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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第413話:一切合切剥ぎ取る

 イシュトバーンさんが話題を変えてくる。


「ところで魔宝玉クエストどうなってるんだ?」

「気になる? かなーり順調だよ。今納品可能な高級魔宝玉が全部で二〇〇個超えてる。今日初めて拾ったのも含めていくつか持ってきたから見せてあげるよ」


 四つの高級魔宝玉を机の上に並べると、皆の口からため息が漏れる。

 魔宝玉って種類でかなり個性が違うから、趣深いなあとは思う。

 すげえやつは明らかにすごくてランクが違うって感じがするし。

 依頼してまで高級魔宝玉が欲しいとゆー気持ちも少しはわかる。


 でも二〇〇個届けられるってのは、依頼者もさすがに考えてなかったろーなー。

 しかしあたしは後悔していない。

 依頼者には破産してもらおう。


「一粒万倍珠、雨紫陽花珠、幽玄浮島珠、降魔炎珠か。いずれも滅多にお目にかかれるものじゃねえ。こう並ぶと贅沢だな」

「これ雨紫陽花珠以外はリッチーからのドロップなんだ」

「ほう?」


 イシュトバーンさんの目が細くなる。


「リッチーは邪鬼王斑珠も落とすし、まだ他の高級魔宝玉もゲットできるかもしれない。油断のならないやつだよ」

「雨紫陽花珠も何かのドロップなのか?」

「あ、それはダイダラボッチ」

「ハハッ、魔境の超強え魔物全部倒してるんじゃねえか」

「いや、魔境中央部の魔物はどいつもこいつも魔宝玉落とすかもって聞いたから、倒しておこうかなーって」

「倒しておこうかななんてゆるい心構えで、リッチーやダイダラボッチを狩るやつはいねえ」

「ここにいるとゆーのに」


 ま、今日はラルフ君のパーティーがいたから、ドーラ最強と言われる魔物群のプレッシャーがどんなもんか、学んで欲しかったという面がある。

 サービスってやつだ。

 ラルフ君達は可愛い弟子だから。


 イシュトバーンさんがヴィルを撫でながら聞いてくる。


「魔宝玉クエストの納品期限は今月末だったか?」

「うん。でも搬送の都合上、納品の締め切りは今月の二七日だって。四日後だね」

「ん? 妙だな。どうして搬送の都合で締め切りが三日も……」


 イシュトバーンさんが首をかしげる。


「ちょっと待てよ? あんたはギルドに納品するんだよな?」

「ギルドの依頼受付所だよ」

「……ははあ」


 何だろう?

 思い当たることがあるのか?


「依頼主に見当ついたぜ」

「えっ?」


 何故に?

 納品日が関係あるの?


「転移で運びゃいいのに、わざわざ普通に見せびらかしながら輸送するんだな。意地が悪いぜ。いや、転移じゃ護衛の人数が限定されちまうからか」

「えっ?」


 何なの?

 イシュトバーンさん一人で納得して、しかもすげえ楽しそう。

 あたし全然わかんないんだが。 


「構わねえ、遠慮せず一切合切剥ぎ取るつもりでいけ」

「あたしは遠慮なんてしないし、最初からかっぱぐつもりだけど、誰なの? 依頼者」

「もったいつけるわけじゃねえが、今知らない方が面白えからもう少し我慢してろ。依頼者はあんたに会わせろって必ず言ってくる」


 依頼者に会えるの?


「ギルドでこのクエストの窓口になってるおっぱいさんも、ぺんぺん草も生えないくらいに毟り取れって言うんだよ」

「おい、そのおっぱいさんについて詳しく。さっき何か聞きそこなったと思ってたんだ。オレとしたことが魅惑のワードをスルーしちまうとは。歳は取りたくないぜ」


 この人もブレないなー。

 お付きの女性もラルフ君達も苦笑してるぞ。


「二三歳の眼鏡美人だよ。うちのヴィルは『すごいお姉さん』って呼んでる」

「とってもすごいんだぬ!」

「ぜひ会ってみてえな」

「ギルドまで大した距離じゃないから、歩く練習しなよ」

「おう、リハビリの励みになるぜ!」


 実に不純な原動力だこと。

 イシュトバーンさんだからなー。

 楽しい夜は更けてゆく。


          ◇


「サイナスさん、こんばんはー」


 ヴィル経由の寝る前通信だ。


『うん、こんばんは』

「商人のヨハンさんの息子が冒険者でさ。今日その子のパーティーのレベル上げてきたんだ」

『ああ、君を師匠扱いしてるって子か?』

「あたしの弟子だね。言ったっけ?」

『以前チラッと聞いたな』


 サイナスさんはよく覚えてるなー。


「弟子君のパーティーに飛行魔法使える子がいるの。レイノスからクー川の間を見回りしてくれれば、大分カラーズからレイノス東の危険は減ると思うんだ」

『危険というのは、海の一族の監視を抜ける技術というやつか』


 あ、デス爺かアレクから聞いたのかな?


「多分西域の方に上陸して、物流をかき回そうとしてくると思う。レイノス東を警戒させとくのは念のためだよ」

『意外ときめ細かいケアだなあ』

「あたしらしいでしょ? でもカラーズも油断しないでね。戦争まで半月あるかないかだよ」

『えっ?』


 随分ビックリしたね?


『そ、そんなに差し迫ってるのか?』

「言ってなかったっけ? ただのカンなんだけどね」

『……』


 村の長が動揺すんなよ。

 堂々としてろ。


「明日、輸送隊のレベル上げに行くから、フェイさんにだけはあたしの見通しを話しとくよ」

『うん、頼むよ』


 カラーズは大丈夫だと思うけど、一応ね。

 まあサイナスさんは農産物輸送の手配の都合もあるからな。


「戦争になった時、白の民と灰の民の農作物も輸送隊が運ぶんだよね?」

『もちろんだ』

「台車は足りるのかな?」

『どうだろう? 黄の民の管轄なんだが、考えてたより開戦が相当早いからな』

「じゃ、そっちも聞いとくね」

『間に合わせるのに最低必要な台車の数もあるから、オレも行こう』

「お願いしまーす。あたしは例の緑の民の冒険者エルマを連れて直接緩衝地帯まで飛ぶから、サイナスさんはアレクと行っててよ」

『わかった』


 何だかんだで態勢は整ってきたね。

 開戦までには準備も整いそうな気配になってきた。

 ブルっと来るのは冷えてきたからか、それとも武者震いか。


「カラーズでは何かあった?」

『輸送隊が帰着したな。本が届いてるぞ』

「明日帰りに寄るよ。アレクの様子はどう? 何か言ってた?」

『楽しかったみたいだよ。迷子精霊のハヤテと早速仲良くなって、文字を教えてる』

「いいねえ」


 ハヤテも灰の民の村にかなり慣れたか。

 居心地がいいんだろう。

 文字というのはかなり意外だが。


『以上だ』

「うん、おやすみなさい」

『おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日は輸送隊のレベル上げ、と。

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