシアの口からバリケードならともかく、デリケートという言葉が出てくるとは、だ」
「そっちかあ」
「お姉さま、すごーい!」
ハッハッハッ、もっと崇めなさい。
「じゃ、行こうか。ヴィルもついておいで」
「わかったぬ!」
フレンドで転移の玉を起動し、黒の民の村へ。
◇
「こんにちはー。サフランいる?」
「あっ、ユーラシアさん、こんにちは」
黒の民の村、ピンクマンのホームに飛び、酢の醸造ラボに立ち寄った。
奥からサフランが駆けてくる。
「大きなラボだねえ。これフル稼働すると、前の何倍くらいの生産量になるの」
「五倍ですね。機材を充実させれば七倍くらいまでにはなると思います」
「いや、ここまで来たらゆっくりでいいからね。人材の教育に問題がないなら、生産量増やすことより、商品増やすこと考えよう」
「あ、醤油ですか?」
あたしは頷く。
商品一つというのは、何かあった時のダメージ大きいからね。
何でも同じだけど、リスクを分散するのが賢い。
「ところでそちらは?」
「あたしの妹分で新米冒険者のエルマと、うちの悪魔ヴィルだよ」
「よろしくお願いいたします。サフランお姉さま」
「よろしくお願いしますぬ!」
「二人とも可愛いじゃないですか。ズルいです。どちらかアターシにいただけません?」
「あげない」
サフランって可愛いもの好きの子だったのか。
着てるもので何となくわかってたけれども。
悪魔と聞いて、ラボの従業員が皆わらわらとこちらへ来る。
「本当だ、本物の悪魔だ」
「ヴィルちゃんいい子だね」
「いい子ぬよ?」
「「「可愛い!」」」
ヴィルチヤホヤされてんじゃねーか。
まあ黒の民が悪魔くらいでビビるわけないと思ってたけれども、連れてきて正解だったわ。
ところであんたら仕事はいいのかよ?
「大丈夫ですよ。発酵が順調ならば、ほぼチェックだけですので」
酢の製造ってそーゆーものなんだ?




