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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第409話:魔境の塵となる覚悟

 ピンクマンはよく状況が見えているようだ。

 ならば続けてラルフ君パーティーには言い聞かせておく。


「かといって西域の重要性が減じるわけじゃない。西の物流を切られて長期戦になると、レイノスがもたないじゃん? だから『アトラスの冒険者』は、ほぼ全員西域の防備に当たることになる。西域は広いんで、全員回しても全然手が足りないんだけどね。レイノスより東はラルフ君パーティーと、もう一人エルマっていう新人冒険者だけだよ。さて、この状況でラルフ君パーティーにできることは何だと思う?」


 真剣に考えているラルフ君パーティー。

 そうそう、考えるのはタダ。


「や、やはり師匠に鍛えていただき、個の力を上げていくべきだと」

「いいね。何を目的として?」

「は?」


 意味を計りかねているようだ。

 いやまあラルフ君パーティーが強くなりゃ、単純に戦闘になった時勝つ確率が上がるってのはあるよ?

 ただあたしがラルフ君パーティーに期待してるのは、単なる戦闘じゃない。


「ラルフ君がやる気になってくれて嬉しい。ラルフ君パーティーが本気ならレイノス東はまず大丈夫なんだ」

「ど、どうして?」

「レイノス東で帝国軍工作部隊が上陸可能な範囲は狭いから」


 ポカンとしてるね?


「帝国には海の一族の監視を抜ける技術がある」

「聞いております」

「それを使ってどこに攻めてくるかわからないのが問題なんだけど。レイノス東は港からクー川まで、実際に安全に上陸できるのはせいぜい強歩四時間くらいの範囲しかないんだよ。ゴツゴツの岩場とか岩壁とかが多いじゃん?」

「わかります。が……」

「ムオリス君は『フライ』はまだ使えないよね?」

「「「「!」」」」


 ラルフ君パーティーの魔法剣士ムオリス君は、風魔法の使い手なのだ。


「ひ、飛行魔法で監視しろと?」

「察しがいいね。冒険者として成長したなあ。あたしは誇らしいよ」

「ありがとうございます」

「もし見つけたら監視だけじゃなくて攻撃もしてね。ドンパチしてれば海の一族のパトロール隊が察知して、勝手にやっつけてくれるから」

「「「「……」」」」


 声も出ないラルフ君パーティー。

 融通が利かないという海の一族のパトロール隊。

 あれを逆用するのだ。

 ピンクマンが感心する。


「ユーラシアには空から攻撃する腹積もりがあったのか」

「考えるだけはタダだから」

「輸送隊のレベル上げも戦争に備えてという面があるんだろう?」

「まあね。あ、明日朝からレベル上げなんだ。悪いけどピンクマンも手伝って」

「無論だ」

「もしエルマに会えたら、彼女にもそう伝えて確認取っておいてよ」

「わかった」


 内緒話モード解除、ラルフ君パーティーに向き直る。


「さあ、やるべきことはわかったね?」

「「「「はい!」」」」

「言っとくけど『フライ』はかなりコントロールが難しいんだ。今、うちのクララは強歩四時間くらいの距離なら一〇分で往復できるけど、覚えたての時はスピードも出なかったし、ちょっと風に煽られたらバランス崩す感じだった。使いこなすには練習も必要だし、最低レベル五〇は必要だと思ってね」

「「「「はい!」」」」


 よーし、いい返事だ。


「じゃあね、ピンクマン。明日よろしく」

「うむ」


 フレンドで転移の玉を使用、ラルフ君パーティーを伴って帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、おっはよー」


 我が心の故郷、魔境だ。


「いらっしゃいませ、ユーラシアさん。ラルフさんは久しぶりですね」

「そーなんだよ。ようやくラルフ君達も魔境の塵となる覚悟ができたみたいで」

「「「「できてませんよ!」」」」

「やだなー。軽い魔境ジョークじゃないか」


 オニオンさんが笑う。


「大丈夫ですよ。ユーラシアさんの魔境ツアーにはかなりの人数が参加されていますが、未だかつて事故はありませんから」

「オニオンさんはフラグ立てるのが上手だなー。今日こそ何か起こりそうな雰囲気になったよ」

「いやいや、フラグを立てたつもりは……」


 不安がらなくても大丈夫だってばよ。

 魔境ジョークだとゆーのに。


「じゃ、行ってくる!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊と脅える者ども出撃。


          ◇


 オーガとワイバーンを連破したあと、アーチャーのウスマン君が言う。


「リーダーは魔境は恐ろしいところだと散々言ってたんですよ」

「うちのパーティーにとっては楽しいところだけどね。まあ空気はどよんとした独特な感じがあるねえ」

「話に聞いてたよりも、何事もないですね?」

「あってたまるか。あたしも魔境ツアーコンダクターとして腕を磨いたし、君達もラルフ君が魔境に来た時よりレベル高いし」


 ちょっとは安心しただろうか?


「さっきのオーガやワイバーン倒した時と一緒で、魔物が出たら基本ワンターンで片付けるよ。クレイジーパペットとブロークンドール、それからドラゴンや高級巨人族なんかは向こうの攻撃食らうから、しっかりガードね」

「「「「了解です!」」」」

「ガードさえ間違わなきゃ、あんた達のレベルなら大丈夫」


 さらに中へ。


「あ、デカダンスだ。あれは図体だけ大きいけど大したことはないから」

「た、大したことないって……」


 魔法剣士ムオリスが何か言ってるけど、まだビビってるのか。

 君達ラルフ君に毒され過ぎだぞ?


 実りある経験からの通常攻撃!


「ほら、脅えなくても大丈夫だってばよ」


 黄金皇珠と透輝珠ゲット。

 イマイチやりにくいなー。


「アイスドラゴンだ。しっかりガードしててね」


 まあ雑魚は往ねなんですけれども。


「リフレッシュ! 大丈夫? どんどん行くよ」


 中央部は避けようか。

 『雑魚は往ね』が効かないからマジックポイントの消費が大きい。

 ザコを倒しつつどんどん北へ。


「はい、ここが魔境北辺の稼ぎどころです。通称パラダイスエリア。ガンガン人形系レア倒していくよ」

「「「「は、はい」」」」


 うーん、喋れるだけマシか。

 アレクとエルマはあんなにテンション高かったのになー。

 魔境ツアーはどーも人を選ぶらしい?

 添乗員としては実に気を使うわ。

 まあはしゃぎ過ぎたりパニック起こしたりすることはないから、危険は少なそう。


 ブロークンドール三体、クレイジーパペット二体を倒し、デカダンスの多い岩場近くのエリアへ。

 安全だからここでもうちょっと戦って、昼になったら帰ろうか。

 ラルフ君を初めて魔境に連れてきた時はかわいそーだった。

 結構焦げてた。

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