第403話:エロそうでエロくない、少しエロい写生大会
さて、煽ってやるべえ。
「セレシア店長にイシュトバーンさんも認める才能があるからだよ」
「まあこんないい場所を貸してるくらいだ。イシュトバーン氏は相当入れ込んでるんだろうが……」
「ものがいいのはわかったよ。ただ、才能って言われてもな……」
「言われただけじゃ信用できないよね。才能が一目で理解できる服があるよ」
「才能が一目で理解できる服?」
「すげえ服だよ。せっかくだから皆に見せてあげよう」
イシュトバーンさんのお付きの二人に合図する。
例の謎えっちな服に着替えて登場すると、途端に困惑と興奮の入り混じった歓声が。
「おおおおおお?」
「み、魅力的だ……」
「ど、どうなってんだこれ?」
ハハッ、わかる。
初めて見た時、あたしも頭がはてなマークだったわ。
「これはね、イシュトバーンさんの扇情的な服を作れという要望と女性側の露出を少なくしろという要望を両方かなえた、奇跡の服なんだよ」
もう皆ガン見ですがな。
確かに首から下で露出してる部分なんかごく僅か。
色だってシンプルなモノトーン。
なのに身体のラインが出るとここまでえっちになるとは。
「さすがに既製服だとここまで攻めることはできないけど、注文だと才能が溢れ出るのはわかったでしょ?」
頷く人と唸る人。
まあ才能は認めてもらったようだ。
「向こう見てごらんよ。女の子達が群がってるでしょ? 彼女達は感覚でイケてるファッションを理解してるからさ」
女の子達を眺めやる一同。
「女子ファッションを男性に理解しろとは言わない。とゆーかあたしもよくわからんくらいだわ。でも品質の良さもセレシア店長の才能もわかったでしょ? 商売に絶対はなくとも、この店が流行る確率は高い」
納得せざるを得ない一同。
「じゃあ何か買っていきなよ。オレはこの店一目で売れると見抜いた。出店初日から贔屓にしてたんだぜって、後々まで自慢できるチャンスだぞ?」
「そこのトーガくれ!」
「モスグリーン中サイズのチュニックとボトムスと帯!」
「太め濃い色のズボン。ポケットありのやつ!」
「へーい毎度っ!」
よーしバッチリ大盛況だ。
他の服屋に比べて高価なわけじゃなし、あとは自然に口コミで売れるだろ。
え、新聞記者さん達何?
「こちらのセクシーでセンセーショナルな服を記事にしたいんです」
「どーぞどーぞ」
ストレートにこんな店がオープンした。
大反響だって載せれば、怪しいゴシップ記事にするより訴求力が高いことに気付いたか。
読む人だって正確で役に立つ情報を得るために新聞を読みたいはずなのに、捻くれた見方の記事で紙面埋めてたら信用なくすわ。
信用なんて最初からないかもしれんけど。
「このファッションの独創性は言葉だけでは伝わらないので、絵が必要かと思うんですが……」
「実にもっともなことだね」
「絵師がいないんですよ。どうにかならないものかと」
絵師か。
いや、絵が紙面を飾ればかなりの話題になるだろうな。
セレシアさんの店の認知度は上がり、売り上げに大きく貢献すること間違いなし。
ここは協力すべし!
「皆、注目! このえっちなお姉さん達の絵を描きたいって人いる?」
「「「はい!」」」
あ、結構いるんだな。
よしよし。
「じゃあ『エロそうでエロくない、少しエロい写生大会』を午後一時から始めまーす。参加費無料。紙と筆記具は各自持参のこと。上手に描けたら新聞社が買い取って明日の新聞に載るよ。頑張って!」
「「「うおおおおお!」」」
数人が散っていく。画材を持ってくるんだろう。
「「ユーラシアさんっ! 困ります!」」
「はい、モデル料ね」
透輝珠を一つずつ渡す。
持ってきておいてよかったなあ。
戸惑うお付きの女性達。
「いいじゃねえか。正当な報酬だ、もらっとけよ」
ニヤニヤして言うイシュトバーンさん。
まったくイベントが好きなんだから。
あたしも好きだけど。
「今後理不尽なセクハラがあったら、慰謝料は今日の透輝珠を基準に考えるんだよ?」
「あっ、こら精霊使い!」
慌てるイシュトバーンさんを華麗にスルーして、新聞記者ズにも透輝珠を一つずつ渡した。
「こ、これは?」
「ドーラ日報賞とレイノスタイムズ賞の賞金用ね。魔宝玉で出来のいい絵を買い取って記事にすればいいよ」
「えっ、しかしそこまでしていただくわけには……」
「いいんだ。この前のフェスも大成功だったし、あんた達はあたしの敵じゃないでしょ? ウィンウィンだよ」
言葉が出ない新聞記者ズ。
魚フライフェスの成功は、マジで新聞の寄与がすげえ大きかったぞ?
今後も手伝ってもらいたいことはあると思うから、遠慮なく取っときなよ。
「また新聞が売れそーな仕掛けがあったら呼ぶよ。その時はよろしくね」
「「は、はい」」
「おい、記者さん達よ」
イシュトバーンさんが声をかける。
「精霊使いは面倒見がいいだけじゃねえんだぜ。敵に回るとおっかねえんだ。よくよく注意しろよ?」
「「は、はい……」」
「ほらほら、記事にするなら店長にインタビューしないと片手落ちだよ。セレシアさーん、話聞かせてやってよ」
さて、今日のあたしの出番はこのくらいまでだろうか。
昼近くになってお客さんも減ってきたしな。
明日からは口コミと新聞の広告効果でオーケーだろ。
「御苦労さん。開店一時間で大繁盛じゃねえか」
「イシュトバーンさんが余計な仕事させるから、こっちは大変だわ」
「お見事でした。いいものを見させていただきましたよ」
「もー慣れないことはするもんじゃないと思った」
イシュトバーンさんとラルフ君パパがホコホコした顔してるけど、見せもんじゃねーぞ。
取材を終えたセレシアさんが近付いてくる。
「ユーラシアさん、ありがとうございます! 出足はこれ以上ないくらいの成功です!」
「オレの作戦が当たったんだぜ」
「何を得意がってるんだよ。あたしを働かせただけじゃないか」
メッチャお腹が減ったわ。
「女の子の掴みは全然問題ないからさ。男の人も入りやすい店になれば大丈夫。女の子が連れてくる父親や彼氏に買わせるイメージを持ってね」
「なるほど……男性に対応する店員を増やせばいい、ということかしら?」
イシュトバーンさんと顔を見合わせる。
「いらないよねえ?」
「おう、店長自ら相手すればいいんだぜ」
「えっ?」
いや、驚くところじゃないから。




