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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第402話:獲物を探してるとこ

 驚くイシュトバーンさん。


「あんた服屋のスタッフじゃなかったのかよ?」

「おおう、そーゆー認識だったか」

「自分は輸送隊の一員で、今日はこの店と青の村の間の連絡係を仰せつかっております」

「確か戦闘時のターゲットになりにくい固有能力の持ち主だよ」


 うちのパーティーではダンテが持つ固有能力『陽炎』。

 狙われ率が低いというものだ。


「ほお、影が薄い固有能力か。おみそれしたぜ」


 影が薄いとディスられてるのかおみそれしたと褒められてるのか。

 微妙な物言いにくすぐったそうな顔をする青の輸送隊員。

 あたしは目立つの好きだし、性格的に前へ前へってことがあるから、もう一つピンと来ない固有能力ではある。

 もちろんあたし向きではないってだけで、戦闘での有用性はよくわかっているけれども。


「他にはどんなやつがいるんだ?」

「輸送隊? メチャクチャ特別な固有能力持ちはいないけど、隊長は魔法を覚えられない代わりに物理攻撃ダメージが大きくなるっていうレアなやつだよ」

「『狂戦士』か」

「イシュトバーンさんは知ってたか。カラーズで一番身体デカい人だから、結構迫力ある。あとはそーだな、『鑑定』の能力持ちが一人いるよ」

「能力でなくて面白いやつは?」

「副隊長の女の子かな。髪の毛を二つのお団子に結った、スラッとした美人さん。ちょっと弄り甲斐のある優等生タイプの子」

「ほう?」


 ニヤニヤすんな。

 顔がセクハラだぞ。

 美人と聞くとすぐ興味持つんだから。

 まあでもインウェンにはエンタメの引き出しがまだまだあるような気はしている。


「じゃあ招待の件は幹部の連中に報告頼むぜ。美味いもん腹一杯食わせてやる」

「「「はい!」」」


 ここで輸送隊の三人と別れる。

 じゃーねー。


「ユーラシアさん、ちょっとこちらへ」


 セレシアさんに呼ばれ店内奥へ。


「こちらに着替えてくださる?」

「はーい」


 例えて言うなら、料理屋の男性給仕がこういう格好をしてたら洒落てるんじゃないかな、という格好だ。

 リリーの黒服従者の装いに似ていると言えば似ている。

 でも帝国風スーツほど堅苦しい感じじゃないな。

 やはりエルのファッションがベースになっているのはわかる。


「おう、見違えたじゃねえか」

「そお?」

「格好いいぜ」


 可愛いじゃなくて格好いいのジャンルか。

 自分でもそう思うけれども。


「店長、準備できました!」

「開店します!」


 族長じゃなくて店長なのな。

 どうなることやら。


          ◇


 開店してしばらくは様子を見る。

 売り子達の着ている、目新しい服に注目してるのはやはり女の子だな。

 ここまでは予想通り。

 売り子の話を聞いてる子もいるけど、まだ一着も売れない。

 ふむ?


「おい精霊使いよ。働いてないじゃねえか」


 イシュトバーンさんとお付きの女性二人、そしてラルフ君パパは店頭横に出したベンチに腰掛けている。

 イシュトバーンさんの護衛とラルフ君パーティーは、ちょっと離れたところで完全に見物をきめこんでいる。


「獲物を探してるとこだってば」

「ハハッ、獲物か。期待してるぜ」


 何の期待だ、まったく。

 忙しそうな人はダメだ。

 暇そうで、ちょっとは興味を持ってくれてる人がいい。


「どうもー。可愛い子達でしょ?」


 ぼんやりこっちを見ながら歩いていた男性を捕まえて話しかけた。


「えっ、いや、見慣れない服で可愛いな、と」

「ダメだなー。正解は『可愛い服だけど、女の子はもっと可愛い』だぞ?」


 アハハと笑っていると、足を止める人が出始める。

 ふむ、注目されてきたか?


「あっ、あんたフィッシュフライフェスの時の!」

「美少女精霊使いユーラシアだよ。覚えていてくれてありがとう!」


 少し人が集まってきたね。

 魚フライフェスは今でもレイノスのホットな話題のようだ。

 じゃ、フェス方向から引っ張るか。


「魚フライ美味かったぜ」

「おいしかったでしょ? 今日は趣向を変えた仕掛けなんだ。題して『全てのものはレイノスに集まる』」


 言葉が浸透するのを待つ。


「フェスの時、あたしは『全ての食はレイノスに集まる』って言ったけど、考えてみれば食に限らなくてもいいよね、って話。この店はカラーズの誇る才能のひとつ、セレシア店長の服屋だよ」

「カラーズ?」

「今までカラーズは独立した自治区みたいになってて、あんまり交流がなかったじゃん? だけど最近、レイノスとの間に交易が始まったんだよ」

「結構なことだけどよ。才能って言われても……」

「女ものの服じゃなあ」

「男ものもあるよ。こちらへどーぞ」


 メンズコーナーへ案内する。


「……案外普通だな」

「当たり前じゃん。男にピラピラの服着せたって楽しくないもん」

「ハハハ、もっともだ」


 皆が笑う。


「ものはいいよ。あたしここのメンズのチュニックを愛用してるんだ」

「あんた確か、ドラゴンスレイヤーって話だよな?」

「そうそう」

「ほう? 冒険者のハードユースに耐える服か」


 よしよし、興味持ってくれたね。


「あんただけ何で他の売り子と着てる服が違うんだ?」

「いや、あたしも正直女ものファッションのことは聞かれてもわかんないから。でもここの店の商品は品質が気に入ってるから買ってる」

「そんなにいいのかよ?」

「時間あるなら、じっくり布地とか縫製とかチェックすりゃいいじゃん」


 皆、真剣に縫い目見始めたね。

 あ、新聞記者ズだ。

 来るの遅いよ。

 『全てのものはレイノスに集まる』の辺で登場してくれればいいのに。


「この土地、豪商のイシュトバーンさんのものですよね? どんな裏取り引きで借り受けたんですか?」

「店長さん美人ですけど、愛人契約ですか?」


 この空き店を借りられたのはあたしがいたからで、セレシアさん関係ないんだがなあ。

 しかし集まってきた人達の興味をさらに引くチャンスだ。

 ニコッとキメ顔を見せて一言。


「知りたい?」


 皆がコクコク頷く。


「イシュトバーンさんが女好きなのは事実。セレシア店長が美人でなければ力貸してくれなかったのは確かだろうなー」

「ではやはり……」

「でも美人ってだけであのクセ者を動かせると思うのは甘いんだなあ。そんなにイシュトバーンさんが耄碌してたら、この前のフィッシュフライフェスが成功してたはずないじゃん」

「確かに」

「……ああ、わかるな」


 ざわめく人達。

 正しい理屈というものだ。

 しめしめ、いつの間にか大勢になったぞ。

 あたしの理屈に聞き惚れろ。

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