第411話:マンティコアの肉
ベースキャンプを出、ザコを倒しながら北進する。
ラルフ君パーティーの固さも取れてきたようで何より。
「しまった、またやらかしてしまった……」
ワイバーンを倒したら卵をドロップした。
これなー、おいしいんだけどなー。
帰りに落としてくれるのはありがたいのだが、行きだと重いし割れやすいので困りものなのだ。
「自分が運びますよ」
「ごめんね、お願いする」
後衛のラルフ君に任せる。
この前のお昼はスクランブルエッグにしたけど、今日は腹一杯ダンに奢らせてしまったしな。
さすがにもう入んない。
どーすべ?
ま、ラルフ君が運び屋だし、判断は保留だ。
さらに中へと進む。
ラルフ君パーティーのレベルもかなり上がってる。
勉強のために魔境中央部の最強魔物群を見せてやるか。
「……リッチーか。かなり強いんだ。向こうにターン回らないと思うけど、一応注意してね」
「了解です。しっかりガードします」
「卵が割れるとテンションダダ下がりだぞ?」
「卵の心配ですか!」
緊張感を払拭させるための魔境ジョークだとゆーのに。
レッツファイッ!
ハヤブサ斬り・零式×四で問題なく倒した!
「幽玄浮島珠、お宝です!」
「やったぜ! リッチーのレアドロップは高級魔宝玉なんだけど、何落とすか決まってないっぽいんだよね。そこが面白いっちゃ面白い。今日ウスマン君のおかげでレアドロップ率高いから、検証させてよ。あとでもう少し協力して?」
「「「「はい!」」」」
さらに北へ。
「魔境北のパラダイスエリアですね」
「おっ、ゴール君わかってきたね?」
ラルフ君パーティーの中でも一際身体の大きい剣士ゴール君。
敵の攻撃を自分に集め反撃する固有能力持ちだと聞いている。
体格も能力も盾役として申し分ないなあ。
「ゴール君の固有能力名は何ていうの?」
「『ヘイトリベンジ』です」
「盾役としてはベリーナイスな固有能力だけど、日常生活ではどうなん?」
「小さい頃は虐められっ子でしたよ。固有能力関係あるのかわかりませんが」
ヘイトを集めてしまうんだと、虐められるってことはあり得るなあ。
レベル低い内からそうなのかはわからんけど。
いろんな能力があって興味深いもんだ。
「さて、そろそろ北辺だ。人形系レアで稼いでいくよ」
「「「「はい!」」」」
◇
「今日はまあまあ頑張ったねえ」
「まあまあですか」
帰り道で再びリッチーを倒し、今度は降魔炎珠を得た。
これは以前もドロップしたやつだな。
「いやいやお疲れ様、これでラルフ君パーティーも一流の上級冒険者だから」
「師匠のおかげです。ありがとうございます」
「目一杯感謝したまえ」
アハハと笑い合う。
ラルフ君パーティーは最初の目標通り、全員がレベル五〇を超えた。
ラルフ君達はクエストや護衛の仕事も真面目にこなしているし、レベルさえあれば信用できる。
「ところでさあ。これ聞いていいかわかんないんだけど、ラルフ君家とカラーズ緑の民の村ってどうして揉めてるの?」
ズバリ切り込んでやった。
どうだ?
「今対レイノス交易だけじゃなくて、カラーズ内部の取り引きでも緑の民が参加してないんだよね。このままだと緑の民が発展から取り残されちゃう。ストップかけてる族長家にとってもよろしくないと思うんだけど?」
「詳しくは知らないんですが、祖父母の代の族長の跡目争いで荒れたと聞きました」
あー族長家のお家騒動で根が深いのか。
そしてラルフ君は特に何とも思ってないわけね?
「これ、もう少し詳しい事情を知りたいんだ。いずれは緑の民も交易の仲間に入れたいんだよね。でもあたしじゃどこに地雷があるかサッパリわからない。やりにくくて仕方がないの」
「では、父に聞いて師匠に報告いたします」
「お願いしまーす」
少なくともこれで、ラルフ君家側の言い分はわかるはず。
どうにかして緑の民側の見解も知りたいものだが。
「あれは……マンティコアですか?」
翼とネコに似た頭部を持つ大型の魔獣マンティコアだ。
出現率の低い魔物ではある。
「あれ、おいしいんだって。イシュトバーンさんに聞いたんだ。お肉にして食べよう!」
「「「「えっ!」」」」
まあ雑魚は往ねなんですけれども。
「ラッキー! 凄草だ」
「ドロップですか?」
「そう。凄草は魔力抜けるとまずくなっちゃうんだけど、マンティコアがドロップした時点では新鮮っていう特徴があるんだよ」
あ、いいこと閃いた!
イシュトバーンさんに……でもお肉が先だな。
「クララ、解体お願い! 他の皆はお肉を確保できるまでクララをガードするよ!」
「「「「「「「了解!」」」」」」」
クララの包丁捌きはほぼ神技、力入れてるように見えないのにどうなってんだろ?
あっという間にお肉にする。
いやでも、ここは危ないな。
「ムオリスくん、『フライ』練習してみようか。ベースキャンプまで皆を運んで。飛行魔物に襲われるかもしれないから油断しちゃダメだぞ? 一応あたしは魔物に襲われてもいいように、『雑魚は往ね』を溜めとく」
「はい!」
◇
「ただいまー」
「お帰りなさいませ」
うん、無事ベースキャンプに到着。
クララの高速『フライ』には及ぶべくもないけど、ムオリスくんの『フライ』も
結構上手だったぞ?
イメージトレーニングでもしてたのかしらん?
十分実用レベルと見た。
「マンティコアはおいしいって聞いたからお肉にしてきたんだ。オニオンさんにも少しあげるから食べて?」
「これはこれはありがとうございます。でも、危なくなかったですか?」
「それがクララさんの解体技術がすごくて。お金取れるレベル」
「ほう!」
恥ずかしそうなクララ。
よかったね。
さてと、赤プレートに話しかける。
「ヴィル、聞こえる?」
『聞こえるぬ! 感度良好だぬ!』
「イシュトバーンさんと連絡取ってくれる?」
『わかったぬ!』
しばらくの後、イシュトバーンさんと通信が繋がる。
『精霊使いよ、肉か?』
「マンティコアのお肉だよ。今からそっち行っていい? ラルフ君のパーティーも一緒なんだ」
『ヨハンとこの息子の冒険者だな? 待ってるぜ』
「ヴィル、あたし達もすぐ行くから、可愛がってもらっていなさい」
『はいだぬ!』
よーしオッケー。
「じゃ、オニオンさんさよなら」
「さようなら。またのお越しをお待ちしております」
フレンドで転移の玉を起動し、一旦帰宅する。




